北海道日本ハムファイターズ栗山英樹監督が、ドラフト1位指名の大谷翔平恋愛を勧めた。
 「やんちゃも好きだけど、大谷の場合はその対極だからね。本当に純粋培養で育った真っすぐな野球少年。高卒ルーキーだし、誘惑の多い場所はダメだけど、いい相談相手となってくれる彼女なら全然構わない」と述べた。

 米国人ジャーナリストのロバート・ホワイティング氏は、1977年発刊の「菊とバット」で、わが国を、「高度な産業国家でありながら、儒教と農耕民族の伝統に基づく家族主義を捨てていない」と紹介している。

 わが国では長らく終身雇用制が敷かれており、社員は企業への忠誠心の代償として、定年退職するまで雇用が約束されていた。
 また、上司と部下、社員同士が過ごす時間は、実際の家族と過ごす時間以上に長く、その中で上司は父親母親、部下は息子のような役割が求められていた。その結果、上司と部下の関係は、プライベートにまで及ぶことも少なくなかった。

 最近では折からの不況で終身雇用制も崩壊。上司と部下の関係も変わってきたが、わが国では依然として欧米諸外国に比べ社員の転職率が低く、労使競争が延々と続くことは無い。

 このような関係は、プロ野球界にも見られる。ホワイティング氏は、チームは「一つの幸せな家族のように機能すること」、監督は「厳格でどこか超然としたところがあるが、いつも選手への気配りを忘れない父親であること」を理想としている。

 実際、球界では古くから、監督は選手の父親的存在だった。1946年から実に23年間に渡り南海ホークス(現在の福岡ソフトバンクホークス)の監督を勤めた故鶴岡一人氏は、1965年に一度は勇退を表明。その直後にサンケイスワローズ(東京ヤクルトスワローズ)と東京オリオンズ(千葉ロッテマリーンズ)から監督就任を打診されたが、「ホークスを敵に回して戦うことはできない」と断っている。

 また、大洋ホエールズ(横浜DeNAベイスターズ)などで指揮を執った故別当薫氏には、独身選手の婚約者の両親を自ら説得したという逸話が残っている。

 このような監督と選手の関係は、今も残っている。監督は父親のように、選手の人間としての成長を、ときに優しく、ときに厳しく促している。選手の結婚を促すなど、私生活に立ち入ることもある。今回の栗山監督の恋愛の勧めもそうだ。


 そんなわが国の家族主義は、ときに批判されることもあるが、この家族主義がわが国の経済成長を促したことも事実だ。
 35歳にもなると、上司からも結婚のことを言われなくなり、最近になって家族主義の温かさが懐かしくなってきた。