「またこんな事やってるのか、こいつらは」

 最近日本球界を騒がせている、巨人のアグリーメント違反に関する、俺自身の率直な感想だ。この件で問題となっているのは、過去のドラ1選手に対して支払われた契約金が、規則により定められた1億5000万円という上限を、大幅に上回っていたこと。高橋由伸、野間口貴彦、主将の阿部慎之助の3人が槍玉に挙げられていたと記憶しているが、いずれも7億とか10億とか、とにかく凄まじい額だったと聞いている。

 また同じ巨人絡みの事件では、コーチ人事を巡って渡辺恒雄名誉会長と対立し、球団を追われた清武英利前代表が、自身の著書の中でアマ選手の契約情報を暴露し、球界関係者から非難を浴びたということも起きている。元々古くから、プロ野球における選手契約に関しては、不透明な部分も多かったとはいえ、こうした問題が一度にいくつも発覚するのは、やはり異常と言わざるを得ない。

 もっとも、このエントリにおいては、これらの問題そのものの是非について云々するつもりはない。特にアグリーメント違反の件に関しては、既に言及しているブログが他にいくらでもあるはずだ。この件については、しっかりと詳しい事情を把握し切っているわけではない俺が、今更それについてあれこれ言うのも、おかしな話だろう。

 むしろ俺が問いたいのは、いつまでもこうした騒動が無くなる気配のない、現在のNPBのあり方だ。巨人がこの手の問題行動を起こすのは、何も今回が最初じゃない。2004年の近鉄・オリックスの合併騒動(あれは、今でも日本球界にとっての黒歴史だと、個人的には感じている)の際の、「たかが選手が」発言。あるいは、昨年の東日本大震災直後に起きた、開幕戦の実施時期の問題。昨年の日本シリーズ中に、空気を読まずに清武問題を引き起こしたのだってそうだ。この点に関しては、あえて全国の巨人ファンに対してケンカを売らせてもらう。こうしたゴタゴタを、これまでにも複数回引き起こしている巨人は、日本球界の問題児だと言われても仕方ない。「何が紳士だ」と悪態をつきたいくらいだ。

 にもかかわらず、その暴走ぶりを他球団やリーグ機構が、積極的に止めようとする姿があまり見られないのは、やっぱりおかしいと思う。いや、実際には周りの人間たちも、何とか巨人の行動を食い止めようとしているのかもしれないけど、少なくとも傍目から見ている限り、そうした姿は俺たちの目には見えてこない。相手が「球界の盟主」だからという変な遠慮があるのかもしれないけど、例え誰であろうとやっちゃいけないことはやっちゃいけないし、止めなきゃいけないものは是が非でも止めなきゃいけないんだよ。

 俺が危惧しているのは、こうした騒動が起きるたびに、プロ野球に対するファンの視線がどんどん冷たくなり、やがて離れていってしまうという事態だ。かつてのように、娯楽といえば野球と相撲とプロレスしかないような時代なら、多少問題が起きたとしてもファンを繋ぎとめることは出来ただろう(というより、ファンの方が繋がらざるを得ない)。でも、今はもうそんな時代じゃない。サッカーもバスケも、映画も遊園地もゲーセンも何でもある。同じ野球でも、BSやネット中継で簡単にMLBの試合が見られる今、NPBは日本の娯楽における大正義では、最早ありはしないんだ。

 まして、今は次代を担う子供たちが、野球に触れる機会が少なくなってきている。地上波での中継の数も、野球が出来る公園の数も減っているんだ。そういう中で、いつまでもこんなくだらないことばかりやってたら、NPBは近い将来、ファンの心を掴めなくなって、間違いなく潰れるよ。いや、既に俺なんかは、NPBの在り方は完全に見限っている。「もうこんな身内のもめごとばかり起こしてる組織にはうんざりだ。他のものに飛びつこう」と感じている元NPBファンは、俺以外にもきっと一定数いるはずだと思うよ。非常に残念なことだけどね。