トップ下として先発しピルロのマークを任された本田だが、攻撃面でインパクトを残すことはできなかった

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 「ミランが難しいチーム状態にあることは知っていた。だけど、僕たちはかなり苦しめられた」

 試合後、マルキージオは殊勝に語った。スコアは3-1。内容も完勝で、「途中からは完全にミランを弄んでいたようにも見えた」とトリノの地元記者は言う。しかしマルキージオの言葉は、この試合の真実を表している。ミランのアプローチがある程度は通用していたのは事実。それに対しユーベは、チームの完成度の違いを見せつけたのだ。

 ミランのインザーギ監督は、システムとアプローチを大きく変えてこの試合に臨んだ。チェルチとポジションを争う本田を右サイドMFからトップ下へと移し、ムンタリを左サイドMFで使った[4-4-1-1]。「左のできるボナベントゥーラが故障で頭から使えなかったため」と指揮官は理由を説明したが、この布陣には意味があった。DFラインを押し上げ、前線からしっかりプレッシャーをかけ、高い位置からボールを奪いに行くためだ。本田のトップ下起用はピルロのプレーエリアを制限するため、そしてチェルチやメネズのスピードを利用してショートカウンターに持って行こうという意図だろう。

 そして最初の20分間、試合は彼らの狙い通りに進んだ。緊密なプレスでユーベの後方ビルドアップを破壊し、細かくボールを繋いで攻めていく。オフサイドのかけ損ないからテベスに裏を取られて先制点は取られたものの、これは高いラインの代償なので仕方のないところ。肝心なのはその後だ。ミランはインテンシティ(プレーの強度)を下げずにユーベに食らい付き、細かいパスワークで押し込んだ末にCKを奪取。そして29分、移籍直後のアントネッリが高い打点のヘッドでチェルチのキックに合わせ、同点ゴールを奪った。先制点で意気消沈せず、むしろ盛り返して試合を振り出しに戻す。ここまでの流れには、確かに内容が伴っていた。