一瞬、一瞬、フルパワー!

信じていた。それでも怖かった。しかし、侍は応えてくれた。ついに開幕を迎えた第3回ワールド・ベースボール・クラシック。世界3連覇に挑む我らが侍ジャパンは、苦しみながらもブラジル代表をくだして白星発進。野球の難しさ・怖さに慄く場面を乗り越え、日本の野球と侍ジャパンの強さを改めて証明してくれました。

国際大会では何が起きるかわかりません。ときに強豪も足元をすくわれます。そんな落とし穴を避けるために、人間ができることはただひとつ。自分の持てるチカラを出し尽くすよう集中すること。自分たちを「過信」せず。かと言って「不信」に陥るでもなく。普通に、真っ当に、自分のベストを尽くすことしか、見えない未来に立ち向かう方法はありません。

侍ジャパンはそんな普通のことを普通にやり切りました。ここまでの強化試合では思惑と違うことも多々ありました。主軸と期待した選手の不振もあり、想定したオーダーは破綻しました。ただ、好不調や運不運はどこにでもあるもの。想定にこだわっていては、未来の行方はどんどんズレていくばかりです。ズレた舵を元に戻すのは、一瞬一瞬ベストを尽くす姿勢。そんな戦いをしたのが、ブラジル戦での侍ジャパンだったと思います。

まず選手起用。あれほどこだわった4番・捕手・キャプテン阿部は先発から消えました。怪我で不振の阿部を過信することなく、2番手の相川への不信で揺れることもなく。結果的に打線は好調なヤツから順番に…という素直な構成となりました。長野・鳥谷・坂本・阿部という初期想定オーダーが丸ごと変わって大会を迎えたあたり、首脳陣が柔軟で理性的であることがうかがえます。

また、大エースとしての期待を背負った田中将大は2回23球で降板しました。ボールへの対応で苦しみ結果が出ない田中を過信することなく、後続への厚い信頼で早めの継投を決断したのです。田中マーさん降板のあと、強化試合で好調だった杉内・攝津・能見を惜しげもなく投入したのは、まさにベストを尽くす意志の現れ。球数による連投制限などを考えれば、好調の投手を余らせておくような采配もあり得たはず。ブラジルの打線を考えれば、別に誰が投げても何とかなるだろ的な甘い考えも浮かびそうなもの。しかし、継投にはまったく隙がありませんでした。

結局、「相手を舐め」「自分たちを過信する」心持ちこそが、国際試合で何かを起こす落とし穴。何かが起きる前に穴を塞ぐよう努め、後悔しない戦いを徹底すれば、落ちるべきでない穴には落ちないものです。負けたときは落とし穴のせいではなく「実力」ですから。侍ジャパンはそうした試合運びをし、穴は回避して、実力通り勝った…そう言えるのではないでしょうか。

ということで、「何か」を起こさず「実力通り」に勝ち切った侍ジャパンの初戦について、2日のテレビ朝日中継による「WBC1次ラウンド 日本VSブラジル戦」からチェックしていきましょう。



◆ブラジルを少しでも舐めていたら危なかった!侍に隙ナシ!


試合にのぞむ侍ジャパンの控室。そこには「18時35分にはベンチ入りすること!」という子ども向けみたいな注意書きが張られていました。しかし、そこで「オトナだし、言わなくても来るだろ」と思っていれば、うっかり来ないヤツがいるかもしれません。油断・過信・慢心は禁物です。19時開始の試合の30分も前に集合するあたり、侍に隙はありません。

↓山本監督は特に心に響かない訓話で侍を送り出す!

山本:「おはよう!」

山本:「いよいよ今日から、一緒にやってきて、いつも言っていることは自分のプレーを、普段のプレーをやってほしい。そして、気持ちをひとつにして今日から戦っていこうじゃないか」

(阿部、半笑いで話を聞く)

山本:「えー、日本中の声援があるし」

(田中、半笑いで話を聞く)

山本:「そしてNPB、裏方さん、みんなが助けてくれている。それを背負って、みんな、グラウンドで発散してくれ」

山本:「アメリカへ行こう!行こう!うっし」

選手、誰ひとり「おー」とか言わないのなwwwwwwwwww

ていうか、腹の底で笑いながら聞くなwwwwwwwwwwww

確かに「発散してくれ!」とかストレス解消話みたいだしwww

慰安旅行でアメリカに行く日の社内朝礼みたいだけれどもwww


王貞治氏の始球式。ヤフオク!ドームという日本きっての野球どころでの緒戦。球場にはそれぞれのチームのユニフォームをまとった大観衆が集いました。初戦の相手ブラジルは力量的には日本より格下。ヤクルトに所属する・所属した選手など、NPBでの力量が数字でわかる相手もいます。「楽勝」という予想も十分できる相手でした。しかし最終的には、もし「楽勝」などという奢りがあれば足元をすくわれていたであろう、大接戦となったのです…。

