藍の奮闘、「ラック（運）」なんて言わせない！／ＡＤＴ選手権・第3ラウンド
今大会のプレーオフ・システムには相変わらず批判の声が聞こえてくる。だが、何はともあれ、最終日に駒を進める８人は、賞金女王レースの渦中にいるオチョアとウエブ、米国のスターであるガルビスとクリーマー、韓国のスターである金という具合に「それなり」の顔ぶれが揃った。その意味では、プレーオフ・システムそのものも「それなり」のものなのかもしれない。
最終日は８人がゼロからスタートして18ホールを競い合うため、２日間、単独首位を守った宮里や３日目に単独首位に立った鄭のスコアや順位は、もはや意味がない。それどころか、８人の中で賞金ランクが最も低い鄭（38位）と宮里（22位）は最終日の第１組とされ、トリの最終組は賞金女王争いのオチョアとウエブ。辛口の地元紙の明日の朝刊を想像すると、宮里や鄭は賞金ランクが低いのに「ラッキーで最終日に進出」などと書きかねない。だが、賞金ランクが低く、賞金女王レースにおいては蚊帳の外であっても、宮里や鄭がこの３日間、全32人の選手たちの中で最もいいゴルフをしてきたことだけは事実だ。「運でもなく、自分のプレーを普段通りにやって、自分で作ったチャンスなので、そのチャンスを生かしたい」と宮里自身も語っているように、宮里や鄭のがんばりは彼女たちの実力だ。
明日の最終日、宮里や鄭が優勝して100万ドルをつかんだら、米メディアは「番狂わせ」「アンダードッグ（大穴、伏兵）の優勝」と書くだろう。確かに、賞金ランクを基準にすれば、その表現は正しいかもしれない。波乱が起こるように考案されたのがプレーオフ・システムなのだから。だが、もしも「ラッキー優勝」と書いたら、これは抗議ものだ。これまで３日間のスコアは白紙に戻されるが、宮里や鄭には３日間の努力を無駄にしてほしくない。誰が勝っても、優勝は「ラック（運）」ではなく「実力」なのだ。優勝にラックは必要だが、ラックだけでは優勝できない。辛口な米メディアに、これ以上、アイ・ミヤザトをコケにされたくないではないか。宮里のワイルドカードによる出場、単独首位を守った２日間、８枠に残った３日目、すべてが「ラッキーだった」なんて言わせたくないではないか。そのためにも、明日、「自分を信じてやる」という宮里の大いなる踏ん張りを望んでやまない。
文：舩越園子（ふなこし・そのこ）
在米ゴルフジャーナリスト 1963年生まれ。東京都出身。ニューヨーク在住。早稲田大学政経学部卒業後、百貨店勤務、広告代理店勤務を経てフリーへ。93年に渡米。アメリカのゴルフ界を取材し続け、日本の新聞、雑誌、インターネット、各種フリーマガジン等へ幅広く執筆している。BEYONDSHIP代表取締役。著書に「転身！デパガからゴルフジャーナリストへ」（文芸社）、訳書に「タイガー・ウッズの不可能を可能に変える5ステップドリル」（講談社）などがある。
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