先日、昨シーズンの収入が欧州全体でレアル・マドリーに次ぐ結果を残したと発表したアーセナル。この結果、クラブ側から7000万ポンド(約164億円)の補強資金を確約された指揮官のアーセン・ベンゲル監督だが、選手獲得に際する判断基準を変えるつもりはないと断言。あくまで育成路線を貫き通すと語った。

 アーセナルの監督として12シーズン目を迎えたベンゲルは、過去リーグ優勝を3度、そしてFAカップのタイトルを4度獲得した自らの補強方針を、豊富な資金による“大物買い”で台無しにしたくないとコメント。バルセロナのMFロナウジーニョを例に挙げながら語るベンゲルは、スター選手の浮き沈みの激しさを指摘し、堅実なチーム作りの必要性を再確認した。

「監督としては、自らの判断を信じる必要がある。同時に、自分がミスを犯す可能性があることも理解しておかなければならない。いつも言っているように、常にリラックスしていることが重要だ。監督という仕事は、右手に爆弾、左手に手榴弾を同時に持っているようなもの。間違いを犯せば、すぐに顔が吹っ飛ぶということだ。恐らく1年前であれば、ロナウジーニョは世界一の選手だったろう。だが、今は違う。ただそれだけのことだ。テニスのランキングでは、3月の時点で1位だった選手が、11月に10位まで落ちていても不思議ではない。サッカー選手も同じようなものだ。3000万ポンド(約70億円)の大金を払って獲得した選手のおかげで、これまでの仕事を台無しにされたくない。テレビによく映るからといって、その選手がスーパースターだと決めるのは間違いだ。何より、ピッチ上でのパフォーマンスが大事なのだ」

 大方の予想に反し、プレミアリーグの首位に立つアーセナル。しかし、好調なスタートを切ったベンゲルは、「チェルシーがこのままで終わるわけがないし、いまだ本調子ではないマンチェスター・ユナイテッドもすでに順位を上げてきている。リバプールも手ごわい存在だ」と語るなど、浮かれた様子はない。現時点で、名実ともにイングランドのトップクラブと言えるアーセナルにとって、ロナウジーニョをも不必要とする智将の補強戦略を支持し続けられるかが、クラブの命運を握っていると言えそうだ。