Photo / Jun Hiraoka(平岡純) 11番でチップインイーグルを決め、ガッツポーズ

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帝王ジャック・ニクラスがホストを務めるメモリアルトーナメントで4打差をひっくり返す大逆転優勝を飾ったタイガー・ウッズ。フェアウエイキープ率100%の安定ぶりを見せつけた最終日のプレーぶりは、つい先日まで米ゴルフ界に出回っていた「スランプ説」を完全払拭する見事なゴルフだった。

そもそも「スランプ説」が浮上したのは、マスターズとその後の2大会でタイガーのドライバーショットがあまりにも曲がっていたことが最大の理由だった。曲がる原因と指摘されていたのは、今年2月のツアー復帰以来、手にしているドライバーのヘッドが380CCになっていること。コントロール性を重視して小さなヘッドのドライバーに持ち替えたのだが、そのダウンサイズヘッドを自在にコントロールできるところまで肉体が回復していないのではないか、そのせいでスイングが混乱し、かつてのスイング感覚が戻らないのではないかと言われていた。

しかし、ミュアフィールドビレッジにやってきたタイガーは、米メディアからのそうした質問をすべて否定。「左膝はバスケットボールができるほど良くなってはいないけど、たいていのことができるぐらいまで良くなっている」と回復具合を説明し、スイングに関しても「順調に、徐々に徐々に、クラブが振れるようになってきているし、飛距離も伸びている」「マスターズ後はアイシングも不要になった」と左膝に問題がないことを強調していた。

だが、王者タイガーの場合、とにかく「優勝」という結果を示さない限り、スランプだと言われてしまう。首位から4打差でスタートした最終日にタイガーが逆転優勝できるかどうかが、彼がスランプであるかどうか、全米オープンで勝てるかどうかを占う試金石になるだろうと見られていた。

そんな中、早々にチャージをかけ、奇跡のようなチップインイーグルまでやってのけ、難しい上がり2ホールを連続バーディで締め括って本当に逆転優勝してしまったのだから、この勝利はまさにタイガーが蔓延していたスランプ説を払拭する形になった。

優勝会見で語ったタイガーのこんな言葉が印象的だった。「左膝の回復とともに練習時間と練習量が少しずつ増やせるようになり、この数週間は打ち込みも練習ラウンドもたくさんやった。スイングのことを頭で考えただけで翌日すぐに効果が出るなんてありえないってことを、みんなも知るべきだ。やっと今週、すべての努力が実った」

メモリアルの4日間で披露したゴルフは「ベスページで勝つために求められるゴルフそのものだった」と付け加えたタイガー。全米オープン制覇への自信は、すでに最高潮に達している。(舩越園子/在米ゴルフジャーナリスト)