高い回収経費、環境破壊問題…「エコキャップ運動」の疑問をNPOに直撃!

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ユーザーから投稿された「キニナル」情報を検証すべく「はまれぽ」が体を張って調査!

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今回のテーマは…

<横浜のココがキニナル!>
「エコキャップ運動」がうさん臭いです。寄付額とは吊り合わない回収経費や、協会や寄付先の中抜きの問題もあります。状態の良い廃PPに対して、12.5〜20円/kgの買値は適切なのでしょうか?(ponさん)

■NPOを直撃!まだ始まって5年目

エコキャップ運動とは、ペットボトルのキャップをワクチンに換えるという運動。
捨てる物で子どもの命が救えるならと、大人も子どもも大切に集めたキャップを学校や諸施設にある回収ボックスに入れに行っている。

膨大に集まったキャップは、発展途上国のプラスチック資源として再利用でもされているのかなぁ…と漠然とそんなふうに思っていたが、回収ボックスから先の流れに筆者は考えが及んだことはなかった。

その運動自体に疑問を投げかけている今回のキニナル投稿。ネットでは批判的に書かれている情報を目にすることもある。

運動を進める「NPO法人エコキャップ推進協会」に、どのような仕組みで活動しているのか話を聞きに行った。

対応してくださったのは専務理事の永田近さん。調べたところ、永田さんは鉄鋼会社で労働組合に長年従事し、退職後に「NPO全国障害者福祉援護協会」を設立。「エコキャップ推進協会」は、NPO化して今年で5年目だ。

ペットボトルの回収が始まった時、キャップは“燃やすごみ”だった。横浜市でプラスチック製容器包装の回収が始まるか始まらないかの2005(平成17)年の春、神奈川の高校生の「ペットボトルはリサイクルされるのに、キャップを捨てるのはもったいない」という発想に、永田さんが参画して回収を始動。

障害者福祉のNPOで知り合ったという建設会社が「キャップを1kgあたり15円で買い取りますよ」と申し出た。焼却すればCO2を発生させるだけだが、建築資材にリサイクルすると原料になるという。

今、集められたキャップはこういった国内のリサイクル事業者に引き取られ、粉砕しプラスチック原料のペレットにした後、再資源化事業者に納入されているのだ。

キャップを集める運動はあっという間に広まり、売って貯まった膨大なお金をどうしよう?と思っているところへ、テレホンカードや書き損じのはがきでワクチンを購入している「NPO世界の子どもにワクチンを日本委員会(JCV)」を知り、15円/kg(正確には15.8円/kg)のうち10円を寄付することにした。

これが活動の経緯だ。残り5.8円/kgは純益となってエコキャップ推進協会自体の活動支援金に回される。

■ワクチン代の10倍かかる送料への批判

エコキャップ運動のためにキャップを集めている家庭では、通常どこかの施設の回収容器に入れに行くことが多いと思う。

キャップの回収容器、これは有償で運動の協賛者が買う。そして集まったキャップを送るのも自己負担だ。納入先(全国のリサイクル事業者)のラベルが貼ってある袋(約2400個・約6kgのキャップを収納・送料込み500円)を買う仕組みである。

協賛の企業や自治体・個人は全国で約65,000件。横浜市立小学校344校のうち254校が参加している。

行政でもプラスチック製容器包装として回収しているのに、別の物流でCO2を排出することが環境破壊になるという指摘もある。が、協会が全国に個別のトラックを走らせているわけではなく、低価格の送料で大手運送会社が協力をしているようだ。

また、リサイクルは全般的にCO2排出が増えるのではと聞くと、「再生ペレットの製造工程で出るCO2量は、石油原料から作るバージンペレットの4分の1というデータが5月末に発表されたんですよ」と業界新聞を見せてくれた。

「それでも、120円のワクチン代のために1,000円の送料がかかるのは事実。それならワクチン代1,000円を直接ユニセフや赤十字に納めればいいという批判はありますよ」。永田さんもそれは承知のようだ。

「でもそれは価値観の問題と思いますね」と永田さん。ワクチンがないが為に命を落とす子どものために、誰もが1,000円2,000円をポンと出せている現実はあるのか、ということだ。

ペットボトル生産数、年間250億本に比べ、エコキャップ運動で回収できる数は1割にもならない。
「捨てるのはもったいないから資源としてリサイクルしようというのが始まりで、ワクチン代を作るための活動ではない」と永田さんは強調する。

