様々な角度から「70億人」という現状を考えてみるアプリ「7 Billion」

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こないだ、地球上の人間の数が70億を超えた!様々なドキュメンタリーなどでも有名なナショナルジオグラフィック誌が「70億人の地球」というシリーズ企画を行っていて、その一環として、かなり分量のあるマルチメディア資料集アプリ「7 Billion」がiPad向けに登場した。

データ、写真、映像、色んな手法と視点で70億人の姿を考えてゆく、雑誌1冊分はあるんじゃないかという内容量。アプリは英語だが、見るだけで大体何が言いたいのか分かるし、webでは日本語の資料も見れるので、iPadを持っていない人にはwebサイトもおすすめ。

食料問題や二酸化炭素による温暖化や酸性化、「このままじゃ、っていうか今、地球が危ない!」系の重要な話はもちろん、その他にも、僕らが普段暮らしている中では想像もつかない「70億人いるってことはどういうことか」がたくさん。日本でもよく話題になる格差問題の具体的な姿もその一つだろう。

年に995ドル(約8万円)以下の収入を得ている人をAグループ、996ドルから3945ドル(約30万円)をBグループ、3946ドルから12195ドル(約95万円)までをCグループ、それ以上をDグループとすると、地球にいる70億人はAグループ10億人、Bグループ40億人、CとDグループがそれぞれ10億人という配分になる。「子どもとかはお金稼いでないでしょ」とか色々ツッコミがあるでしょうが、平均化したり合理的に思える統計学的な処理がしてあります。

そのデータを元に、それぞれのグループがどういう環境で生活しているかを見ていく。「Dグループは99%の人がトイレを使えるが、Aグループの人は35%」であったり、「Dグループの人は識字率98%だがAグループは66%」など、「まぁ世の中そんなもんでしょ」と思うけど、改めて具体的な数字を考えると驚く。「逆に年100万円も収入があって字が読めない2000万人ってどんな生活だよ!」など、考えなくてもいいことまでどんどん考えてしまう。でも、自分にとっての「ありえない非常識」は世界のどこかでの当たり前だったりすることが多いなあと実感。

数値データでは他にもこんなのがある。「人間の典型的な姿とはどんな感じか」を導き出そうと、色々なデータを考える。「世界で40%の人はサービス業、38%の人は農業、22%の人は工業に従事している」「33%はクリスチャン、21%はムスリム、13%ヒンズー教徒」「19%は中国人、17%はインド人、4%はアメリカ人」「51%の人は都会的な環境に住んでいる」など、70億人の様々なデータを元に「平均的な地球人の姿」を計算してみている。

日本で大人から困った子扱いされている「コンビニの前でプーさんの着ぐるみみたいな服を着て座り込んでる女子高生みたいな人」も自分も、いかに世界的にはレアで、世界規模で見れば誰もがどこかレアキャラで変なやつだってことが分かる。もうこれからは小さいことでいちいち非常識だとか言い合うのやめよう。もちろん分かった上でローカルな常識を大切にするのも生き方だしね。

それぞれの個性がある世界。その一方、多くの国や地域で共通している現象も、かなりある。都市へ人口が集中していくことや、女性が社会進出を拡大させていくことなどは多くの国で共通して見られ、そのどちらもが出生率の低下を招いている。都市部では人数の少ない世帯の方が生活が楽で、いかに多くの女性が自分を活躍させようとしているかが、ブラジルの実例で説明されていくページもとても実感を得られるものだった。

分量が多いけどどこから見てもいいし、使いやすいスライドバーで好きなページにジャンプできる機能があったり、各資料も拡大が楽だったり、読み込みスピードが速かったりと、アプリとしての作りも非常にしっかりしてる。きれいな写真も多くておすすめです。
(香山哲)