久々に、広島の試合評を。

http://www.j-league.or.jp/live/2010/j1/101607.html

広島は佐藤寿人、服部公太、盛田剛平が欠場。ストヤノフ、ミキッチがコンディション上がらずベンチスタート、森崎浩司はベンチ外。森崎和幸が復帰後初となる90分出場を果たし、山崎雅人も途中出場を果たしたものの、さすがにレギュラーがこれだけ歯欠けになると本来のサッカーはできない。

「本来のサッカー」というのは、磐田が敷いてきた広島対策と思われる布陣に対しても、物理的なスピードとタッチ数で「噛み潰す」サッカー。ゼロスペースの中でもタッチ数を劇的に少なくし、誰もいないスペースにライナー性のクサビを打ち、それを1タッチやスルーなどで展開していくバイタルの崩し。あるいは前からのプレスをいなすストヤノフの尋常でないキープ力と、そこから高い精度で繰り出されるミキッチへの40メートルのサイドチェンジ、あるいは佐藤寿人への1本の裏パス。

「人もボールも動くサッカー」という陳腐な言い回しでは表現できない、ハイレベルなパスサッカー。そういうサッカーを僕は広島ビッグアーチで何度となく目撃しており、それに比べるとやはり現チームは落ちる。李忠成のリーグ戦4試合連続ゴールという快挙は素晴らしいが、崩しの精度、ロングパスの精度に欠け、さらに連戦の疲労が色濃く出ており、とりわけ青山敏弘のパフォーマンスは本調子とは程遠かったように思う。

少なくともこの日、「思い通りのサッカーができた」のはむしろ磐田の方だと思う。広島は李忠成の4人抜きのスーパーゴールで1点を先制したものの、それは完全に個人技といえるもの(0:21頃)。


チームの狙い通りの崩しでは得点できず、逆に磐田にカウンターから狙い通りの形で失点した(1:34頃)。

広島のサッカーは、リーグ戦では力を発揮する。「広島シフト」を敷かれるほど圧倒的な強さがあるわけではないし、そこまで徹底研究をされない。しかしナビスコ杯決勝は一発勝負。リアクションサッカーのチームが有利だし、タイトルを取ったチームの傾向もそうだと思う。

磐田は、1トップ3シャドーで4バックと青山にプレスを掛け、ビルドアップの精度を下げさせた。そこを突破されると4枚のDF+ボランチがペナルティエリアの幅から出ず、バイタルを閉じ、サイドを捨て、中で跳ね返す。奪うと3シャドーがワイドに開き、広島のサイドハーフの裏を徹底して使う。

そしてサイドで起点を作り、前田遼一によって広島DFの高さ不足・空中戦の弱さを突く。今日の戦い方が「広島シフト」とは思わないけど、これをファイナルでやられると、相当苦戦するのは目に見えた。ドローという結果は妥当だが、柳下監督はほくそ笑んだのではないだろうか。

広島がこれを突破するには、ストヤノフと森崎和、ミキッチ、森崎浩司の完全復調、佐藤寿人の復帰が一つ。ベストメンバーに戻れば、前線のプレスを突破することは可能。広島はひたすら「対策を噛み潰す練習」をやってるようなものなので。

もう一つはボランチ青山とリベロ森崎和、2シャドー森崎浩司・山崎らのミドルシュート。4バックがガッツリバイタルを消してるので、引き出すため&サイドの幅を使うためにもミドルが必要。プラス、ミキッチと山岸がもう少し精度の良いボールを供給できれば良いんだけど。

あとは、天才・高萩洋次郎について。洋次郎は、天才だと思う。そうでなければ、例えばこんなサイドチェンジはできない。



しかしサッカーにおける天才性は、端的にいえば味方との呼吸がピタリとあったとき立証されることが多い。ドリブルにしても、味方がスペースを作ったり空けたりすることもあるので。で、その基準でいくと、失点に直結したパスミスを始め、ちょっとロストが多すぎ。

もはや洋次郎は「若手」ではなく「中心」を期待してしまう。なので、シャンパンの泡みたいに弾けるプレーと一緒に、堅実につなぐシーンでの堅実なつなぎ、キープすべきシーンでのキープ、つまり「意外性はないけどチームを助けるプレー」をもっと。今日の試合は何よりボール保持が課題だった。

磐田はボールを持たない状態で広島を追い詰めた。少ないボールタッチでゴールまで迫る練習を繰り返しているチームだと思う。そういうチーム相手には、キープの時間を伸ばし、相手を走らせ、じらし、意欲と意図をくじくこと。ナビスコ決勝を考えると、洋次郎のムラッ気はちょっと危険だと思った。

まあホント、ぴしっと合った時の佐藤寿人・山崎雅人・高萩洋次郎のコンビは、レッドスター・ベオグラードをびびらせるぐらいのモノなので。。。そのコンビネーションをナビスコ決勝までにみたいなあ。

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