●1回表
1番坂本はファーストストライクを叩き内野ポップフライ。シーズンなら早打ち凡打を責めるところですが、国際試合ではこれが常道。ストライクゾーンやスイングの判定もNPBとは異なります。打てない球には手を出さない、ただし、いたずらに待っていても打てやしない。「好球必打」の姿勢が重要。まずは積極性を見せました!

●1回裏(ブラジル先制0-1)
先発・田中は、先頭のオルランドにエラー含みの内野安打を許し、いきなり無死二塁のピンチ。さらにライトへの犠牲フライで一死三塁。ここで3番のレジナットにタイムリーを打たれ、あっという間に1失点。日本のやりたい攻撃を逆にやられる意趣返しとなりました。「田中VS松本」「NEXT佐藤」などの表示もあり、どっちがヤクルトでどっちが侍なんだと、客席にも動揺が広がります。

●2回表
ブラジル代表先発のフェルナンデスはヤクルト所属の選手。5年目で通算1勝。昨季年俸推定600万円。ほぼ真っ直ぐしかない打ちやすそうな投手を相手に苦しむ侍打線。ここで稲葉・長野・松田が凡退するさまには、「『ワンピース』の懸賞金で強さを表す仕組みもアテになんないな…」と思わざるを得ません。しかしまぁ、試合はまだ2回、これからです。そんな余裕からか、相川VSフェルナンデスの打席では「ヤクルトの紅白戦中継ならこんなに真剣に見ないなwww」などと思う瞬間も。

●2回裏
2本のヒットを許した田中マーさん。初回につづき併殺でピンチを逃れるも、ブラジル打線はマーさんのストレートをしっかりとらえており、ヒヤリとすることの連続。

●3回表(日本1-1の同点に)
安打→犠打→死球を挟んで→適時打と美しい攻撃を見せた侍。糸井までの上位打線はいい仕上がりで大会に入ってきました。長打はなくてもしっかりつながる攻撃で、いい感じの大会初得点をマーク。とにかく早く追いつくことを意識し、この早い回からでも送りバントをしていくあたりは、一発勝負の勝ち方を知っています。とにかくこういう試合は「負けている状態」を早く脱すること。たとえ1点差でも、回が進めば焦りが生まれますから。

↓ベンチ内での松田の座る位置とカメラ位置の関係で、松田がウザイ!


カメラか松田かどっちかを動かせwwww

毎度これやられたら緊張感が緩むわwww


●3回裏(マーさん降板、杉内投入)
マーさんはわずか23球で降板させ、強化試合で出色のデキだった杉内を2番手に投入。容赦ないつなぎで、侍はつけ入る隙を最小限で修正していきます。ちなみに、ブラジルの2番打者を「プリン」だと思っていた僕は、この回「ブリンか」と気づき、つけ入る隙を最小限にとどめました。

↓ちなみに、合間に流れるミズノのCMではどことなく隙だらけの侍ジャパン
http://www.mizunoballpark.com/samuraijapan/cm/index.html

何かが違う感wwwwwwwww

阿部ちゃんは「ショートコント野球」にしか見えないwww


●4回表(日本勝ち越し2-1)
一死から、四球→ヒットエンドラン→犠飛、とまたもいい形での得点を挙げた侍ジャパン。負けているときは送りバントも繰り出しとにかく同点を狙う。同点以上ならエンドランや盗塁でガンガン仕掛ける。侍の攻めには積極性と慎重さがバランスよく共存しています。ナイス得点、ナイス逆転です。

●4回裏(ブラジル追いつく2-2)
初回タイムリーのレジナットが先頭打者でツーベース。「む、思ったよりいいバッターだな」「こんなヤツいたんか」「猛虎魂を感じる」とどよめく日本サイド。無死二塁からの攻撃ということもあり、ブラジルは1点を奪取。再び試合は振り出しに。

●5回表(ビックリするほど特にナシ)

●5回裏(ブラジル勝ち越し2-3)
強化試合の内容では、日本投手陣で一番イイと踏んでいた攝津が3番手でマウンドへ。本気も本気の継投に、侍のこの一戦への油断のなさを感じます。しかし、ブラジルもさるもの。一死からセーフティバント→ディレイドスチールと仕掛けて、走者2塁へ。これには「攝津のクイックは早々盗めない」と豪語した解説の工藤さんも、ちょっとポッとなります。そしてここでまたもレジナットが登場し、またもタイムリー。沢村賞から3人連続でタイムリーを打つ巧打ぶりには、猛虎も噛みつかんばかりです。

