オフィシャル誌編集長のミラン便り2014〜2015(7)

"カポカノニエーレ"とはイタリア語で得点王の意味である。この日曜日、本田圭佑はベローナ戦で2ゴールをマークし、セリエAのカポカノニエーレとなった。ユベントスのテベス、ナポリのカジェホンとタイの首位ではあるが、それでも得点王には違いない。

 本田のゴールのおかげでミランは3−1でベローナを下したが、ミランがベローナホームで最後に勝利したのは、今から10年以上も前、実に2002年にまで遡(さかのぼ)る。そしてその時ゴールを決めた一人が、今はミランのベンチに座るピッポ・インザーギだった。当時のミランはその勝利でチャンピオンズリーグ(CL)出場圏入りをほぼ確実にし、翌年のCLではマンチェスターでユベントスを破り、ヨーロッパチャンピオンとなっている。

 かわって今はまだ第7節。CL出場権を手に入れるまでにはまだまだ長い道のりがある。しかしこの勝利から重要なことを垣間見ることができた。それはインザーギ率いるミランが"真のチーム"になってきているということだ。

 この一週間、ミランといえばエル・シャーラウィーの話題で持ちきりだった。フェルナンド・トーレスが加入したおかげで出番が減ってしまったエル・シャーラウィーが、現状への不満とレギュラーに返り咲きたいという強い気持ちを、とあるインタビューで吐露したからである。しかしこの日の試合での主役はトーレスでもエル・シャーラウィーでもなく、我らが背番号10、本田だった。

 本田はミランに来て、今までなかった力を身につけた。以前よりもずっと守備に注意し、同じ右サイドのアバーテと協力することで、チームに大いに役立っている。そしてなにより絶好調のフィジカルコンディション。それを最も如実に証明したのが、この試合の前半で彼が見せたプレイだ。

 30メートル近くをドリブルで上がった後、直接対峙した敵を一瞬のうちに抜き去り、ゴールチャンスを作り出した。かつて「本田は鈍い」などと評していた奴らは、今このプレイを見て一体どんな顔をしているのだろうか。

 またそれ以上にベローナ戦で印象に残ったのは、本田のゴール前での冷静さだった。本田はゴールを決めた時、2度ともGKと1対1になりながらも、焦ることもなく、角度あるシュートを大いなる正確さで決めている。今、イタリアのメディアは、ほんの数ヵ月で本田がこれほどの変身を遂げた理由を探そうと躍起になっている。昨シーズン、かなり手ひどく本田をこき下ろしてきただけに、彼らはそれなりの説明をしなければいけないのだ。

 この試合のあとの記者会見でも本田に対する多くの賛辞が聞かれたが、インザーギはそれらをシンプルだが手厳しい言葉で一刀両断、切ってすてた。曰く、「彼が活躍を見せ始めた今、そう言うのは簡単だ」。このコラムでは今シーズンの連載再開からずっと紹介してきたが、本田がチームに合流したその日から、彼が非常に優秀であることをインザーギは見抜いていた。

 1月に強く望まれてミランにやってくるも、慣れない環境や次々と襲いかかる困難を、本田はやる気とプロ意識で見事に乗り切った。ただまだイタリアのメディアに完全に受け入れられないのは、不動のレギュラーにもなり、いいプレイもし、ゴールもし、得点王争いのトップにたっても、彼が依然としてあまりしゃべらないからだ。

 この試合を境に、ミランの広報にはまた多くのインタビューのリクエストが寄せられることだろう。皆が本田を評価し、本田と話したいと思っている。しかし本田は現在も沈黙を守っている。まるで今のこの夢のような日々を、家族と家でゆっくりと味わいたいとでも言うように。だがこの静けさを少し楽しんだ後は、きっと本田自身の口から彼の飛躍の理由を説明してくれることだろう。

ステーファノ・メレガリ(『Forza Milan!』編集長)●文 text by Stefano Melegari
利根川 晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko