総合演出を務める池谷直樹とバイオリニストのAYASA/(C)SAMURAI製作委員会

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圧巻の演奏と、迫力の大技が紡ぎ出す新しいミュージカル「ROYエンターテイメントPresents サムライ・ロック・オーケストラ」をご存知だろうか。「マッスルミュージカル」において10年間で1500公演以上に出演した池谷直樹と、人気音楽プロデューサーのD・A・Iがタッグを組んで生み出した新ジャンルのミュージカルだ。今年の3月と5月に3回行われたプレ公演では、約3000人を動員し早くも話題沸騰。この夏からは8月28日(火)の神奈川県民ホールを皮切りに、「〜創世記〜ファーストセッション」と銘打った全7公演の旗揚げ本公演を行う。総合演出を務める池谷に、立ち上げのきっかけからミュージカルの見どころ、次年度のアジアツアーの展望まで、この夏話題の同舞台について聞いた。

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――約10年間人気を博した「マッスルミュージカル」が昨年終了し、すぐに「サムライ・ロック・オーケストラ」(以降SRO)の準備に取り掛かったと聞きました。SRO立ち上げの経緯を教えてください。

昨年3月の東日本大震災の影響もありマッスルミュージカルが終了し、僕らパフォーマーがパフォーマンスをする場所がなくなってしまったんです。それなら、新たにパフォーマンスする場所を作ろう、と。8月ぐらい構想が出て、本格的に動いたのは9月、10月。僕は前々からパフォーマンスだけじゃなく、それ以上進化したものをやるには音楽性が必要だと思っていたので、生の演奏とアクロバットを組み合わせた「サムライ・ロック・オーケストラ」を立ち上げたんです。

――今回はパフォーマーとしてだけでなく、総合演出という立場でパフォーマーたちを率いて全体をプロデュースする立場ですね。

「マッスルミュージカル」でも、いろいろな演目を作って演出をやってきたので、総合演出を務める自信はありました。メンバーのみんなも、自分を慕って参加してくれるという自負もあったので。声をかけた10人以上がついて来てくれたし、スタッフも「こういうことをやりたい」と伝えたら「やろうよ」って言ってくれました。特殊な舞台なので人脈やこれまでのノウハウがないとできないものなんですよ。

――アクロバットに加えて、今回はバイオリンをはじめとする生演奏との融合が一番の特徴だと思います。音楽に関しての演出や調整はとても大変だったそうですが。

すごくプレッシャーはありました。全体を作ることはもちろん、音楽を生にすることがすごく冒険だった。これまでもセリフのない舞台をやってきて、音楽がどれだけ大事なのかは分かっていました。僕たちのパフォーマンスの演技は、音楽の長さやカウントで作られていくものなので。D・A・Iからまず今回の舞台用に30曲ぐらいもらって、僕がどの演目に合うのか、トランポリンならこういう音楽、ジャグリングなら、バトントワリングならと一個一個確認していって。

――演目の細かい部分に関しては、それぞれパフォーマーたちに任せるやり方だったとか。

例えば、「バトントワリングはバイオリンの音色とユニゾンでパフォーマンス」するといった大枠は僕が決める。中の構成に関しては本人に任せる。なぜなら、僕はバトントワリングのプロじゃないから。パフォーマーが考えた構成を見て、もっとこうしたい方がいい、と一つ一つ伝える役割ですね。後はパフォーマンスと音楽の刷り合わせの作業を僕が音楽家のD・A・Iとやりました。僕もパフォーマーなので、みんなの気持ちが分かるし、みんながこう動きたいというのも分かる。例えば、逆立ちひとつにしても、僕は逆立ちができるのでこれだけの小節じゃ音楽が短いとか分かるので、みんなも信頼してくれていましたね。

――約97分の中に全27演目。矢継ぎ早にパフォーマンスが繰り出され、息もつけないほど圧倒されるステージですね。もちろんこれまでの「マッスルミュージカル」を見たことがある人もない人も楽しめる舞台だと思いますが、見どころを教えてください。

全く次元が違うものなので、比較せずにひとつのエンターテインメントとして観てもらえたらうれしいですね。比較してももちろんSROの方が断然面白いですよ(笑)。演目はどれも個性的なものばかりですが、全体で演じる「フラッグ」は特に観てほしいですね。旗を全員で合わせる演目ですが、相当練習しましたよ。経験者が元々一人しかいなかったので大変でしたけど。あとは、バイオリン、バトントワリングの「ハスラー」という演目。バイオリンのAYASAが動きながらバトントワリングとコラボしているので注目です。僕自身はこれまでの跳び箱の替わりに2m50cmの高さの太鼓を飛びます。SROは、0歳からの未就学児も観ることができます。子供が楽しめる楽しさや、大人が楽しめるすごさがあるので期待していてください。

――プレ公演を経て、年内7公演の旗揚げ本公演。来年はアジアツアーと盛り上がりそうな気配ですね。「言葉がない舞台」ということで、万国共通、海外でも注目を集めそうですが、海外公演を見越した展望は初めからあったのですか?

基本的に、日本の舞台って海外のものを持ってきて日本人が演じているものが多いじゃないですか。そうじゃなくてSROは僕たちが日本で作ったものを海外に持って行けるもの。来年はアジアを中心に海外公演も行う予定です。マレーシア、中国、韓国の3か国、5カ所でのアジアツアーを計画しています。「サムライ・ロック・オーケストラ」という名前も海外に持っていくことを視野に入れての名前ですしね。刀やちょんまげのサムライではなく、サムライスピリッツのサムライ。日本から海外に発信していきたいですね。

――最後に読者にメッセージをお願いします。

東日本大震災のあと、4月に僕も炊き出しに行ったんですね。その後、5、6月になると、物資は足りて、今度は人が笑ったりする“人命の物資”がいると。僕はパフォーマーなので、一人の演者としてパフォーマンスを見せることによって元気になってもらったり、そのときだけは楽しさでつらいことを忘れてもらったり。パフォーマンスって普通の生活の中では必要のないものなんですよ。でも、見ていただくことで、頑張ろうって思ってもらったり、悩んでいたことがちっぽけに思えたり。見てもらった人の糧になればいいかなって思うんです。それがパフォーマンスをやっている理由だと思うので。パフォーマーの人はみんなそう思ってるんですよ。僕らが代弁しているだけで。僕たちはこれからもパフォーマンスをしていきたいし、するからにはいろいろな方にぜひ見てほしいですね。