外国人技能実習生の失踪が過去最多「労働力として認め、新たな制度を作るべき」
日本で失踪した外国人技能実習生の数が、2015年に5803人に上り、過去最多だった2014年(4847人)を大幅に上回ったことが法務省の調べでわかった。
外国人技能実習制度は、日本の技術を学んでもらうことを目的に外国人を受け入れる制度で1993年に導入された。農業や漁業など、71の職種が対象になっている。年間約17万人が働いているが、労働環境が劣悪だといった批判が根強くある。
実習生の失踪は2012年は2005人だったが、2013年に3566人、2014年には4847人と増加が続いている。失踪者が増えている背景にはどんな理由が考えられるのだろうか。また、失踪を防ぐためには何が必要なのか。外国人技能実習生の問題に取り組む池田泰介弁護士に聞いた。
「実習生の失踪は10年以上前から問題視されています。主な理由は、受入企業の過酷な労働条件に耐えかねた失踪や、もっと高い給料を得るための失踪があげられます」
池田弁護士はこのように述べる。「もっと高い給料を得るため」とはどういうことだろうか。
「技能実習生の多くは、出稼ぎ目的で来日しています。ところが、来日後、物価や税金・社会保険料が高い反面、彼らに支払われる賃金は非常に低く、場合によっては最低賃金に満たないことすらあります。
そこに、労働環境も劣悪であれば、ブローカーなどの手引きのもとで、より高い賃金が払われる仕事を求めた失踪へと繋がることとなります。
あくまで推測ですが、ここ数年、失踪率も増加した原因として、より安価な労働力を求め新興国からの実習生の受け入れが進んだことや、日本国内の単純労働の人手不足が深刻化していることがあげられるのではないでしょうか」
●国の労働力の一つと認める新たな制度を失踪を減らすためには、どんな施策が必要だろうか。
「第三者機関の監督機能や罰則強化、実習生との連絡を密にとる等の対策は挙げられますが、この制度を維持、拡大しながら失踪問題を抜本的に解決することは非常に難しいです。
難民申請制度を利用した失踪ケースは論外ですが、技能実習生は、日本人が避け、または高齢化などで人手不足が深刻な分野の補完として機能している実態を率直にとらえ、一定範囲の事業所選択の自由や賃金保障を認めることが必要と考えます。
そうなると、技能実習制度の根本が覆ることとなります。しかし、技能実習生は、建築業界をはじめとした人手不足解消の要請により否応なく増加していくでしょうし、今後、介護の分野も進出が予定されています。
国が今後も労働力不足を外国人を受け入れる方法で解消するならば、技能実習生という名ばかりの制度にとらわれず、国を支える労働力の一つとして認め、それに対応した新たな制度を作る必要があるでしょう。
そうしなければ、失踪者増加に歯止めがかからず、結果として治安悪化にすらつながりかねません」
池田弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
池田 泰介(いけだ・たいすけ)弁護士
外国人に関する法律案件の他に、労働事件、家事事件をはじめとする国内民事事件についても多く手がける。外国人問題に関わる著作(共著)として「外国人の法律相談(東京弁護士会外国人の権利に関する委員会〔編〕」
事務所名:弁護士法人六法法律事務所
事務所URL:http://www.loppo.gr.jp