●6回
特に動きがなかった6回の攻防。しかし、イニング間には桑田真澄さんがピアノ演奏を披露した日本中古自動車販売協会連合会のCMが。1975年から2013年までを描きながら、デートしたり、産気づいた妻を病院に送ったり、子どもを送り迎えしたりと、人生に寄りそう中古車を表現したCM内容に僕も感動。「2011年にカンヌ国際広告祭で金賞を受賞した東芝のLED電球のCMソックリだね…」「たまには新車買えよ…」「桑田のピアノ、普通だったよ…」と涙があふれます。

↓元ネタのほうだけ紹介しておきます!


こういうヤツのピアノを弾いてます!

そして、たぶん桑田さんは車買うときは新車です!


●7回
ブラジルは3番手に、ローテーションを担うと見られた仲尾次を投入。ブラジルは日本とキューバを天秤にかけ、「今日の日本戦で全力」を選んだ模様。ドラフト候補にも挙がる仲尾次の投球ぶりに、「あれ!?」「やべ!?」「残り2イニングしかないよ!?」と焦る観衆。下手に涌井とかを投入して余計に1〜2点やっていれば、危ないところでした。

●8回表
左の仲尾次を打ち崩すならこのイニング。先頭には日本最高の右打者・内川。内川はWBCのストライクゾーンに首を傾げつつも、貫録のクリーンヒットで口火を切ると、「サインが理解できないのでノーサイン」と噂される糸井がまさかの送りバント。糸井にサインを出してバントをさせるのと、犬に買い物をさせるのは同じくらいの難易度だと思いますが、それを見事にやってのけました。さすが侍です。

そしてこの日のハイライト。ここで指名された代打はベテラン井端。イナバからイバタへのスイッチ。強化試合を通じて好不調を見極めたことが、この重要な場面で「とっておきの井端」を送り出す、自信の采配につながりました。そして井端は見事に起用に応え…

↓井端、華麗な右打ちで同点タイムリー!


やっぱり井端だ!100人乗っても大丈夫!

どうでもいいけどベンチの松田がウザイwwwwwwwwww


↓その後、内野安打と四球でチャンスを広げ、つづく阿部・松田の打棒で一気に逆転!


長野が内野安打、鳥谷が制球定まらずに四球!

そして、つづく阿部の打球も、一旦はセカンドがグラブにおさめてから落としたもの!

不振の3人をアウトにできそうでできなかったのが痛かったな!


●8回裏〜試合終了
日本はアイドントライク能見、アンダースロー牧田と好調な投手を次々投入。まったく隙のない継投で逃げ切り勝利。苦しみながらも接戦をモノにしました。ちょっとでも油断があれば、ちょっとでも余計な得点を与えていれば負けていたかもしれない辛勝ですが、逆にそれが侍たちの勝負に臨むイイ姿勢を示してくれました。格下相手だからと言って決して舐めない。勝利を全力でつかみにいく。ブラジル戦の気持ちがあれば、この先の戦いもきっとやってくれるはず。2次ラウンドのチケットを持っている僕も、ホッと胸を撫で下ろしました。


次々に投じられる選手と、どれだけの実績があっても調子次第でササッと引っ込められる選手。今大会の侍に聖域はありませんでした。阿部や田中将大でさえも、です。前回大会のイチローのようにアンタッチャブルなレジェンドはいないのです。すべての選手が勝利のための駒。だからこそ、すべての選手がいつでも犠牲になる準備があり、いつでも英雄となる準備がある。まさに28人全員で勝利をつかみにいく一団。侍ジャパンはしっかりした「チーム」となっていました。

27人が死んでも最後の1人が敵の大将を討ち取ればよい。まさに野球のルールそのもののように、28人が一団となったこのチームの3連覇を阻むには、世界の強豪も苦心することでしょう。2次ラウンドのチケットを侍全勝前提で3試合も買ってしまっている僕も、侍の強さに胸を本当に心からホッと撫で下ろしましたよ…。本当に…。ていうか、友だちもいないのに、盛り上がるの前提で4枚ずつ買っちゃってるから…。「台湾VSキューバ戦」じゃ4枚もさばけませんからね…。


よーしこの調子で頼むぞ侍!マエケンと涌井を出さなければ優勝だ!