Twitter乗っ取り被害は後を絶たない(写真はイメージです)

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 ここ最近、有名人のTwitter乗っ取り被害が相次いでいる。一部では「失言を取り消すための言い訳では?」との見方もあるが、一般ユーザーでも乗っ取り被害に遭うケースが増加しており、SNS時代において身近で深刻な問題となっている。

有名人の乗っ取り被害が続出、一般人も標的に

 5月25日、タレントの千秋が主催するハンドメイド雑貨店「ハロー!サーカス」の公式アカウントが全く関係ないゲームの宣伝ツイートを三回も書き込んでいたと報告。これに千秋は「アカウント乗っ取りって本当にあるんだ!? 有名人の言い訳かと思ってた!」と自身のアカウントでツイートし、その対応に追われた。

 パスワード変更しても効果はなく、一時は焦っていた様子だが、アプリ連携を解除したことで被害は止まり、千秋は「わたしも今後失言した時はおそらく本当に乗っ取られてるんだと思うよ。だってげんに今朝、本当に乗っ取られたんだからね。そうゆうこともあるね」とギャグにする余裕を見せた。

 千秋が言うように最近は有名人の乗っ取り被害が続いている。

 5月13日には、人気アイドルグループ「PASSPO☆」(ぱすぽ)のメンバー・槙田紗子が自身の公式アカウントで「メンバーみんな頭使えないし、こんなとこいるの無理だよ。それはみんなもわかるよね ほぼ中卒だし、マトモな人間じゃないんだからさ」などと仲間に対する暴言を書き込んだ。続けて「よくここまで続けられたわ 最初から芸能なんてしなければよかった。ブサイクばっか相手にしたし。芸能初めてから何人とエッチしたんだよって」などと枕営業してきたことを示唆し、大騒動になった。

 程なく所属事務所が「何者かによってアカウントが乗っ取られた」と発表し、アカウントを削除。書き込み内容は事実無根だといい、法的措置や被害届提出の準備を進めていくとしている。

 同グループは2013年にも別のメンバーのアカウントが乗っ取られ、卒業を示唆するツイートをしたことがあった。また、同じような騒動としてはAKB48の高城亜樹が合コンをにおわすツイートを書き込み、所属事務所が「取引先の社員がパスワードを悪用して書き込んだ」と調査結果を発表している。

 今年4月には精神科医の香山リカ氏が出演番組のパネリストを「ホント下劣」などと揶揄し、さらに「つまんない仕事だけど6月までは続けようかと相談してます」などと書き込んだことで騒動なった。これを発端に降板騒ぎにまで発展しており、ネット上の騒ぎを超えた余波をもたらしている。

 有名人だけでなく一般ユーザーの間でも知らないうちにアカウントが乗っ取られ、フォロワーに「レイバンのサングラスが格安で買える」などという偽サイトに誘導するコメントを無差別に送り付ける被害などが最近相次いでいる。

被害は事実か、言い訳か…白黒ハッキリしない理由

 乗っ取りの種類は大きく分けて三つあり、一つは他のサービスなどから流出したIDやパスワードを使った『リスト型攻撃』。パスワードの使いまわしをしていると被害に遭う可能性が高まる。

 二つ目は千秋のお店が引っかかってしまった「アプリ連携」を使った乗っ取り。Twitter向けアプリに仕込まれているケースや、アダルト系ツイートのリンクを踏んでアプリ連携を許可してしまうと乗っ取られる。これらは「パスワードを使いまわさず定期的に変更する」「怪しいアプリ連携を許可しない」といった対応で回避できる。

 三つ目は特定の人物に嫌がらせするため、恨みを抱いた人物などが不正にIDやパスワードを利用してなりすますというものだ。

 一つ目と二つ目は不特定多数を相手にした乗っ取りの手口であり、千秋やレイバンツイートのケースが該当する。これは乗っ取りが事実であることは明白だ。

 アイドルたちや香山氏の場合は特定の相手への嫌がらせを目的としており、三つめに当てはまる。だが、これは本当に乗っ取られたのか、言い訳なのかの見極めが難しい。特に香山氏は騒動後に「私信が知らないうちにツイートされてしまった」「乗っ取りではなくアプリケーションの誤作動かもしれない」と当初の主張を曲げており、乗っ取り被害の信憑性が揺らいでいる。

 社会的信頼にも影響しかねない事態であるだけに、白黒ハッキリさせるためには警察に被害届を提出するのが一番のように思える。事実、被害に遭ったアイドルたちの所属事務所は法的措置や被害届提出という対応をとっているが、それも難しいのだという。

「刑事事件にするなら『不正アクセス禁止法』で摘発するのが妥当に思えますが、同法で被害者となるのはユーザーではなくサーバーを管理しているTwitter社。同社が被害届を出さなければ刑事事件にはできず、少なくとも日本国内の乗っ取り騒動に関して今まで同社が動いた事例はありません。ただ、民事ならユーザーが名誉棄損や業務妨害などで訴えることはできますが、相手を特定するためには米国のTwitter本社に情報開示させる必要がある。これは非常に手間がかかりますし、絶対に相手を特定できる保証もない。結果、有名人の乗っ取り騒動は疑惑を完全に晴らすことはできず、グレーなままで終わってしまう」(IT系ライター)

 本当に被害に遭ったのだとすれば気の毒だが、これがネットに関する法律の現状のようだ。現実に起こっている問題に即して、ユーザーが被害を訴えられるように法律を変えていく必要があるようにも思えるが……。

(取材・文/佐藤勇馬)