モバイル・アプリの相互連携をめざすフェイスブック
だがグーグルとアップルはそれぞれ独自の規格を採用している
モバイル・アプリをWebブラウザのように使用することは、いまだ不可能である。アプリはそれぞれ独自に機能し、Foursquareが自社でSwarmを開発し、相互に連携がとれるような場合を除いて、ブラウザタブのようにアプリ間を移動するのは困難だろう。
フェイスブックは、モバイル・アプリ開発者をかき集めている。ディープリンク(アプリ内部の情報を直接記述するURL)を容易にする同社のオープンソース・ソフトウェアであるApp Linksを採用させるためだ。この試みが上手く行けば、アプリ内のリンクはブラウザでなく、より関連度の高いアプリで開くことが可能になる。一方、モバイル広告主も直接アプリへユーザーを引き込むことができるのだ。
Pinterest、AirbnbやHuluなどがApp Linksを使って30億以上のユニークURLを使用しています、とビジェイ・シャンカール(フェイスブックのプロダクトマネージャー)は、木曜日のサンフランシスコの円卓会議で記者団に語った。同社は4月にApp Linksをリリースしている。
「非常に多くのアプリがApp Linksを採用しています。使用法が簡単で分かりやすいので、リリースした途端に使われ始めました」と、シャンカールは語った。
App Linksはクロスプラットフォームで動作し、短時間実装が可能だ。開発者は、Androidにはタグを発行し、iOSにはカスタムURLスキームとアップルストアのIDを発行することによって、HTML ページでApp Linksを有効にする。使用デバイスに関係なく、モバイル・アプリでリンクが開くようになる。App Linksのサイトで、ドキュメント全てを確認できる。
App Linksはオープンソースであるため、フェイスブックはSDKのレファレンスを用意した。これで開発者は、App Linksの実装について、いちいち質問しなくて済む。
アナリティクスについてはどうか
開発者がApp Links のURLが実際どのように機能するのか分かるように、フェイスブックは、リンクを追跡し監視するアナリティクス・サポートを発表した。
「我々は、App Linksを使用する多くの開発者と出会いましたが、彼らの望みは、『App Linksの効果を知りたい』というものです」と、シャンカールは語った。
フェイスブック、Parseおよび Mixpanelは、アナリティクス・ソリューションを既に有効にしている。しかしそのどれも使用しない開発者は、App Linksのウェブサイトで提供されるオープンソースの情報を使用するか、他のアナリティクス・プロバイダーのものを活用して、アナリティクスを利用できるのだ。
グーグルとアップルの独自規格
ユーザーがApp Linksを使用してアプリ間の連携を得るには、そのアプリを両方ともダウンロードし、しかもApp Linksが使用できるものでないとならない。
Pinterest と フェイスブック は共にApp Linksをサポートしており、あなたの友人が フェイスブック経由でPINを共有する場合は、リンクをタップして Pinterest アプリでそれを表示することができる。しかし、まだApp Linksをサポートしていないツイッター経由で同じPINを表示しようとすると、開くのはモバイル・ブラウザということになる。
モバイル・アプリが互いに連携が取れるのは、非常に喜ばしいことだ。アプリからモバイル・ブラウザに移動して、ログイン情報を再入力するのはとても面倒なのだ。もっともApp Linksは、開発者にとって有益でも、解決策の域には達していないのも事実ではあるが。
グーグルもアップルもApp Linksをサポートしていない。App Linksのみでディープリンクを有効にするアプリは、グーグルやアップルのどのサービス(グーグル検索や iMessageを含む)からも直接アクセスできない。
グーグルはすでにAndroid アプリ向けに、アプリのインデックス、つまりディープリンクを提供している。このパッケージをインストールしているAndroidアプリ は、グーグル検索でディープリンクを使用することができる。ユーザーはモバイル・ブラウザで検索結果をクリックして、ダウンロード済みのアプリを直接開くことができるのだ。
Android 開発者が、グーグルやフェイスブックからユーザーを直接アプリに呼びこむには、app indexing とApp Linksの両方を使用する必要があるわけだ。
アップルのOSは、その一部はオープンとは程遠いものだが、次の iOS 8のアップデートで、サンドボックス制限が緩和され、アプリの相互連携が可能になると期待されている。これは、アップルがグーグルと同じく独自のディープリンク規格を発表することも意味する。
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フェイスブックに関してはどうなのか
アプリがモバイル・ブラウザを開き、ログイン情報を求めてきた時のことを思い出してください。最後までやりましたか?
あなたが私と同じ状況なら、おそらくやらなかったでしょう。私はほとんどの場合、モバイルの表示があまりに遅いため、PCでそのウェブサイトを見ている。アプリがインストール済みでも、モバイルでは目的のページを検索しない。あまりにも時間がかかるからだ。私はもっと簡単にやりたい。
App LinksがWebブラウザではなく、ログイン済みのアプリを最初から開いてくれるというのなら理想的だ。Eコマース・アプリであれば、クレジットカード情報を入力する手間を省き、2回タップするだけで商品購入が完了というわけだ。
App Linksは、Web ブラウザでタブを移動するように、モバイル・アプリ使用をよりスムーズにしてくれるだろう。
フェイスブックのApp Linksは、オープンソース・ソフトウェアであるため、利用している企業を知る方法はなく、App Linksが直接の収益源とはならない。しかし、フェイスブックと開発者の利害は、ほぼ同一といって問題ないだろう。
そう、広告だ。
フェイスブックのアプリ・ダウンロード広告は、ソーシャルネットワークで最も成功した製品のひとつである。それゆえ、広告が既にインストール済みのモバイル・アプリへと直接ユーザー導くというのが、次のステップとして自然の流れだ。
1ヶ月前フェイスブックは、App Linksをフェイスブックの広告システムでも使用できるようにAPIを更新した、とシャンカールは語った。おかげで、多くの人にアプリをダウンロードして使用して欲しい開発者は、フェイスブックの広告システムとApp Linksを同時に使用できるようになった。
App Linksは、すぐにアプリの使用方法を変えるには至らないだろう。しかし、6年前のApp Storeリリース以来初めて、モバイル・アプリが相互に連携できるようになるなら、素晴らしい第一歩と言えるだろう。
トップ画像提供(フェイスブックのプロダクトマネージャー、ビジェイ・シャンカール):Selena Larson
Seleana Larson
[原文]