フランスは結婚後も職を持ち自立している女性は多い

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欧州から日本へ帰ると、いつも感じることがある。人々の会話や車内広告など、それが特に性差を強調する話題でなくても、例えば男性は仕事、女性は家事など、歴史的な男女のステレオタイプが無意識に色濃く反映されている。善し悪しの議論は別にして、そのような環境なので、日本で問題になるような職場での性差も、欧州は日本と比べてあまりないと思っていた。フランスもフェミニズムのきっかけを作った国であるし、現在は性別による社会での違いは日本ほどないのだろうと思っていた。

実際、世界経済フォーラム(WEF)が10月に発表した2013年度版の「ジェンダー・ギャップ指数」でも、1位からアイスランド、フィンランド、ノルウェーという順に、上位10ヵ国中7ヵ国を欧州が占める。ところがフランスは45位と、隣国のドイツ(14位)や英国(18位)、または米国(23位)と比べて一段低いのだ。これは職場環境にも現れているようだ。

仏調査機関LH2が、仏大手企業の管理職を主な対象に行った昨年12月の調べでは、女性の80%(男性は56%)が職場環境において、性差別的態度や決定に直面していると答えた。54%が女性ということで自身のキャリアのブレーキとなる場面に出くわしたとも回答している。81%(男性は59%)が「男性より劣る」という類いの性差別的な判断を聞いたとし、49%が性差別的なあだ名で呼ばれたことがあるとした。そして90%の女性が、もし男性ならもっと昇進しやすいだろうと考え、62%の男性がこの考えに同意している。フランスの職場で男女差を感じている人は多いらしい。

これに対し日本とフランスを比較すると、どうだろうか。世界経済フォーラムのジェンダー・ギャップ指数によると、日本は136ヵ国中105位で、経済協力開発機構(OECD)加盟国中、韓国(111位)に次いで低かった。また厚生労働省『男女雇用機会均等関係資料』によれば、日本の女性就業率は60.1%と、フランス59.9%より高いものの(2012年)、女性管理職の割合は日本10.6%に対し、フランスは38.7%である(2010年)。管理職の数値は欧州と日本の統一基準で作られたものではないため、そのままの比較が難しいが、大まかに考えてみても昇進の機会は、日本の場合フランスより限られているといえそうだ。

ちなみに内閣府男女共同参画局によれば、もし日本の女性労働力率がスウェーデン並になった場合、労働人口は19.1%、528万人増えるという。男女のあり方については様々な議論があり、労働力という点だけでそれを捉えると盲目的になることもあるかもしれない。ただし女性が望んだ時に、それをかなえられる選択肢や可能性が社会に用意されていることは良いことであり、その点で職場環境の差の解消は大切なことだと言えるだろう。
(加藤亨延)