好調シャルケ。だが中盤起用の内田篤人は言葉を濁した
シャルケが好調だ。2月6日、ボルシアMGを1−0で破り、後半戦が始まって3試合で勝ち点7を獲得。勝ち点2を落としたのもアウェーのバイエルン戦なのだから、むしろほめられてしかるべきだ。順位も上々。来季チャンピオンズリーグ出場権を得られる3位に浮上した(順位は暫定)。ミッドウィークの試合をはさむ過密日程をそつなく乗り切った。
だがその一方で、シャルケのサッカーはまるで面白くない。ディマッティオ監督はこのところ3−5−2システムを採用。両サイドの内田篤人とフクスを中盤で起用しているのだが、これがほとんど5−3−2で戦うことになっている。先のバイエルン戦しかり、そしてこの日のボルシアMG戦もそうだった。
3バックにはヘベデス、マティプ、ナスタシッチと、3人ともセンターバックタイプの大型選手をそろえており、ゴール前の厚みは増した。その前にはキルヒホフというまたディフェンダータイプの選手を置き、キープ力と展開力のあるヘーガーと、縦への推進力があるバルネッタを中盤に配している。この日は2トップに2列目タイプとしても動けるボアテングと突破力のチュポモティングを起用した。メンバーは悪くはないが、中盤が機能せず、攻撃はカウンター一辺倒になった。
内田に言わせれば「先制しているから無理して上がる必要はない」。両サイドも守備的になり、5バックが後方に張り付いた状態となる。その5枚がラインを上げ下げして相手の中盤にプレッシャーをかけるのだが、いかんせん見ていて面白くないのだ。
ディマッティオといえば、2011〜12シーズンのチャンピオンズリーグ決勝でチェルシーを率い、バイエルンを下した一戦を思い出す。手堅い戦いぶりで、延長、PK戦の末、守り勝った印象が強かった。当時、ディマッティオはシーズン終盤に暫定監督として就任したばかりで、だからこそいわば即席に守備を強化し、あわよくば1点を狙うサッカーに徹したように見えた。
翌シーズン、チェルシーはもう少し攻撃にも重点を置いた、言ってみればまともなサッカーに着手したと思われたが、なかなか結果が出ず、彼は早々にチームを去った。それ以来、約2年のブランクを経て監督業に復帰したのがこのシャルケだったというわけだ。
やむを得ない面もある。後半戦初戦のハノーファー戦で、悪質なファウルを働いたと見なされたFWフンテラールが6試合の出場停止(後に4試合に軽減)に。両サイドのアタッカーでシャルケのカラーそのものでもあったドラクスラーとファルファンは長期離脱中。フンテラールは間もなく復帰するが、両サイドのパワーは欠いたままだ。このところ96年生まれのサネが途中から出場してその穴を埋めようとしているが、まだまだドラクスラーやファルファンの存在感にはほど遠い。
ボルシアMG戦後、「勝ったから良しとする?」と聞かれた内田は、「勝ったから(良しと)言えるけど......」と、言葉を濁した。内容には不満があるが、詳しくは言えない、と受け取るしかないだろう。
中盤での起用そのものについては、「やっぱりどこで起用されようと俺は守備の選手だし、これからファルファンみたいになることはないと思う。でも攻撃に関しては、(右サイドで内田の前に入ることの多かった)ファルファンに頼りきりだったから、中盤で起用されたからには頑張ってみるよ」と前向きに語っている。試合前の練習は、右から中央から、ロングシュートを数本放って切り上げたが、試合中にその成果を発揮することはなかった。
短期的に見れば結果が出るサッカーなのだろう。だが、手堅いだけの守備的サッカーにあまり未来を感じないのは気のせいだろうか。
了戒美子●文 photo by Ryokai Yoshiko