増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ

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・転職の理由は・・・・お金?
会社員であれば、誰しも一度は転職を考えたことがあるはず。既に転職を何度かしている人も、今や珍しくありません。私自身の場合、転職や会社を辞める、ということが頭を過ぎった時、本音をいえばその最も大きな要因は給与・収入でした。お金(給与)だけが仕事のすべてでないことは当然ですが、そうはいっても例えば職務内容や昇進/昇格に不満があっても、給与だけはずんずん上がったらどうでしょう?(あり得ない例ですが・・・)

職務内容への不満等も含め、かなりの不満は「お金」で解決できることは多いのでは、と思います。そのくらい大切な給与ですが、例えば求人票では「年収650〜800万」と書かれていたので応募し、採用が決まったものの、雇用条件として提示された額は600万円だった、というような例もあります。なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

企業にダマされた!最初からウソの給与レンジを出していた!と怒る方もいるでしょうが、実は必ずしもダマす訳ではないことも多いのです。一人の採用であっても、そこに何十人、下手すれば100人超える応募があることもあります。


・選考の実際
ところが、これまで何千件もの採用に携わった経験から申し上げますと、仮に1人採用に100人応募があったとしても、まともに採用社が求めるスペック(要求能力・経験条件)に合致する人は、感覚的に言えば1/3以下いや、1/5以下ではないかと思います。

例えば「人材派遣会社コーディネーター募集。経験3年以上。想定年収350万〜450万」という求人があるとします。これに対し、某大企業人事職の人とか、中小企業人事部長、営業マンやショップ店員の方、等々いろいろな応募が来ます。

「経験3年以上」と書かれているからには、やはり採用社は人材派遣業の経験者、それも3年以上ある方を想定しています。ベテランがNGかどうかはその求人によっても違いますが、派遣業ではなく、人事をいくら何十年経験されていても、「派遣コーディネーター」募集には、普通はマッチしません。

一方、こういう募集では、実際未経験の営業マンやショップ店員の方が採用されたりすることはすごい異常なことでもありません。ただ、「想定年収350〜450」とあるのに、提示された年収は300万だった、というのはこういう時に起こります。あるいはコールセンターSV経験は5年あって、派遣コーディネーターは1年半、等でもあり得ます。


・求人スペックに合わない時
欲しい求人条件/スペックに満たない方を採用することは珍しい話ではありません。特に経験よりセンスを重視するのは、昨今のコンピテンシー重視の採用プロセスではより顕著になっています。「企業がダマしてる」のではなく、採用基準に満たないが採用するので、想定条件より下がっている、というのが一番多いと言えるでしょう。

いやいや、「派遣コーディネーター7年やって応募したのに、提示されたのは300万でしたよ」という方もいるのでしょうか?絶対無いと言えるほど強くは否定しませんが、その「7年」は、1社でですか?2社ですか?15社ですか?単に長くいただけでは「経歴」とは見なされません。採用条件に、「転職歴3社まで。当社が4社目となるのを上限」等制限している企業もあります。特に伝統企業、大企業ではそういった傾向があり、それらを実際には公開しない企業も少なくありません。

面接などを通じて採用を検討する過程で、残念ながら欲しいだけの求人スペックを満たしていないと判断されることももちろんあります。求人条件に書かれていることは、最低限の要望であって、単に同業経験や経験年数あるだけで、それが採用企業としては評価できないものであれば、結果としてスペックに満たないと判断されることは十分あります。


・正社員募集なのに契約社員での採用を提示された
「正社員募集で応募したら、契約社員を提示された」等というのは、このように採用する側の期待より評価が下回った状態です。その評価が正しいかどうかはだれも証明できないし、たかだか採用者の評価が絶対的正確さをもっているなどというつもりは一切ありません。しかし採用条件より低い給与額を提示されたり、正社員ではなく契約社員を提示されるというのは、採用者による評価の結果です。

そのような場合、提示された条件では勤める気がないなら辞退すれば良いだけです。ただ、こうした提示があるのは、「正社員としてなら採用はしない。しかし契約社員ならOK」という意味であって、それでも機会さえもらえれば、成果を出す自信があるというような方にはチャンスとなります。

「求人情報の範囲より低かった」の逆、「求人条件より50万高い年収をと提示された」例もあります。私自身がそうした条件提示を受けた経験がありますし、採用をする際、条件より高い提示をした経験があります。なぜなら「ぜひ欲しい」「他社に行って欲しくない」からです。欲しい人材えあれば、予算を上積みしても給与を高くすることは、実際にあるのです。

侮辱と思うかチャンスと思うかはご自分次第です。予定より低い給与条件を飲んで、入社後実績を出し、結果として募集時の給与条件を上回る自信があるのなら、こうした事態も十分チャンスと呼べるものでしょう。