社団法人日本能率協会(山口範雄会長)は「2009年度(第22回)能力開発優秀企業賞」を、東京海上日動システムズ(東京都多摩市、横塚裕志社長)、日本ベーリンガーインゲルハイム(東京都品川区、トーマス・ハイル社長)、日立建機(東京都文京区、木川理二郎社長)に決定した。

 能力開発優秀企業賞は1988年に創設され、毎年、能力開発における優秀なモデル企業を表彰している。全社的な能力開発活動の取り組みや特定のプログラムやシステムを、?戦略性?システム性?効果性?風土性の視点から審査する。

 受賞3社のテーマと受賞理由は次の通り。
 
◆東京海上日動システムズ「社員のやりがいを軸とした組織づくり」
 2004年の会社合併以降、「社員のやりがいを最大限発揮でき、社会に貢献できる会社づくり」を経営方針として掲げ、トップの熱意のもとに、社員の自発的活動、更に皆で育てるきめ細かい能力開発活動に取り組んできた。
 具体的には、「育成型人事施策の展開」として、社員一人ひとりの自己成長計画のもと、メンター制度、キャリアサポーター制度を活用した能力開発を実施してきた。
 同時に「働きがいのある職場づくり」として、2005年から立ち上げられた「ワークスタイル改革委員会」や「ダイバーシティ推進プロジェクト」を通じて、組織横断的なコミュニティ活動や、社外との活発な交流を促進することで、自発性にあふれ、社員が相互に学び合う組織風土をつくりあげてきた。能力開発と働きがいのある職場づくりを車の両輪のように、いろいろな制度を導入しながら実践する努力が随所に見られ、その効果が出てきている。
 IT業界における、社員のやりがいを軸とした能力開発、組織づくりのモデルケースとして高い評価を受け、本賞受賞となった。

◆日本ベーリンガーインゲルハイム「“Lead & Learn”を梃にした企業変革」
 2004年以降、企業変革の実現に向けた道標(みちしるべ)として”Lead & Learn”を掲げてきた。「率先して行動しているか、お互いのネットワークを作り上げているか、共に成長しているか、結果が得られているか」を社員に問いかけ、その実践に取り組んできた。
 バランス・スコアカードの導入によって、事業戦略にそった個人目標を設定するとともに、目指すべきコンピテンシーレベルの設定とキャリアステップ研修を通じて、自発性とやる気の醸成を重んじる能力開発を継続してきた。
 また、トップ自らもトレーニングを受講するほか、率先してファシリテーターとなって自社の課題について社員と議論を重ねることにより、自ら能力を高めるという企業風土を形成している。さらに、コーチングの社内資格制度を展開し全マネージャーへ徹底することで、日常の仕事の場面における社員の能力開発・意欲の向上を継続的に行ってきた。
 こうした一連の施策により、組織全体の変革を実現した事例として高い評価を受け、本賞受賞となった。

◆日立建機株式会社「“ひとづくり”をグローバルに推進する日立建機の人材育成」
 従来から、ビジネスリーダー育成を目的とした各種階層別教育に加え、自前の職業訓練校での技能系新入社員教育や、グループをあげた国際技能競技会の開催等を通じて、メーカーとしての人材育成、ものづくり文化の伝承に取り組み、着実に成果をあげてきた。
 一方で、近年はグループ全体の規模が大きくなるとともに、海外売上比率が急速に拡大する中で、グローバル化に応じた人材育成が課題となっていた。そこで、2007年に策定した中期経営計画の一環として「人材開発」を事業戦略として明示し、「人材開発センタ」を発足させ、「技術・技能」、「レンタル・サービス・セールス」、「マネジメント」の各分野において能力開発を強化してきた。
 特にグローバル化に関しては、インドにおける合弁企業からの新入社員受入研修をはじめとし、現地への出前研修などを展開している。それと同時に自社の行動基準を「Kenkijinスピリット」として明文化し、「チャレンジ精神、顧客志向、風通しの良さ」への共通の意識、行動を醸成し、グローバルにも伝播してきた。
 建設機械メーカーとしての従来からの地道な能力開発の仕組みを基礎に、市場のグローバル化という新たな経営環境を見据えて、ひとづくり・ものづくりをグローバルに展開する事例として高い評価を受け、本賞受賞となった。

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