――上海を舞台にした映画ですが、実際は上海ではなく、ロンドンやタイで撮影されたということですが、苦労したことなどはありますか?

渡辺:セットデザインは上手いですよね。

菊地:完璧。

渡辺:ただ、タイが暑くてね。映画が開戦前の設定なので、12月前くらいじゃないですか。コート着て、軍服に軍帽っていうのが耐えられない暑さだったんですよ。

――逆に、上海で撮影しなかったことで、良かったことはありますか?

渡辺:タナカの言語の英語は、海軍ということもあったので、英国留学をした経験をバックグラウンドにおいて、英国風のアクセントにするのはどうだろうと提案しました。監督もそれでいいということだったので、一から英語をやり直したんですね。幸い撮影がロンドンになったので、バリバリのクイーンズ・イングリッシュのコーチが来てくれました。それが目からウロコみたいな英語だったんですよ。哲学的というか、非常にロマンチックなセリフを、タナカが吐く時の表現方法としては、非常に役に立ちましたね。言語が先に感情を引っ張ってくれるみたいなところがあって。

――今、震災の復興など、日本は大変な時だと思いますが、この映画を通して、何か感じ取ってもらいたいことはありますか?

渡辺:この映画が少し前に撮ったので、いつ公開されるんだろうって思っていて。今年の頭に「2011年の夏に公開が決まりました」という風に伺った時に、「ああ、良かったな」と単純に思っていたんです。でも、その後に、震災が起きて、大きく価値観が揺らいだり、変化せざるを得ない状況の中で、果たして、こういう映画が受け止められるのかと不安があったんです。それでもう一回見直させてもらいました。撮っている時は感じなかったんですけど、今この状況で観てみると、戦争をモチーフにしてはいますが、過酷な状況、困難な条件の中で、それでもやっぱり人は命を紡いでいくんだ、必死で生きようとしているんだ。パーソナルな愛とか憎しみとかそういうもので生きようとしていくんだっていうことを、提示しているドラマだと思えたんですね。だったら、今こういう社会情勢の中でも受け止めてもらえるのではないかなと。今年公開で逆に良かったんではないかという気がしますね。

――“生きる力”のようなものが感じられる映画ということですね。

渡辺:被災地は、すごいことが目の前で繰り広げられているんですけど、家族とか友人だったりが、その愛の中で人は生きようとしていける訳じゃないですか。勿論、それを閉ざされた人もいる訳ですけど。だから、大きな括りではなくて、個人として人はやっぱり生きていくんだ、ということを少なくともこれとリンクして頂けるんじゃないか、という気はしました。

 世界を相手にして活躍する二人だけあり、質問に対してのコメントもグローバルな内容であった。映画『シャンハイ』は、渡辺、菊地の二人の役どころも魅力的だが、アメリカ、中国を代表する名優たちも出演することも見逃せない。本作は、8月20日(土)、丸の内ピカデリーほか全国ロードショーとなる。

映画『シャンハイ』 - 公開情報

【MOVIE ENTERインタビュー記事】 - 一覧へ
あやまんJAPAN「記憶はないけど、酔っぱらってるうちに作品ができあがっている」
日笠陽子「人の目には見えない力ってあると思う」
immi「映像の世界観と音楽が完全に一致」
加藤夏希「“いい男”が“いい男”役をやっている」