「NASAの探査機「オシリス・レックス」は、こうして小惑星からサンプルを採取する」の写真・リンク付きの記事はこちら

米航空宇宙局(NASA)の惑星探査機「OSIRIS-REx(オシリス・レックス)」が、12月3日12時20分(米国東部時間)に小惑星ベンヌに到着した。

オシリス・レックスは、NASAが8億ドル(約900億円)の予算を投じて進めるニュー・フロンティア計画の一環として、2016年9月にケープ・カナヴェラル空軍基地から打ち上げられた。目的地にたどり着いたことで、太陽系惑星の調査は重要な瞬間を迎えたことになる。

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ベンヌは直径500m弱の小さな惑星だが、今回のミッションには大きな期待がかけられている。

ひとつには、45億年前の誕生時から、組成がほとんど変わっていないと考えられているからだ。つまり、惑星表面の物質を分析すれば、太陽系の歴史や地球で生命の誕生を引き起こした有機物質について、新たな発見があるかもしれない。ただ、ベンヌから物質を採取して地球までもち帰るには、さまざまな難関をクリアしなければならない。

探査機の様子はNASAがライヴ中継

オシリス・レックスという名前は、惑星の起源(Origins)、光学的観察による分析(Spectral Interpretation)、組成の特定(Resource Identification)、太陽風から受ける影響の調査(Security)、表面探査(Regolith Explorer)の頭文字をつないだものである。

ここからもわかるように、探査機はまずは惑星のはるか上空から望遠鏡などを使った観測を行う。なお、ベンヌへの到着の様子や探査機の現在の様子は、NASAの提供するライヴ動画から確認できる。

NASAによる探査機のライヴ動画。VIDEO COURTESY OF NASA

オシリス・レックスは今後1カ月、惑星表面から約12マイル(約20km)の距離を維持しながら観測を行う。この間には数回の接近を試みる計画で、最高800フィート(244m)まで近づくこともあるという。12月31日には軌道に入る予定だ。成功すれば、ベンヌはNASAが軌道観測する惑星としては最小となる。

2021年には地球に帰還?

上空からの観察は、サンプル採取に最適な場所を特定するためでもある。あえて「採取」と書いたのは、オシリス・レックスはベンヌに「着陸」はしないからだ。

具体的には、惑星表面に可能な限り接近して、10フィート(3m)ほどの長さのロボットアームを伸ばす。その先から窒素ガスを噴射して、舞い上がった塵を集めることになる。採取量は最低でも2オンス(約56.7グラム)を目指している。

なお、探査機は最大で4.4ポンド(約2キログラム)の物質を載せられるように設計されている。実際にどれだけの物質をもって帰って来るかはわからないが、どちらにしても1970年代のアポロ計画以来の量となることは確かだ。

すべてが順調に進めば、オシリス・レックスは2021年春にベンヌを離れ、再び長い時間をかけて地球まで戻ってくる。ただ、先走りすぎるのはやめておこう。探査機は地球への帰途につく前に、2年以上もこの小さな惑星とダンスを踊る必要があるのだ。そして、曲はまだ始まったばかりだ。