本田圭佑が抜けた穴を埋められないでいるミラン
【オフィシャル誌編集長のミラン便り2014〜2015(16)】
本田圭佑がイタリアから遠く離れたオーストラリアの地でゴールを決め、日本代表を勝利に導いている間、彼が抜けたミランは苦戦している。クリスマス休暇が明けてから、すでに2試合をこなしているが、ミランは勝ち点1しかとれていないのだ。
1戦目はサンシーロでサッスォーロに敗れ(1−2)、2戦目はアウェーのトリノ戦でどうにか引き分けに持ち込んだ(1−1)。これでクリスマス前のナポリ戦での勝利とローマ戦での引き分けも、まるで意味のないものになってしまった。現在ミランが目標とする3位にいるのは勝ち点31のラツィオだが、もしこの2試合で勝っていたのなら、ミランもラツィオと並んでいたはずである。対戦相手がどちらも順位が下のチームで、前進する大きなチャンスだっただけに、この結果は非常に悔やまれる。
それにしても昨年末の好調から一転、どうしてこうなってしまったのか。ドバイでの短い冬期キャンプ中には、親善試合ではあったがヨーロッパ王者レアル・マドリードに勝利し新たな闘志を得たはずだし、1月に入ってからは不発だったトーレスとのトレードで、アトレティコ・マドリードからイタリア代表MFアレッシオ・チェルチを手に入れ、一気に追い上げる準備は整っていたはずだ。
リーグ再開後の2試合は、どちらでも先制しておきながら、勝利に結びつけることができなかった。最初はいいのだが、時間を追うごとにメッキが剥げていくような、そんな試合内容だった。
トリノ戦では前半最後にDFデ・シリオが警告2枚で退場、ミランは後半全てを10人で戦わなければならなかった。後半は最初からミランはトリノの包囲網を突破するのに苦労するようになった。失点を恐れてか中盤から後ろに縮こまり、攻撃は実質的に諦めて守ることしか考えていないようだった。その結果トリノに多くのゴールチャンスを与え、ミランのシュートはまるで見られなくなってしまった。
そしてついに終了10分前にトリノに同点に追いつかれる。しかしトリノのゴールはコーナーからのものであり、一人少なかったことはあまり関係がないように感じる。それよりも、どんどん縮こまっていってしまったプレイの方が問題だった。また今シーズン8度目のセットプレイからの失点というのも気になる。
1月の本田の不在を危惧する声は昨年の10月からあがっていた。しかしクリスマス前にミランがアイデンティティを確立したかに見えると、そうした心配もあまり聞かれなくなった。おまけに早々にチェルチも獲得したので、少なくとも本田が戻ってくるまでミランは安泰だろうとガッリアーニ(GM)もインザーギも思っていたはずだ。しかし実際には全ては変わってしまった。やはり本田の抜けた穴は大きく、それに付随してミランの緊張感もプツリと途切れてしまった感じだ。
ベストメンバーが全て揃うことはなかなか難しい。しかし右サイドのアバーテ―本田のラインは開幕直後からよく機能していた。その後少しトーンダウンしてしまったのはアバーテが怪我で欠場が続いたからである。今、アバーテはピッチに帰ってきたが今度は本田がいない。
ただし、リーグが折り返すまでにはまだ1試合あるが、今のミランは、昨シーズンのミランの前半の成績より4ポイント多いことも事実である。
休暇が明けてからはハードなスケジュールが続いている。まずはリーグ戦が5日間で2試合、それに加えて今日13日には今シーズンの目標の一つであるコッパ・イタリア戦がある。対戦相手は1週間前に敗れたサッスォーロ、しかもまたまたサンシーロでの試合である。今度こそミランらしいプレイを見せて欲しいとサポーターは願っている。
試合と試合の間が短く、なかなか十分な充電期間を持つことができないが、今はフィジカルよりもメンタルのエネルギーの方が重要であると思う。自国の誇りを守るために戦っている本田の不在を嘆くばかりでなく、一日も早くミランらしいミランに戻ることが今は何よりも大事だ。
ステーファノ・メレガリ(『Forza Milan!』編集長)●文 text by Stefano Melegari
利根川 晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko