孫正義 x コリン・パウエル対談講演、リーダーシップ論特別講義「Leadership: Taking Charge」

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孫正義社長の後継者を決めるソフトバンクアカデミアは、元・米国務長官コリン・パウエル氏を招聘し孫社長と対談する「リーダーシップ論」の特別講義を開催中。この日、Engadgetが呼ばれたということは、ひょっとすると何か新しい製品などが登場するのかもしれません。講演の模様を速報でお伝えします。

講演はリーダーシップに関する教訓めいたものと、孫社長がパウエル氏に聞きたかったことを質問する。そんな内容でした。 

孫社長とコリン・パウエル氏がまさかの対談です。会場には受講者や報道関係者だけでなく、議員席が用意されるなど、いつものソフトバンクの発表会とはちょっと異なる雰囲気。第1部では「Leadership: Taking Charge」のお題目でパウエル氏がスピーチ。二部では「リーダーを目指す人の心得」として対談予定です。

会場暗転、音楽が代わりました。まもなく始まります。司会者がパウエル氏を紹介「米国の取り組みの最前線に立ち、現在は世界中の企業の要職に就いている」。講演によって、リーダーとして成功する秘訣を持ち帰れるそうです。パウエル氏登場。エルビス・プレスリーの話で小泉純一郎元首相と盛り上がった話で観客をつかみます。

パウエル氏、ソフトバンクと協力してクリーンエネルギーについて、発電の仕組みを日本に投入すると述べました。孫社長とパウエル氏の若い頃の写真を紹介し、孫社長が韓国系の出自であり、移民のパウエル氏も若い頃は米国で差別があったと話しました。孫社長がその後米国に留学したことを紹介する中で「あきらめるな、努力をやめてはいけない」と述べました。

孫社長を持ち上げる一方、パウエル氏は自信で優秀ではなかったと話しました。新しい人生が築けると両親がジャマイカから米国に移住しましたが、移民であることや肌の色などで差別を受けましたが、両親が期待してくれたのであきらめなかったそうです。

軍に入隊し、パウエル氏は兵士としてキャリアを築き、軍のリーダーになりました。「移民として米国で家をたてました。移民がなければ今の米国はありません。彼らが一生懸命がんばっていることがわかるでしょう。移民がなければ人口は減少します。移民によって労働力が生まれ、必要な収入が生まれます。私は移民を信じています。社会の将来を考える時、今考えなければならないのは移民、文化を成長させ、人口を安定させるにはどうしたらいいのかを考えるためには移民を考えなければなりません」と話しました。

写真を紹介しながらパウエル氏は「アフリカ系アメリカン、ヒスパニック系アメリカンが次の世代、主流になっていきます。今は移民だが、次の世代のリーダーになっていきます」と語ったパウエル氏、ニューヨーク市立大学に氏の名前を冠した講義を行っています。

卒業生の写真を紹介。アジア系、アフリカ系、ヒスパニック系、イスラム系などの学生が写っており「みんなアメリカ人なんです」と話しました。また、女性が活躍する傾向にあると話しました。パウエル氏「移民の貧しい子ども達をもっと受け入れたいんです。チャンスを求める子ども達の学校にしたいんです。世界のさまざまな国で人口の問題を考える上で移民について考えるべきなんです」意気込みを語ります。

軍のリーダー、国務省のリーダー、何が違うか。パウエル氏は基本的に同じ「人」であるとします。

パウエル氏「前線に行くのはフォロワーで、リーダーの仕事は目的やビジョンを与えることです。達成感をもたせることが重要で、人間は目的意識が重要。たとえば、エンパイヤステートビルは1931年から立っていますが、地下の部屋の半分がゴミで一杯になっています。ビルで働く人たちから出るゴミです。その地下で働く移民の人たちに仕事は何か? と聞くと、私の仕事は世界からビルに来る人に美しい場所と思っていただくことですと話したんです」

さらにパウエル氏「兵士を信じて目的を与える、それは私にとって勉強でした。いつも彼らはついてきてくれるフォロワーでした。彼らに何かして欲しい時は、目的に合わせた訓練、環境を整えるなどが重要です。兵士がおなかがすいているなら最後に食べる。みんなおなかが減っていても将軍はそれを見せてはいけません。いつも彼らの見本として彼らをはげます必要があります。組織の大小は関係なく、できる限りに環境を与え、目的を達成するのが必要です」

大事なことが何か、人生の教訓をパウエル氏はメモ書きにして、机にのところに貼っているそうです。

ここで自身が執筆した本を紹介。「なにごとも思うほどには悪くない。翌朝には状況が改善しているはずだ」この態度が重要としました。明日にはよくできると信じるとポジティブになれるということでしょう。

続いてパウエル氏は「いつも悪いことを話し、引きずる人がいます。優秀な学生の質問ので怖いと思ったことは? 失敗するのが怖くありませんか?と聞かれました。失敗は常に起こることで、それが人生なんです。失敗が問題ではなく、それをどうするのかが重要ですと話ました」パウエル氏は人を非難する前に自分自身で問題の本質に対応することが大切と話しました。恐怖心のコントロールはベトナム戦争で学んだそうです。明日は今日とは違うので失敗はため込むな、と。

続いての教訓「まず怒れ。その上で怒りを乗り越えろ」。

「怒りが大きすぎて、相手を敵と思ってはいけません。スタッフには、私が怒っているときは数分1人にしてくれればいい、と話しています」

3つめの教訓「自分の人格と意見を混同してはならない。さもないと意見が却下された時自分も地に落ちてしまう」。ある意見があった場合に、人格ではなく、そういう意見があったと捉えるべきということだそうです。また孫社長と同じ教訓で「やればできる」と。

まだまだありがたい言葉が続きます。ありがた過ぎるので、この際続きは箇条書きにします。

選択には細心の注意を払え。思わぬ結果になることもあるので注意すべし
優れた決断を問題で曇らせてはいけない
他人の道を選ぶことはできない。他人に自分の道を選ばせてもいけない
小さなことをチェックすべし
功績は分けあう(失敗は責任を負う)
冷静であれ。親切であれ
ビジョンを持て。一歩先を要求しろ
恐怖にかられるな。悲観論に耳を傾けるな
楽観的であり続ければ力が倍増する

パウエル氏がようやく教訓話から戻ってきました「国務省のガレージにはたくさん車が並んでおり、修理している人達がいました。ホンジュラスやスーダンからの移民です。たくさん車が並ぶ中でどれを修理するか決めるのかと聞いたら、それは笑顔で朝接してくれた人だと言いました」つまり、リーダーは常に下の者と台頭に振る舞う必要があるということです。

最後にパウエル氏は「どんな人にも目的を与えて、組織を信じられるようにしなければなりません。リーダーは人間を率いていきます。部下を信じさせて常に実行するよう仕向けてあげるには、目的意識が大切です。組織の上に立った人は下の人達にできる事を用意するのが仕事なんです」と語りました。

第2部、パウエル氏は「リーダーを目指す人の心得」を孫社長と対談します。

孫社長から質問「日本では地理的歴史的に9割以上は日本人で、移民の受け入れは積極的ではありません。将軍はどう思いますか?」

パウエル氏:日本はもはや選択の余地はなく、人口減少が続いており、ここで若者を日本に受け入れる準備をせねば、税収面でも労働面でも難しいと思います。介護をしてくれるのは若者になると思います。それに労働者人口を充分に確保できなくなると思います。移民に日本人になってもらえばいいんです。米国では常に議論があり、常に緊張があります。でも必要なんです。空港に行けばわかると思いますが、移民がたくさんいます。もし移民をやめてしまったら、その仕事は誰がして誰が税金を払えるのでしょうか

孫社長:パウエルさんの両親は米国に不平をもらしていますか? 人種差別もあったと思います。

パウエル氏:両親は米国を愛していました。それはジャマイカでは手に入れられなかった収入であり仕事であり,家であり、子どもを育てる教育であり、車でありが手に入ったからです。

孫社長:まさに私もそうです。私の祖父母は韓国が母国と言いますが、それならなんで日本にいるのか? 若い頃に聞きました。祖父母は、でも日本も素晴らしい国だと言いました。日本の人に親切にせねばならないと言っていました。私は子ども頃、差別されたくなかったので自分のことを内緒にしてきました。でも日本に対して自分が奉仕できると示したかったんです。いつ日本人として受け入れられるかわかりませんが、いつか同じ人間なんだからと思うようになります。

パウエル氏:私の家の近所にはユダヤ系、プエルトリコ系、東洋系の人がたくさんいました。それが米国だと思っていましたが米国が全部そうではありませんでした。結局は人間としてどうあるべきか、に尽きると思います。黒人だからここでハンバーガーを買ってはいけないと言われることもありました。ベトナムに2回行って両親に心配されましたが、私の叔父が「軍に行ったら年金がもらえるんだよ」と言うと両親は非常に驚き、喜んでいました。つまり、移民とはそういうことなんです。

孫社長:子どもの頃、韓国人と日本人のボクシングの試合を見ていました。祖父母は韓国人のボクサーが相手を殴ると喜んでいました。でも私はどっちも応援していたんです。弟と日本選手がパンチをして喜んでいましたが、祖父母の手前、おおっぴらには喜べませんでしたが。つまり、3世代を経て日本人の感覚になるわけです。日本人は純血主義のようなところがありますが、日本の国籍をとりたかったんです。私は、生まれた時から日本人の人よりも、もっと日本人になりたいと思っていました。この愛を証明したいと思っています。

パウエル氏:米国は成り立ちから移民の国です。さまざまな国から来たのにそれが最初は受け入れられなかったのに、世代が進むにつれみんな米国人になるんです。

孫社長:日本と周辺国の緊張が高まっていると思います。どう思いますか?

