CBに求められる役割も、W杯本大会では変わってくる<br>(Photo by Kiminori SAWADA)

写真拡大

 日本代表が香港戦を戦っていた11月18日、ヨーロッパではW杯予選のプレーオフが行なわれていた。誤審を主張するアイルランドがフランスとの第2戦のやり直しを主張しているが、アフリカ初のW杯に集う32か国が、ひとまず出揃ったことになる。

12月4日の抽選会で対戦相手が決まると、出場各国はグループステージへ向けたスカウティングを始めることになる。日本の対戦相手となる国は、岡田武史監督のチームをどのように評価するだろうか。

対戦相手が香港戦の映像を入手したとする。最新のゲームだから、かなり高い確率でチェックするはずだ。どこのチームの監督も、長谷部の先制ミドルが決まるまでの時間帯に着目すると思う。キックオフから31分の間までには、日本の強みと弱みが凝縮されているからだ。

対戦相手が警戒するのは9分の展開だろう。

自陣のFKを闘莉王が長谷部へつなぎ、岡崎へタテパスが入る。大久保、遠藤、中村俊、大久保とテンポ良く動いたボールが、右サイドを上がってきた内田へつながる。ニアサイドへのクロスに岡崎が飛び込み、続けて大久保が反応し、相手DFの窮屈なクリアを中村俊がフィニッシュへつなげた。

岡崎と大久保だけでなく、長谷部がペナルティエリア内のファーサイドに、松井が同じく正面に詰めていたこのシーンからは、スピーディーな展開のなかで数多くの選手がボールに絡んでいく狙いが読み取れる。身体的な強さや高さを持ってしても、止めるのが難しい流れだ。

日本を攻略するサンプルとして抽出されるのは、15分の展開ではないだろうか。左サイドに開いた松井からバックパスを受けた駒野が、センターサークル付近の遠藤へ横パスを通す。香港のMFが素早く寄せていくと、遠藤は最終ラインにダイレクトで下げた。闘莉王がボールを持ち直し、日本の攻撃がリスタートする──。

遠藤が左右にボールをさばき、長谷部は遠藤よりもタテを意識するのが、日本のダブルボランチの役割分担だ。彼らのところでうまくボールが配給されなければ、中村俊がひとつ下のゾーンへおりてくる回数が増える。

「日本人はパスの距離が25メートル以上をこえてくるとミスが増えるし、パススピードが出ない」という前提から、岡田監督はパスの距離を短くし、コンタクトを避けながらボールを動かしていくサッカーを徹底してきた。パスだけではボールの動きが単調になるので、リズムを変えられる選手を付け加えるようにもしている。

テストマッチで対戦する相手なら、自分たちが追求してきたサッカーをある程度表現できるようになっている。日本の良さを事前に把握し、特徴を消すための方法を用意するチームは少ないからだ。

本大会は違う。対戦相手の監督は、日本の映像をつぶさにチェックし、強みと弱みを整理してくる。攻撃のきっかけ作りと仕上げをする中村俊、遠藤、長谷部の3人に、できるだけいい状態でボールを持たせないことを考えるだろう。松井、大久保、岡崎らが務める左アウトサイドも、きっちりケアされるに違いない。香港戦の15分の場面のように、センターバックへ下げざるを得ない場面を増やそうとするはずだ。闘莉王と中澤の展開力が、これまで以上に問われることになる。

香港戦では闘莉王のロングフィードがきっかけとなり、相手ゴールへ迫る場面があった。一方で、中澤はショートパスをMFやサイドバックにあずけることが多く、局面を打開するパスはほとんど見せない。中澤より攻撃に関与する闘莉王にしても、距離の長いパスの成功率はそれほど高くないのが現状だ。

アジアの舞台では、CBの展開力はほぼ問われなかった。中盤での優位性がカバーしていたのだが、W杯ではそうもいかない。

中盤の構成力という強みで、W杯本大会も乗り切るのか。センターバックに攻撃への関わりをはっきりと求めていくのか。岡田監督の構想は、前者へ傾いているように感じる。それこそは現実的な戦い方でもあるのだが、垣間見える不安は拭えない。

戸塚啓コラム - サッカー日本代表を徹底解剖