今回の【ドラマの女王】は、堂本剛主演の『帰ってこさせられた33分探偵』(フジテレビ系)。まだまだ続くと思いきや、今週の土曜日でもう最終回。事件や推理なんてハナからどうでも良く、ただただ主人公・鞍馬六郎のヘンテコ推理の映像化と、寒いギャグ、クセのある演出をだらーっと見せられる33分見ているのが限界のサスペンス?ドラマ。「誰も待ってなかったし、もう帰ってこなくていいよ!」と言いたくなるのだが、これぞまさに堂本剛の「イキザマそのもの。」そんなドラマである。

わざわざ『帰ってこさせられた〜』と言っているが、33分探偵は終わっていない。3月28日に始まった『帰ってこさせられた33分探偵』は全4話だけど、第10話から始まり13話(最終回)で完結する。昨年約2ヶ月(8月2日から9月27日まで)放送しておいた『土曜ドラマ・33分探偵』の残りの1ヶ月分を、別のドラマを2つ挟んで続編として放送しているのだ。

なんでこんな面倒くさい事をするのだろう?
「もう、帰ってこなくていい!」と言ったが、実は記者はこのドラマ、そんなに嫌いじゃない。堂本剛の『金田一少年の事件簿』も好きだったし、『THE3名様』や金曜ナイトドラマ『独身3!!』を手がけた福田雄一や森谷雄が監督。面白くない訳がない。

ドラマの流れは大方、「事件が発生 → 六郎だけが疑問をもち33分間捜査を行う→ 結局は元の容疑者が犯人。(まれに真犯人アリ)」というもの。従来の推理ドラマの体裁を取りつつも、六郎の妄想推理から意外な真実がゆる〜く炙り出される。展開よりも、だらだらした過程を楽しむドラマに仕上がっている。『帰ってこさせられた〜』は放送の時期もブチ切りだが、放送時間もイレギュラー。なにもかも“グダグダに見せている”。

この“グダグダに見せている”が、堂本剛そのものだ。

鞍馬六郎を演じる堂本剛は不思議なアイドルである。堂本光一とKinKi Kids(キンキキッズ)を組んで10年以上、4月10日で30歳の大台に乗った。もうキッズじゃなく立派なおじさんだ。しかしながら、堂本剛は30になるずっと前から枯れている。

「元気が基本!」のジャニーズ事務所のスターながら、20代半ばで疲れ果て自らの冠番組に「正直しんどい」なんて付けてしまう剛は、脱力系とかもうそれを通り越してどこか病んでいる(ように見える)。なにもかも美化された“ジャニーズのアイドル”である事を何よりも嫌い、関西人らしい「けったいなヤツ」を一生懸命演じているふしがあるツヨシ。妙に酒太りした「けだるい」感じや、変な髪型などで自分を汚すのも上手い。

が、しかしそこはオリコンチャート1位、ドームのコンサートを満員にするだけのアイドルなので、脱力しているのは“見せかけ”。決してふ抜けたアイドルではない。堂本剛の心の底にはキムタクにも負けない高い自意識と、闘争心が渦巻いている。だから人気は持続する。

しかし残念ながら、彼には天から与えられた芸術的センスが無い。
型にはまったKinKi Kidsの曲に満足せず、ENDLICHERI☆ENDLICHERIとしてソロの音楽活動をしているが、どう考えてもキンキの歌の方が聞きやすく上手に聞こえる。その後の、『244 ENDLI-x』(ツヨシ・エンドリックス)や剛紫(ツヨシ)といった改名もピンとこない。努力家で、歌唱力も演技力も高いのに剛クンにはアーティストとしての光るセンスを感じないのである。

実は本人も(決して認めたくはないが)それをよく分かっている。
堂本剛は自分という素材を、自分でどう料理していいか分からないから自らを汚し、脱力して見せる。かっこよく決めているジャニーズの中で一人“疲れていれば”それはそれで目立ち“おいしい事”も分かっていて、だから時々「どこを向いているか分からない遠い目」をしたりするのだ。