『プロ野球[外国人選手]大事典』野球小僧remix/白夜書房
「助っ人」の軌跡から見るもう一つのプロ野球史を、時代、チーム、ドラマや事件、記録、スカウティングと、あらゆる角度から光を当てています。与那嶺要、スタンカ、バッキー、シピン、バース、クロマティ、デストラーデ、ローズ、ラミレス……。あなたの「My Best 助っ人」は誰でしょうか?

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学校から帰ったら「燃えろ!!プロ野球」
雪国育ちだったので、今ぐらいの季節になると野球小僧でもなかなか外で草野球をすることもできず、放課後は友達の家に集まって野球ゲームに興じていました。「ファミスタ」も大好きだったけど、当時私がハマったのはなんと言っても「燃えプロ」。バントでホームランになってしまうブーマーやホーナー、クロマティを反転させたグラフィックがなんか可笑しい西武ブコビッチ。突っ込みどころだらけの問題ゲームだったのは間違いないのですが、なんやかんや言ってもあんなにワイワイ言いながら楽しんだ野球ゲームも他にありません。何より当時パ・リーグのチーム&選手を全て網羅してくれるゲームはほかになく、「ファミスタ」では登場しない巨人のサンチェや阪急のアニマルなんかの渋い選手を操作できるのが野球オタクの少年にはたまらなく嬉しかったのを思い出します。

いやいや、「燃えプロ」の話がしたいんじゃないんです。私が少年だった80年代、プロ野球には魅力的な外国人選手が多かった、という話がしたいのです。派手なパフォーマンスに個性的なバッティングフォーム。実際のプレーだけでなく、ゲームにおいてすら個性を発揮してくれたたくさんの外国人選手たち。「燃えプロ」は当時としては画期的なほどそんな選手の特徴を再現してくれていて、それがまた野球小僧の心をくすぐってくれました。もちろん、巨人のラミレスをはじめ昨今の外国籍選手だって魅力的だし、きっと私より上の年代の方なら、アルトマンやシピンも知らないでなに語ってんだ?って思われるかもしれませんね。
プロ野球に彩りを与え、発展させてくれたそんな外国人選手が2011年現在で987人もの数にのぼることをご存知でしょうか。つまり来年には通算1,000人の大台を突破しようとしているのです。日本シリーズも終わり長く寂しいストーブリーグ、今年は歴代の外国人選手を思いだしながら、来年やって来るであろう1,000人目の助っ人外国人選手を待つのはいかがでしょうか。そこでストーブリーグのお供にオススメしたいのが白夜書房から出版されている『プロ野球[外国人選手]大事典』です。
この本、ライトな野球ファンだと持て余すほどの情報量ですが、真の野球ファンならまさに必携の一冊。外国人選手の成績、歴史、特徴、性格などが全5章に分けて多角的に分析されています。

<第1章:時代>は歴代の主な外国人選手の選手名鑑。個々の選手のプロフィールや成績を懐かしむのもいいのですが、注目すべきは当時の時代背景を交えながらプロ野球界そのものについても紹介・解説してくれている点です。「人気のセ、実力のパ」という構図が生まれた背景には“お金がなかったから外国人選手に頼るしかなかったパ・リーグ”という事情があったことがわかります。高額な契約金や年俸を払わないと大物外国人選手を獲得できない昨今の状況とは異なる歴史があったことがわかるとともに、外国人選手によって成長を遂げたパの野球、という考察にも納得です。

「歴史」という縦軸で外国人選手を振り返る第1章に対し、<第2章:チーム>では「12球団別の補強遍歴」という横軸で外国人選手を考察します。純国産で戦ったV9の影響で外国人選手の獲得・活用に遅れをとった巨人、日本人選手だけでなく外国人選手でも“育成”にこだわる広島、“ハズレ”を引きまくったことで今の日本人中心のチーム構成につながったホークス、マニエル→ブライアント→ローズと10年に一度パワフルな暴れん坊を獲得するバファローズと、今に繋がる各チームのカラーが見えてきて面白いです。

“これぞ外国人選手”と言いたくなる破天荒なエピソードが満載なのが<第3章:事件・キャラ>。アニマルの「雄叫び」、下手すぎて話題になったオマリーの「六甲おろし」、CMのためにヒゲをそった三冠王バーズetc. 「珍プレー好プレー」でも毎度おなじみのパフォーマンスや乱闘シーン、そして帰国後の選手の足跡を辿ります。映画「魁!!クロマティ高校」の公開に際してクロマティが「パブリシティ権の侵害だ!」と提訴し、結果「クロマティ本人とは無関係です」という字幕を表示することになった顛末は知っていたのですが、この件でバースとデストラーデに共闘を持ちかけたものの「今でも俺達の名前を日本のファンが覚えてくれている、いいじゃないか」と相手にされなかった、という事実を今回初めて知りました。バースとデストラーデが改めて好きになります。

<第4章:選手と成績>では、「長距離打者」「守備」「先発投手」「優勝貢献度」「日本シリーズ」「年俸」など、項目別に選手の特徴や思い出深いブレーを振り返ります。1985年阪神優勝の立役者・バース、1998年横浜優勝を導いたマシンガン打線の中心・ローズ、西武黄金時代を支えたAKD砲・デストラーデ、など「歴代最強助っ人」と呼ばれる選手ほど勝負所で活躍していたことがわかります。豊富なデータをわかり易いグラフや表で解説してくれるほか、日本プロ野球で最初に1億円を突破したのは落合ではなく巨人に在籍したスミス、など意外な事実も判明します。

<第5章:スカウティング>はかなりマニアック! アメリカ・メジャーリーグ、マイナーリーグからはそれぞれどんな特徴の選手がやってきたのか。80年代は台湾選手が多かったのに90年代では韓国選手が多くなった背景には韓国の通貨危機の問題があった。中日が韓国三銃士(宣、サムソン・リー、李鐘範)を採れたのは「日韓プロ野球スーパーゲーム」の主催が中日新聞だったから。など、この章をマスターすれば相当な外国人選手マニア、どころかプロ野球博士と呼んでしまってもいいかもしれません。

以上全5章、アタマから読み進めるのも良し、気になったところから読むも良し。居酒屋で外国人選手トークをする際にはバイブルとしても活用できるはずです。
ということで最後に、ぜひ居酒屋での野球談義に活用いただきたい、私が生み出したこの本の楽しみ方をご紹介したいと思います。

<第1章:時代>のページをパラパラ〜っとめくります。ストップ!!止まったページで無作為に指差した選手にはそれぞれ【特性】が書かれていますので、それを順に読みあげていくのです。

例えば……。
【外】【独特なフォーム】【バンザイ!】【高打率】
これを読み上げて、<クロマティ>と答えられれば正解。(「バンザイ!」でわかりますよね)

【内】【長打力と選球眼】【年俸高騰】【年上妻】
とくればペタジーニ!(「年上妻」と言えば友達のママと結婚したペタジーニです)

【投】【須田博】【300勝】【謎の死】
年配の方ならわかるでしょうか。正解はスタルヒン。(「謎の死」ってなんだ?)

という感じで即席クイズ大会のできあがりです。だいたい3つめ、4つめに印象深い特性が書かれているので、早押し的な感じで楽しむこともできると思います。ストーブリーグの野球談義に「外国人助っ人クイズ」いかがでしょうか。って、小学生時代からやってること変わんないなぁ。(オグマナオト)