夜遅くの食事と心臓病のリスク増加の間に関連性が認められたという報告が、2018年11月10日から12日まで行われているアメリカ心臓協会のScientific Sessions 2018で発表されました。

Why Late-Night Eating May Hurt Your Heart

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近年は夜型のライフスタイルを送り、食事時間や睡眠導入時間が夜遅くになっている人が増加しています。コロンビア医科大学院の臨床医で博士研究員であるNour Makarem氏らの研究チームは、近年における肥満や高血圧、糖尿病の原因の1つに「夜遅くの食事」があるのではないか?とみて調査を開始したとのこと。



by Adrienn

この研究は、2014年に発表された「The Hispanic Community Health Study/Study of Latinos」という研究のデータベースを利用したため、ヒスパニック系とラテン系の18歳〜76歳の成人1万2700人を被験者としています。データベースのうち、被験者が自分の食習慣を報告した別々の2日の情報が、血圧や血糖のデータと比較されました。

この結果、まず、被験者の半数は夕方18時以降に、1日の総カロリーの30%を摂取していたことがわかりました。そして、これらの被験者は、18時以降のカロリー摂取量が全体の30%未満の被験者に比べて、空腹時血糖の値、インスリンレベル、インスリン抵抗性「HOMA-IR」のレベル、そして血圧が高かったとのこと。

空腹時血糖値が高いことは、2型糖尿病の患者の多くが糖尿病発症前に経験する「前糖尿病(境界型糖尿病)」のサインであるといわれています。実際に、今回の調査においても、夕方18時以降にカロリー全体の30%を摂取していた被験者は、そうでない被験者に比べて前糖尿病となる傾向が19%高いという結果が示されました。Makarem氏は、前糖尿病が心臓病のリスク要素である2型糖尿病になる可能性は17%だとは記しています。このような被験者は高血圧になる可能性も23%高く、特に女性において関連は多く見られたそうです。



by Daria Shevtsova

ただし、今回の研究は、特定のアメリカの中のグループを対象としていることや、因果関係ではなく「相関関係」が見つかったのみであるという点、そして査読がまだ行われていないという点には注意が必要です。

Makarem氏は、夜遅くの食事と糖尿・高血圧などの関連には、体内時計が関係しているとみています。

脳に存在する視交叉上核は時計中枢としての役割を担っており、外部からの光刺激をもとに体中の細胞の時間をセットして、「眠るタイミング」「食べるタイミング」を教えてくれます。Makarem氏によると、視交叉上核は外部からの光以外に、「行動」、特に「食事」によっても制御されるとのこと。そのため、夜遅くにたくさん食べるなど、型どおりではない食事をしてしまうと、体が間違ったサインを受け取って代謝に問題が生じたり、糖尿病・高血圧・心臓疾患といった慢性疾患のリスクが上がるのではないかとMakarem氏はみています。

この研究には参加しなかったノースウェスタン大学フェインバーグ医学院のKristen Knutson氏は「1日の終わりにたくさん食べることが代謝に悪い影響を及ぼすという結果は、これまでの研究と一致する」と述べ、概日リズムにおいて最適ではない時間に食事をすると問題が起こるという点を強調しました。