3Dアバターが飛び出すカードゲーム:拡張現実技術を利用

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Jose Fermoso

カード・メーカーの米Topps社は現在、昔ながらの(というか、斜陽の)ビジネスを21世紀にふさわしいビジネスにするために、拡張現実(AR)機能をベースボールカードに追加しようとしている。[ベースボールカードは米国で人気があるトレーディングカードの一種で、表に野球選手、裏にそのデータや広告などが描かれている]

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パソコン画面上で、漫画風の立体的な選手のミニチュアが、現実世界の画面に重ね合わせて表示される仕組みだ。カメラ追跡システムとウェブカメラ、そして仏Total Immersion社の画像処理ソフトウェアを組み合わせている。選手が「生きた状態」(自分のカードの上に立った状態)になると、キーボードを使って選手と簡単なゲームができる。例えば、ゆっくり飛んでくるボールを強打するゲームなどだ。

Topps社のカードで利用されているAR技術は、昨年ワイアードが紹介した独Metaio社のAR技術(日本語版記事)と似ている。Metaio社のAR技術では、画面上で、現実世界の書籍に「3DのUFO」を重ね合わせることなどに使われていた。カメラのフレームが、完全に同期されたオーバーレイ(画像の重ね合わせ)を作るのに利用されているもので、こうした技術を利用することで、子どもでも、バーチャルな選手をフレームからはみ出させずに、ベースボールカードを移動させることができる。

上の動画を見ればわかるように、ゲームは、基本的なFlashベースのウェブアプリのゲームと同程度か、それよりも単純なものだが、現実には存在しない小さなアバターが隣の画面に現れるのを見るのはおもしろい。

ゲームをするには、Topps社の『ToppsTown』サイトにアクセスして、「強化版カード」の選手を選ばなくてはならない。

『New York Times』紙によると、ベースボールカード業界はかつては10億ドル規模のビジネスだったが、現在は年間売上2億ドルまで市場は縮小しており、斜陽になる一方だ。おそらく、インターネットを利用すれば、カードの裏に印刷しきれなかったデータが無限に手に入ることも影響しているだろう。それに、本格的にカード収集するには、各時代の選手をかなり正確に比較する必要があるが、現代の選手がステロイドを使用するようになり、データの価値が下がったことも関係しているだろう。

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こうしたことを受けて、カードメーカーは最近、歴代米大統領のように、商品価値がある期間が長い歴史上の人物のアイテムを売る戦略をとっている。[特別なおまけが入ったセットをランダムに入れることで、購買欲を誘う戦略だ。]例えば、偉大な運動選手のユニフォームの一部をカードに挿入したり、[コレクターが集めていた]エイブラハム・リンカーン第16代米大統領や女優のマリリン・モンローのような人物の本物の髪の毛をに加えたり(右の写真)、「ベルリンの壁」のかけらをセットにしたり、というような特別版が作られている。

リンカーン大統領が野球選手になった3Dアバターが登場したら、このカードを買うことにしよう。


WIRED NEWS 原文(English)


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