「オフィス」もクラウドで(写真は米国版製品)

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日本マイクロソフト(MS)が、業務ソフト「オフィス」の更新版を今後無料で提供すると発表した。加えて、個人利用者向けの「クラウド版オフィス」も発売する。

MSに限らず、ネットワーク上のサーバーにソフトを置くクラウドを活用したサービスの開発が進む。インターネット接続が前提なだけに、急速に膨らむ負荷にネットワークが耐えられなくなったら一大事だ。

クラウド型オフィス」はスマホやタブレットでも使える

過去、「オフィス」の利用者は最新版が出ると「アップグレード版」を購入しなければならなかった。新オフィスは、パソコン(PC)にあらかじめインストールされた形で発売されるが、その後ソフトが常に最新版へと無料で、かつ永続的にアップデートされる。

個人向けの定額制オフィスの商品も発表した。クラウド版で、PC以外にもスマートフォンやタブレット型端末から利用できる。1年間のライセンスでの提供となる。

2014年10月1日の発表の席には、米本社よりサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)が来日し、2種類の新製品を「日本市場に最適化した」と説明する力の入れようだった。既にMSでは、クラウド上で「ワード」や「エクセル」といったソフトを、機能を絞った形で無償提供しているが、個人ユーザー向けにクラウド型のオフィス完全版を投入するのは、ナデラCEOが提唱する「クラウドファースト」の戦略の一環と言えそうだ。

ソフトは、「PCにダウンロードするもの」から「ネットワーク上にあって必要な時にいつでも使えるもの」へと利用形態が変わりつつあるようだ。例えば、コンピューターウイルス駆除ソフトで近年、クラウド型になったものがある。ほかにも、画像や文書ファイルなどをクラウド上に保存しておくサービスが普及。ウェブを介した無料メールは、「クラウド」という言葉が流行する前から利用されており、すっかり定着していると言えよう。

クラウド上のサービス利用は、ネットへの常時接続が前提だ。アクセス障害が起きれば「仕事にならない」状態に陥る。心配の種はサーバーのダウン。実は、ネットワークへの負荷は近年急拡大している。

3年後にクラウドが世界のデータセンタートラフィックの3分の2

ネットワーク機器大手のシスコシステムズ日本法人がまとめた、世界のデータセンターとクラウドベースのIPトラフィックの成長予測によると、2017年でのクラウドベースのトラフィックは、2012年から4.5倍に増加し、世界のデータセンタートラフィック全体の3分の2以上を占める見込みだという。データセンターの処理能力の向上は進んでいるものの、データ量の急増にあたっては各サーバーがより多くの処理に対応しなければならないと指摘する。負荷が大幅に高まるのは明白だ。

総務省が2014年3月14日に発表した国内のネットのトラフィック総量を見ると、ブロードバンド契約者による総ダウンロードトラフィック(推定)は2013年末時点で前年同月比の35.6%増となった。契約者数自体はここ数年頭打ちになっているが、トラフィック量は1年で急増。特に移動通信によるものが顕著に伸びている。クラウドベースによるトラフィックがどれほど増えたかは読み取れないが、全体的にネットワークの負荷が増大しているのは間違いない。

クラウドサービスの普及は、コストの低減や、場所や機器を選ばず利用できる便利さなど多くの利点がある。ただしそれは、ネットワークの安定が保証されてこそ実現するものだ。おりしも国内では「ヤフーメール」で接続障害が数日間続き、利用者を悩ませる事態となった。クラウド化が進めば進むほどネットワークへの負荷は高まるが、同時に「不測の事態」が起きないための対策もますます重要となる。