《老婦人と飼い犬をナイフとバールで惨殺》リクルーター役の18歳少年に求刑1年6か月、「マイナスからやり直してほしい」父親が涙ながらに証言【栃木・トクリュウ強殺事件公判】
今年5月、栃木県上三川町の民家で住人の高齢女性が殺害された強盗殺人事件。この事件をめぐって、初めてとなる裁判が9月15日、宇都宮地裁で開かれた。
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この日、法廷に立ったのは職業安定法違反(有害業務目的紹介)の罪に問われた、リクルーター役とみられる少年X(当時18歳)。その姿は年相応のあどけなさの残る若者だった。検察官はこの日、Xに拘禁刑1年6か月を求刑した。
3人の高校生と1人の無職少年が実行役となった事件はなぜ起きたのか--裁判を傍聴したライターの学生傍聴人氏がレポートする。【全3回の第1回】
県南東部に位置する人口3万人あまりの栃木県上三川町。のどかな田舎町が突如として恐怖に陥れられたのは、5月14日朝のことだった。
事件に関与したとして起訴されているのは、現状7人。実行犯役とされるA(当時16歳)、B(同前)ら少年4人と、指示役とされる竹前海斗(29)と妻の美結(25)両被告。そしてリクルーター役とされるXだ。
実行犯役とされる少年らの起訴状によると、事件が起きたのは5月14日の朝。竹前両被告の指示のもと、少年4人は上三川町の住宅に強盗目的で押し入った。そこで、住人の富山英子さん(当時69歳)をナイフで突き刺し、バールで殴打するなどして殺害。さらに、富山さんの息子2人に重傷を負わせ、侵入時には夫妻の飼い犬を殺したとみられる。
Xが関与したとされるのは、強殺事件が起きる前日の5月13日のこと。Xにとって、実行犯役とされるAとBは地元の知人だった。
検察側によると、XはAから「大金を稼ぐ人の募集をしている」と言われ、犯罪かもしれないと認識しながら、その仕事をBに紹介。Xは、秘匿性の高いメッセージアプリ「テレグラム」を使って、AとBを含めた3人のグループを作成し、仲介したという。
食い気味に「高校生です」
Xには、少年法が適用され、非公開の審判で最終的な処分が決定されるはずだった。逮捕後、地検はXを家裁送致したが、家裁は「刑事処分が相当だ」と判断。Xを検察官送致(逆送)の決定とし、同地検から公判請求をされた経緯がある。
開廷表の被告人氏名が「【非表示】」とされた法廷に現れたX。素朴であどけなさの残る容貌は非行少年に見えない。灰色のTシャツに白色のマスク姿で、弁護人の横に座っていた。
開廷後、人定質問で裁判長は「職業はなんですか?」と問うと、食い気味にはっきりと「高校生です」と述べた。また、罪状認否が問われた場面では、「間違いないです」と起訴内容を認めた。検察側の冒頭陳述によると、事件の詳細はこうだ。
「2026年3月頃、Bから『金に困っている』と相談を受けた。同年5月頃、Aから『大金を稼ぐ人の募集をしている』と言われ、Xはその募集が犯罪かもしれないと認識したが、Bが興味を示したことから、紹介した」(検察側冒頭陳述・要旨)
検察側が証拠請求したBの供述調書の要旨からは、「当時困窮していた。Aから案件の紹介を受けて、シグナルかテレグラムのグループトークに招待された」と、Bの当時の心境がうかがい知れる。
さらに、Aの携帯電話を解析した捜査報告書によると、3人が参加していた「テレグラム」のグループには「カタイ案件」などの文言があったという。
父親は「見捨てるわけにはいかない」
犯罪だと分かっていながら友人に"案件"を紹介したX。審理が進むと、Xの父親が証言台に立った。弁護側が情状証人として請求していた。
証言に先立って「偽りを述べないことを誓います」と宣誓した父親。その様子に、Xは固唾を飲んだようにみえた。弁護側は「事件が報道の対象になって、改めてどのように思うか?」と心境を問うた。
「本当に関わっていけないことに関わった、この言葉しかありません」(Xの父親の証人尋問から・以下同)
Xは父親の方を見ないようにしているのか、やや視線を反らす仕草をしていた。そんな息子の裁判に証人として立った決意も述べている。
「心もボロボロですが、家族としても見捨てるわけにはいかないという結論に至りました。従来どおりになれないとは思いますが……すぐに自立させて社会復帰を支援できればなと思います」
涙声で「マイナスからやり直してほしい」
Xが関与してしまった要因についても、父親はこう分析していた。
「人間関係もそうですが、本人の身勝手さなどそういったものに起因していると思います」
父親によると犯行当時、家庭では「年頃もあり話をしてくれないこともあったが、一緒に釣りにいったりご飯を食べに行ったりしていた」といい、Xとは「そこまで絶縁状態じゃなかった」と振り返っている。そして、いずれ社会復帰をするXへの希望を口にした。
「過去を猛省して、マイナスからやり直してほしいと思います」
その声は震えており鼻声になっていた。父親の涙をXはどう感じたのだろうか。マスクによって隠された表情はうかがい知ることはできなかった。
父親の証人尋問のあと、Xの被告人質問が行われた。Xが答えた内容は、少年たちの思慮の浅さを感じざるを得ないものだった--つづく記事で詳報する。
(第2回記事につづく)
◆取材・文/学生傍聴人
