「日本のレフェリーは試合開始から10分間はイエローカードを出さない」

 試合後、オリヴェイラ監督がこうメディアに問題提起したという。もちろん、いつものようにまったく話題にはならなかったのだが。


 日本において審判問題はどこかタブー化されてしまっている。というより、「別に誰も興味ないでしょ」というスタンスがあり、議論の場にあがらない。

 ゆえに、試合後チーム関係者が審判批判をするとそれがそのまま見出しになり報道され、あたかも誤審だったかのような世論になる。東アジア選手権での闘莉王の退場を審判の誤審のように報道した新聞社もあったし、先日のアジアチャンピオンズリーグでの明神のPA内でのファウルが本当にファウルだったのかという議論を起こすメディアもなかった。

 そんな世論を警戒してか、J’s goalではチーム関係者の審判に対する批判は掲載されない。それに対し、読者は‘審判の圧力か’と不信感を抱く。

 まさに負のスパイラルとなり、どんどん審判という存在が遠いものになっていく。


 だからこそ、今回はオリヴェイラ監督の問題提起をとりあげたい。

 実際にどうなのかと―

 同じSoccer Journal内にあるラモス氏の【ラモス瑠偉のふざけないで真面目にやれ!】でラモス氏もこの問題をとりあげ、見解をのべた。


「確かにオリヴェイラ監督の言うことはわかりますよ。確かに10分を過ぎるとすぐイエローカードが出るという感覚はあります。」


 ラモス氏は元日本のトッププレーヤーである。そんな氏がいうのだから、チーム関係者のなかにはオリヴェイラ監督と同じ感覚の方が多くいるのだろう。


 しかし、私の見解は違う。

 データがないので正確ではないが、他国、たとえばプレミアリーグの主審の方が試合をみていると注意で抑えようという判定をしているようにうつる(そのような指導もあったらしい)。むしろ、日本の審判は勇気をもって判定を下している。

 たとえば、昨シーズン、東京V対鳥栖戦を担当した飯田淳平氏。キックオフ直後、抜け出そうとした鳥栖のFW池田を倒した菅原にレッドカードを出す判定を下した。この開始9秒での退場はプロリーグでは世界最速の退場記録である。

 また、2008年のゼロックススーパーカップで家本政明氏は7分に岩政に対し警告を出し、12分には2枚目の警告で退場にする判定を下している。

 以前、国際審判員の方が「立ち上がりだからといって注意ですませたら、次同じシーンでも注意ですまさなければいけなくなる。そんなことしていたらカードの基準がブレて、どんどんおかしくなりますよ」と教えてくれた。日本の審判のなかに「開始10分まではカードを出すな」という暗黙の了解があるとは思えない。


 とは言え、私が見ていないだけで、そうでない試合もあるのかもしれない。空気を読んでしまいカードを出さなかった事例などが。

 それは議論をしなければわからない。カードを出さなかったのは、カードに値しないギリギリのファウルだったのかもしれないし、それが主審の基準なのかもしれない。はたまた、単純に技術が低く見えていたかったのかもしれない。もしかすると、本当に「10分までは出すな」という通達があるのかもしれない。


 鵜呑みにするのではなく、議論すべきだ。

 様々な議論があり、Jリーグが生まれ、さらにJ2が作られた。それに伴い入れ替え戦が生まれ、議論ののちに自動昇降格制になり、さらに1シーズンになった。議論を重ねリーグはレベルアップしてきたし、議論がないものは閉鎖的になっていった。

 「審判問題」「審判問題」と叫んだ所で何も変わらない。本当に問題があると思うならば議論するべきではないだろうか。

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