北朝鮮当局は、国内にダブつく「外貨タンス預金」を回収し、国庫に納めるために高級レストランを次々にオープンさせ、富裕層の消費を刺激している。昨秋には200ドルもするアヒル料理のコースが人気を博していたが、今の平壌ではマグロ、それも「日本産マグロ」の刺身がブームだと米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

最近平壌を訪れた中国のビジネスマンによると、平壌の高級幹部の間ではマグロが大人気だ。1週間の平壌滞在中に様々な高級幹部を接待したが、口をそろえて「マグロが食べたい」と言うので、自分がさほど好きではないにもかかわらず、毎回マグロの刺身を食べるはめになったという。

平壌市内でマグロが食べられるのは、高麗ホテルのレストランやヘダンファ館ぐらいだが、酒代と合わせて300ドル(約3万5000円)もする庶民には想像だにできないほど高価なものだ。

出張にやってきた北朝鮮の幹部をよく接待するという中国朝鮮族のビジネスマンは「なぜあそこまでマグロを食べたがるのかが理解できない」と首を傾げてつつ「北朝鮮の人民は市場で商売してその日暮らしをしているというのに、マグロ三昧とは情けない」と批判した。

水産業に力を入れている金正恩政権下で、魚を食べることは「政治的に正しい」が、高価なマグロを輸入することは「政治的に正しい」とは言えないだろう。

前述のビジネスマンは「マグロの刺身は日本から取り寄せたと聞いたが、北朝鮮庶民からすると想像できないほど効果だ」「マグロと言えば日本の名物だが、なぜ経済制裁中の日本のものが入ってくるのかはわからない」と疑問を呈する。しかし、マグロは日本だけのものではない。

国連食糧農業機関の統計によると、2012年のマグロ類の漁獲量はインドネシアが26.4万トンで世界で最も多く、以下日本(19.5万トン)、台湾(17.5万トン)、フィリピン(14.1万トン)と続く。日本以外からでもいくらでも輸入できるのだ。

さらに、北朝鮮の現状を考えると、今のマグロ人気は韓流ドラマの影響と考えられる。韓国では、ヒラメやスズキなど白身魚が刺し身のネタとして人気があるが、マグロ専門店も少なからず存在する。キムチや海苔で巻いて食べるなど、日本とは食べ方も異なる。

情報筋は、北朝鮮でのマグロの食べ方については明らかにしていない。