パウエル氏:中国の台頭、北朝鮮が何をするかわからないという状況はありますが、冷戦時代と比べれば良いと思います。米国は何かあれば日本の味方です。問題は北朝鮮です。今ぎりぎりのところに彼らはあると思います。核の問題もありますが、それをやってしまえばおしまいです。過剰に反応してはいけません。憲法改正の議論がありますが、まずそうしたことを検討することは重要です。日本は他の国集団的自衛権の恩恵を受けてきました。そうした中で日本はどうするのか考えるべきです。もちろん、最終的には日本人が決めることです。

孫社長:考えること自体が重要ということですね。次の話題ですが、パウエル将軍は深い経験をお持ちですよね、ベトナムで死にかけたこともありますよね。これまで一番難しい決断はなんでしょうか。

パウエル氏:戦争が絡んできたときです。外交や政治の力で解決できなかったときにそういうことがあります。私は戦争はしたくありません。しかし、軍事力を本当に使うときがくれば、そうするしかないんです。ちゃんと計画して戦闘の指令を出す必要があります。若者が戦うわけです。リーダーは座って、やるべきことはなかったか考えるのです。兵士が亡くなる情報も入ってきます。敵にも両親がいます。戦争がはじまったとき、負傷者屋死亡者の数が出てきます。もっとできることがあったんじゃないか、と考えます。戦争は常に予想できないことが起こります。クレイジーでないかぎり、戦争が好きな兵士はいません。

冷戦当時、2万8000の核兵器を監視していました。その核兵器のプランをみるほど、使うべきではないと思うようになりました。冷戦が終わったとき、もっと多くの話ができるようにしたかったんです。ロシアの核兵器の管理者とも話をしました。彼もまた、核兵器を知れば知るほど核兵器は使いたくないと思うようになったと言います。私は生きている限り、全ての核兵器を無くすとコミットしています。生きているうちは無理かもしれませんが。戦争と平和を決めるのは大統領です。平和と決めたらハッピーだし、戦争と選択すれば戦うのです。

※編集部注:ソフトバンクアカデミアのリーダーシップ論の速報です。

孫社長:私の尊敬する人がそういう人でよかったです。話題を変えましょう。リーダーとしてあなたが尊敬するリーダーは誰でしょうか。

パウエル氏:何度も聞かれたことありますが、特定の人の名前は言いません。4人の大統領に仕えましたが、何かいうと他の人がくもってしまいます。一番親しかったのはレーガン大統領です。

当時、日本がペブルビーチを買いまくっているという話が話題になりました。日本の景気がよかった時ですね。議会でも問題になり大統領にそれを伝えると、レーガン大統領は「米国がいい土地だと思ってくれてるんだね」と言いました日本が米国を買いあさっているのではなく、米国を投資先に思ってくれてるというのはいいことじゃないか、と言いました。これは思ってもみなかった反応です。どんなリーダーであれ、リーダーは常に目的意識、大義をもたねばなりません。

孫社長:16才で米国に行き、さまざまなことを学びました。今こそ米国に恩返しをする時だと思っています。恩返しとしてネットワークを提供し、教育の機会を与えたいと思っているんです。周辺国とも平和的にやっていきたいです。

パウエル氏:緊張関係はありますが、これは解決しますよ。中国で内戦が起きた場合、中国にさまざまな人が投資していますし、富を作っていくためには良好な通商関係が大事です。中国の歴史や文化を尊重すべきです。それぞれの国が富みを作っていくために、関係強化が必要です。米国は中国を敵と見なしてはいけません。

孫社長:パウエル将軍は相互に尊重する関係を重視しますよね。根底には愛がありますよね。

パウエル氏:それが最高のソリューションです。もちろんそうできないことだってあるわけですが、お互いに意見を聞いて妥協点はないかと探るべきです。米国だけでなく家族の間でもそうです。奴隷制度の解決の道筋がない場合もありましたが、その当時、白人の中にも投票権がない人がいました。黒人だけの差別ではありませんでした。白人自体が奴隷制度にあゆみよりがなく、200年の時間がかかりましたがそれでも歩み寄れました。時間がかかってもそれを実現できると思います。歩み寄りが実りました。

孫社長:企業の中で意見の対立があるでしょう。

パウエル氏:とにかく意見を聞くべきです。一番下の人にも意見を聞きます。上司だからといって意見を変えるべきではないと伝えます。地位関係なく意見してくれなければ、誤った判断を下してしまう可能性があるわけです。リーダーは全ての責任を負いますが、下の人意見を聞かなければなりません。

孫社長:あなたは下の人、現場の人をわすれません。

パウエル氏:まさにそれが私のルーツだからです。ブロンクスにいる当時の友達ともまだ関係を持っています。

孫社長:会社でトイレの掃除をしている高齢の女性が「おはよう」って言ってくれた時、母親を思い出しました。思わず握手してしまいました。