■お金を出してでも買いたい廃プラスチックとは

ところで、キニナル投稿にもあった買取り価格が安過ぎるという点。エコキャップ運動の側からすれば15.8円/kgという“売値”は安過ぎるのだろうか。

それには、2種の廃プラスチックがたどる真逆の道を知る必要がある。(日本容器包装リサイクル協会談)

(1) ペットボトル
回収し売ることで、自治体の収入になる。(平成23年度の価格は50円/kg)
単品なので資源価値が非常に高い。リサイクル事業者にとっては「お金を払ってでも買いたい」対象。

(2)プラスチック製容器包装
自治体の税金を使ってリサイクルされる。50円/kgの出費となる。

中間処理施設で混入異物の除去・選別を行なった後、リサイクル事業者へ。

エコキャップ運動を利用しなかった場合、ペットボトルのキャップは(2)で処理される。ところが、品質としては、大手自動車メーカーの車両バンパーに再利用されるほどクオリティが高いという。(2)で処理されてしまうところを、15.8円/kgを払ってでも入手できれば、リサイクル事業者にとっては非常におトクということだ。

永田さんも「リサイクル事業者が15.8円/kgで仕入れたあと、粉砕したチップやペレットにした物を100円/kgで売っているかもしれない。そこはわかりませんよ」と語る。

提携のリサイクル事業者だけに膨大な利益をもたらし過ぎではないか、その価格は“適正”と言えるのか、指摘されるところだろう。これに対し永田さんは「提携している事業者の数は把握しきれないほど多く、理事が参加を斡旋することはない」と述べる。

■キャップ売却費は100%ワクチン代に。しかし…

エコキャップ推進協会のHPでも公表されている、収支報告を概算で見てみよう。
平成22年9月〜平成23年8月、この一年間で収集したキャップは約21億個だ。
 
【収入】
計約1億1,000万円
内訳 売却収入約5,200万円(10円/kg)+寄付準備金からの繰入1,000万円(※1)+寄付金約31万円+活動支援金約3,000万円(5.8円/kg)+HPのバナー広告とロゴ使用料収入約1,200万円他

【支出】
事業費:計約6,700万円
内訳 ワクチン代1,800万円+震災義援金4,000万円(※2)+回収作業費約270万円(※3)+イベント費約290万円+寄付準備金約410万円他

管理費:計約4,000万円
内訳 役員報酬約430万円(※4)+ボランティア支払い約1,000万円(※5)+通信運搬・交通費約670万円+業務委託費約700万円(※6)+租税公費約540万円+賃借料約430万円他諸経費


※1 ワクチン代寄付が8月末ではなく2月のため、次期支払い分が繰り越される
※2 この年度は特別に東北4県への義援金があったが、通常はワクチン代金に充当
※3 特例として自費回収しているエリアも若干ある
※4 NPO法人は法律上、理事の三分の一までは役員報酬を得ても良い
※5 非営利目的の労働は有償でもボランティアと称する。本部に常時3〜5名勤務
※6 業務委託の内容は、版権利用の営業や経理
 

キャップ売却のほかに収入が多いことに驚くが、キャップ売却費の100%以上がワクチン寄付代に相当している(平成21年度以降。但し平成23年度を除く)。しかし、全収入からみると50%強だという指摘もある。

横浜市内の別のキャップリサイクルNPO「Reライフスタイル」や、実際にワクチンを購入するNPO「世界の子どもにワクチンを日本委員会(JCV)」の収支を見ても、全収入に対する寄付額の割合は同様で、約50%はいわゆる運営コストに充てられる。

一方、例えば「日本ユニセフ協会」「ベルマーク教育助成財団」では、運営コストは約20%にとどまっている。
 

廃プラスチックを巡る考え方は様々で、利害関係も複雑だ。ネットに書き込まれる誹謗に対し、永田さんは「書き直しても上書きされるので放っておく」というスタンスだ。

収入に対する寄付額の割合、送料との不均衡、一部リサイクル業者の利得など非難もある一方で、エコキャップ推進協会は、キャップの異物除去に障害者の雇用を確保するなど、資源・環境・福祉という活動理念を貫く姿勢だ。

■取材を終えて

キャップがリサイクルされるまでの道のりは、シンプルとは言えず経費もかなりかかっているのは事実だ。

日頃ダイレクトにユニセフ等に募金を行なうならその方がベターだが、税金をかけて焼却処分や再利用処理されるプラごみがワクチンや義援金に換わるなら、そのノウハウ自体は意味があるだろう。

※本記事は2012年7月の「はまれぽ」記事を再掲載したものです。

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