ブンデス前半戦終了。日本人12人はいかに戦ったか
今季のブンデスリーガ前半戦が終わった。リーグ全体を振り返れば、ドイツ代表にブラジルW杯優勝によるある種の"燃え尽き症候群"のようなものがあり、その余波、しわ寄せを受けたチームがあったようにも見える。
まず、昨季2位のドルトムントが17位でフィニッシュ。低調な戦いの原因は故障者の多さや戦術が読まれ出したことなどと言われたが、なかでもDFの中心フンメルスの不在が大きかったはずだ。無敗で首位を独走するバイエルンにしても、MFシュバインシュタイガーが長く離脱し、12月に入ってチャンピオンズリーグと最終節マインツ戦の2試合でようやくフル出場。逆にキャプテンのラームは11月に負傷で離脱した。代表でも主力中の主力だった選手たちには、W杯が何かしらの影響を与えたと言っていい。
日本人選手に限って見ていくと、まず目を引くのは岡崎慎司(マインツ)の活躍だ。強度の打撲でベンチ外となった1試合をのぞきフル出場。8ゴール3アシストは立派な数字だ。ヒュルマンド監督は「どこにでも出没するファイターだ。ボールを奪えるところ、チャンスになりそうなところ、そしてゴール前では相手にとって危険なところを嗅ぎ付ける。彼は私のサムライだ」と絶賛している。
とはいえチームは第9節以降勝ちがなく、現在12位。「チームは(前半戦の)後半、失速して満足してない。良いときも悪いときもあった前半戦。個人的には良いプレイを常に続けられてすごく自信になったが、チームを勝たすことができなかった」と、岡崎は収穫と課題を感じている。
今季、意識しているのは「チームを勝たせられる、変えられる」選手になることだと言う。「選手はひとりじゃ何もできない。でもひとりでチームを変えられる選手というのは少ないけれどいる。自分が警戒されすぎて点を取れていないときはチームもうまく回っていない」と、そのイメージを語る。アジアカップによる離脱がチームに与える影響は間違いなく大きい。
次いで安定した活躍を見せているのが内田篤人(シャルケ)だ。負傷もありスロースタートだったが、第5節以降はフル出場。古傷のことなど感じさせないプレイぶりだ。
ディマッティオ監督からは「お前は痛くても申告してこないとスタッフから聞いている。今は大丈夫なのか?」と直接、尋ねられたことがあると言う。体育会系日本人らしく、自分から痛いと言わないことを一種の美徳とする面があるが、試合で100%のプレイをするために、練習を休む必要があれば休んで然るべきだということのようだ。「それでもすぐ休むヤツって思われてなくてよかった」と、笑ってみせた。
じょじょに順位を上げ現在5位のシャルケ。最近になりディマッティオ監督は4−2−3−1から3−4−3へシステムの変更を模索している。中盤での起用で内田の攻撃性も今後さらに生かされるはずだ。
今季、生まれ変わったように生き生きとプレイしているのは、9位につけているフランクフルトの乾貴士だ。チームに長谷部誠が加入したことで精神的にも安定。また、昨季後半以降は冷遇されていたが、指揮官が交代。シャーフ新監督は乾のような攻撃的MFを生かすことに定評があり、彼の下でよみがえった。日本代表としてアジアカップメンバーに選出されたこととも無関係ではないだろう。
今季のフランクフルトでは2列目の左の選手としてファーストチョイスの地位を確立。ただし14試合に先発出場して1得点は物足りない。「思ったところにボールがこない」とぼやくこともあり、今後はさらなるコミュニケーションが求められる。ここでも長谷部の手助けは大きいのではないか。
難しい状況に陥っているのがドルトムントの香川真司だ。前述のようにチーム状況も厳しいが、その中にあってシーズン途中加入で結果を出せていないのは痛い。クロップ監督は「チーム状況が悪い中、移籍してきていきなり結果は出せない」と長い目で見ていることを認めている。
加入した最初のフライブルク戦では1得点を挙げたものの、その後はドイツ杯をのぞいて無得点。これは、復帰戦がいかにチームにお膳立てされたものであったかを、証明してしまったことになる。それだけチームメイトに愛される存在であることは間違いなく、ファンも「良い選手だが、今はまだ......」と、クロップ同様の認識でいる。
マンU時代に出場機会が減ったことの影響も大きいが、すでにドルトムントでは第3節から第13節まで連続で出場、そのうち9試合は先発だった。不調の理由を説明するのは難しい。香川自身、「ここで踏ん張らないと落ちて行くだけ」と苦しい心境を吐露したこともある。時間が解決すると信じて待つしかない。チームは冬の市場である程度の補強をするはず。本当であれば1月のスペイン合宿に参加したいところだが、アジアカップに出場する以上、うまく気持ちを変えて調子を取り戻してほしいところだ。
8位ハノーファーの酒井宏樹と清武弘嗣は安定して試合出場を重ねている。特に清武は3得点をあげ、着実に存在感を増している。
また、ヘルタ・ベルリンの細貝萌は、相変わらず、ルフカイ監督から厚い信頼を勝ち得ている。ただしチームは13位と苦しんでいる。唯一先発を外れたドルトムント戦ではホームで勝ちきり「今季一番嬉しい勝利」と笑顔を見せた。新たにチームメイトになった原口元気は開幕戦フル出場と幸先の良いスタートをきったが、負傷の影響もあって10試合出場に留まった。
シュツットガルトの酒井高徳は、15位に沈んでいるチームの不調のあおりを食った形だ。スポーツディレクターの解任や、監督交代という激動の前半戦だったが、ラスト3試合はステフェンス新監督の下でスタメンに返り咲いた。「チームの調子が悪いときに何かを変えたいのはわかるが、そのファーストチョイスにならないようにしたい」と話していた。
状況的に最も厳しかったのが11位ケルンの大迫勇也と長澤和輝だろう。シーズン前の期待が高かった大迫だが、第11節以降、先発がない。フォワード陣ではウジャに続く出場数だが、結果を出し切れていない。長澤は負傷の影響で離脱期間が長引いた。二人には後半戦開幕からの逆襲に期待したい。
ドイツのウインターブレイクは他国のリーグに比べ圧倒的に長く、第17節と第18節の間は約6週間も空く。その間にリフレッシュして後半戦に向かうのだが、アジアカップに出場する選手たちにはその影響がどう出るか。決勝まで進んだ場合、第18節には間に合わないことになる。
了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko