『冷蔵庫探偵』1巻 原作:遠藤彩見 漫画:佐藤いづみ
1巻の表紙はレイコさん。最新2巻では高木刑事が表紙になってそれぞれ決め台詞を決めてくれています

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「分かるのよ、冷蔵庫を見ればね」

どんなご家庭にもあるであろう家電。それが冷蔵庫です。冷蔵庫ってよくよく考えてみると各家庭で結構中身が違ったりしますよね。例えばうちは、醤油と日本酒が異様に多いです。異様っていうのもあれなんですが、ほんの60本か70本ぐらいは醤油と日本酒が入っていたりしますね。

そんなお話はさておき。今回紹介する『冷蔵庫探偵』は各家庭にある冷蔵庫の中を見て個人のプロファイリングをし、本人が表に出していない素の部分を当てて、難事件を解決してしまう。そんな主人公が出てくるお話なのです。

主人公のレイコさんはパーティー会場などに出張して料理を提供するケータリングをやっています。レイコさんはケータリングのついでに、その家庭の冷蔵庫を見る趣味を持っていました。そんなどこにでもいる(?)人だったのが、ある事件に巻き込まれたときから人生が一変するのでした。

たまたまケータリングに行った家で奥さんがいなくなるという事件が発生。そこでレイコさんは冷蔵庫を見て見事にその家庭の各人のプロファイリングを行い、事件を解決するのです。そしてたまたまその場に居合わせ、鮮やかな手並みに感服した高木刑事はレイコさんに向かってこう言うのです。「あんた”冷蔵庫探偵”になれば?」と。

そこからレイコさんと高木刑事によるでこぼこコンビによる(主に事件を解決するのは冷蔵庫探偵たるレイコさんですが)冷蔵庫探偵の活躍が始まるのです。

ちなみに高木刑事。先輩刑事から「おまえはものを見る目が無いな。パッと見でわかったような気になっているだけだ。それじゃ刑事失格だな」とお説教をされてから、観察力を身につけたいと思っていたのでした。そんなときに目の当たりにしたレイコさんの眼力を見て、もうこれは弟子入りするしかない! と、冷蔵庫探偵のアシスタントとして(公務員だからバイト禁止ですけど)活動するようになるのでした。

というわけで、この漫画は料理漫画&ミステリーというジャンルになります。ただ、ミステリーと言っても基本的には殺人などの血なまぐさい事件を扱っているわけではありません。高木刑事という刑事が出てくるので、どうしてもそっち方面の事件を担当するように思いがちですがそうではないのです。冷蔵庫を中心とした生活空間におけるすれ違いとか思い違いによって出てしまう事件を解決していくのですね。

ちなみに冷蔵庫の何を見てどう解決するのか。公式ページから立ち読みできる第一話から簡単に紹介しますと……

辛党の彼の冷蔵庫にスイーツが。そして奥に作った料理が追いやられている
→新しい女の影が!!

調味料を見ると、旦那さんは辛党で奥さんが甘党。でも、旦那さん用の辛み調味料が冷蔵庫の奥に行きがちだし、賞味期限も切れそう
→旦那さんはあまり奥さんの料理を食べていない、奥さんを大事にしていると言うのは口だけでは?

と、そんな感じに冷蔵庫の調味料の配置や冷蔵庫に貼られているチラシ、中に入っている食材や残ったご飯などを見るだけで浮気をしているかとか、家庭内での不和とかが、手に取るようにわかられてしまうのです。もちろんその過程で出てくる食の小ネタなんかも見逃せないところですね。

そしてレイコさんが犯人に事件解決の説明をしているときなどに「な、何を根拠にそんなことを言っているんだ!」と言われると飛び出すのが、冒頭でも紹介した名台詞「分かるのよ。冷蔵庫を見ればね」というわけなのです。まさにその眼力たるや千里眼ですね。

ある意味本棚の中身よりもその家庭の事情が浮き彫りになってしまう冷蔵庫の中身に着目した本作。最新の2巻では高木刑事を狙う(?)後輩警察官の森さんが登場し、三角関係……にはあまりなっていないのですが、恋愛要素もちょっとずつ入ってきたりして、ますます人間関係が深まっていて目が離せません。

ちなみに我が家の冷蔵庫を見たら(見なくてもわかる気がしますが)レイコさんはきっとこう言うと思います。
「醤油が……常軌を逸したほど好きなようね……分かるのよ。冷蔵庫を見ればね」
(杉村 啓)