といっても、もう一つの日本代表チーム、西村雄一主審と相楽亨副審のチーム西村だ。

 一番難しい試合を任されたのはイルマトフ主審というのは間違いないが、西村もまた難しい試合を任された。
 初日の試合というのはもちろんだが、ウルグアイvsフランスというカードが難しい。南米には独特の上手いファウルがあるし、フランスには血気盛んなリベリーがいる。また、互いに個の力が強いため、当然ボディコンタクトも多くなる。

 そんな難しく、またそれに臨む日本代表チームをどうしても見たくて、メディアセンターのTVで観戦することを決意した。それはホテルに帰る時間が深夜になることをあらわしており、私の危険度が高まることを意味しているのだが、そんなことはどうでも良く思えた。これもフットボールの力かもしれない。

 さて、FIFAの大会で注目してほしいのは主審のポジショニング。
FIFAはTV画面に映りこむくらいボールの近くにポジショニングをとることを好む。それは開幕戦にもあらわれている。

 20秒、競り合いのファウル。3分にもフランスのホールディングをしっかりとる。直後にも腕を使ったアネルカのファウルをとる。これは南アフリカvsメキシコ戦でもファウルとなっていたように、軽くでもかかり影響すればとるということだろう。

 8分のスライディングタックルはボールに対するプレーということでノーファウル。選手もすぐにおきあがっていたように、当たり前のプレーなのだろう。日本だと選手から異議が起きそうだが。

 西村主審はテンションの高い両チームにルールを意識させるため、スローインの位置も細かくいうなど、とにかく丁寧にレフェリングをしていく
 12分、抜かれた所を引っ張ってとめたエブラに警告。日本の感覚では厳しいように感じるかもしれないが、隣にいたスウェーデン人のジャーナリスト曰く妥当だという。

 13分、ボールをキャッチしたGKがタッチラインを割ったかのように見えたが、割っていないという判定。17分、リベリへのファウルもしっかりとる。

 19分、ホールディングしたリベリのファウル。さらにファウルを受け入れず異議を唱えたため警告。リベリとしては‘その前に俺もつかまれている’という思いがあるのだろうし、確かにつかまれている。リベリは影響を受けずにプレーしたからノーファウルということだろうか。

 22分、リベリがつかまれたような格好になるが、ファウルを貰いに言った、もしくはフィフティということでノーファウルに。少し厳しい判定に思えるが裁量内だろう。

 立ち上がりからしっかりとファウルをとったこともあり、ホールディングを試みるがファウルになるため、手を使うのをやめて諦める選手もいたように、基準が理解されているのが垣間見えた。
 西村主審はボールに対するコンタクトはフィフティでも流す。そのかわりホールディングなどはしっかりとるし、影響を受けたものもとる。

 この基準が徐々に試合をエキサイティングに。37分、ウルグアイが裏をとるが、ギャラスを押したということでファウル。

 40分のフランスファウルはノーファウルのように見えるが、足の裏でチャレンジしたというか。微妙な判定だ。

 前半のファウルは合計で15。少なくはないが、多くもない。むしろ、ファウルよりカードを厳しくしたといえる。

 この前半の基準が後半に入ると生きる。スピーディーでエキサイティングな試合になり、妥当な判定で試合は進む。

 59分、遅れてスライディングしたVICTORINOに警告。62分、ユニホームを引っ張ったシーンもよくみていた(スローだと一目瞭然)。65分、LODEIROに警告。

 68分、ボールにプレーできる範囲外でチャージしたTOULALANに警告。この際、選手同士がいざこざを起こすと間に入って場を落ち着かせてから、当該選手を呼んでコミュニケーションもはかるなど、冷静なレフェリングをみせる。