日本人材ニュースでは、人材市場と企業の採用動向を把握するため、主要人材会社に対し、人材紹介事業の四半期業績に関する定期DI調査を実施している。今回は4-6月期の調査となった。回答を得た41社の集計結果を報告する。

 人材紹介会社の2012年4-6月期の実績DI(対12年1-3月期実績)は、全体的な売上実績DIで68.4となり、順調な売上の上昇が続いている。しかし、前四半期調査の12年1-3月期の実績はリーマン・ショック後の最高値である76.3を記録していたが、今回のDIは7.9ポイントのマイナスとなっており、欧州金融危機などを背景に売上実績DIは一転して減速となった。

 業界別にDIを見ると、減速の要因となった業界は「素材・エネルギー」のマイナス11.7ポイント(1-3月期DI61.7→4-6月期DI50.0)、次いで「機械」のマイナス7.8ポイント(同61.5→同53.7)と続く。

 それ以外にも、「IT・通信・インターネット」がマイナス6.6ポイント(1-3月期DI73.3→4-6月期DI66.7)、「電気・電子・半導体」がマイナス6.2ポイント(同57.1→同50.9)、「自動車」がマイナス6.1ポイント(同58.3→同52.2)、「メディカル・薬品」がマイナス5.8ポイント(同71.4→同65.6)となっておりマイナス幅が大きかった。

 一方、「マスコミ・広告」はDIが5.3ポイント上昇(1-3月期52.3→4-6月期57.6)。前期とほぼ変わらず高水準で堅調に推移したのは、「流通・販売」(4-6月期DI69.6)、「建設・設備」(同65.3)、「コンサルティング」(同65.0)となっている。

 人材紹介大手2社のコメントを見ると、「自動車サプライヤー求人は引き続き堅調。それに加え、特定技術者派遣業からの求人も旺盛。一方で、半導体、家電、化学、医薬等の分野の求人は動きが少ない。これまで、全体を引っ張っていたインターネット分野はコンプガチャの問題の影響が6月あたりから見られ、求人意欲がやや弱まりつつある」(リクルートエージェント)、「引き続き、ITネット系のクライアントの採用熱は強いものの、一時よりは落ち着いてきている。また、メディカルは経験者採用は需要があるものの、未経験MRの採用などは当面厳しい見通し。その他領域では、海外の景気悪化の影響などはさほど受けず、当面は堅調に推移すると見込まれる」(インテリジェンス)としており、インターネットや医薬分野の停滞感を指摘している。

 しかし、特化型の人材紹介会社では「エネルギー関連、素材関連での求人が増えている」(キャリア・ディベロプメント・アソシエイツ)、「半導体は採りあい、電機、エネルギー関連は活発」(テクノブレーン)などのコメントが見られ、減速が著しい業界にあっても難しい求人案件が引き続き集中している状況となっている。

 一方、建設・土木に強い会社では、「東北の復興事業関連で建築・土木が堅調」(クリエイト・インターナショナル)、「建築・土木・設備業界は復興需要もあり技術者の求人が増加している」(ヒューマンリソシア)、「建設関連の設計技術者および管理者(の求人)が急増している」(アソート)という傾向が出てきており、今後、震災復興による人材需要の拡大が見込まれる状況になりつつある。

 総括すると、4-6月期は、これまで牽引してきた業界の求人意欲に弱まりが見られたことで1-3月期に比べて全体的に減速した。しかし、7-9月期の見通しはDI72.1で、引き続き70以上の高い水準を維持していることから明るいものとなっている。

[人材採用・育成の人事専門誌「日本人材ニュースHRN」Vol.149(2012年7月20日発行)より転載] ※記事の内容は取材時点のものです。

リーマン・ショックから3年 人材業界はどう変わったか〜「グローバル」「専門性」「マスから個」の採用ニーズに応えるには
新成長を目指す人材戦略〜変質する人材採用のルール
人材採用の専門誌が評価する「人材コンサルティング会社」

日本人材ニュースHRN」は人材採用・人材育成の人事専門誌です。