錦織圭「悔しい」初戦ストレート負け、涙で競技生活に別れ「喪失感が一気に押し寄せてきた」
◆テニス ▽木下グループ・ジャパン・オープン第2日(1日、東京・有明コロシアム)
元世界ランキング4位、2014年全米シングルス準優勝の錦織圭(36)=ユニクロ=が、ついに19年にわたるプロ人生に幕を下ろした。世界ランキング8位で、大会第2シードのフランシス・ティアフォー(28)=米国=に4-6、4-6の1時間15分で敗れ、2007年10月にプロ転向宣言をした思い出の地で、ツアー本戦685試合目を終えた。世界を舞台に活躍してきた日本男子テニス界の第一人者は、涙で競技生活に別れを告げた。
明け方に雨は上がった。夜が明ける。雲は、まだ垂れ込めていた。台風26号の余波で、前日から、この日の天気予報はくるくると変わった。そして、いつの間にか青空が広がっていた。母国にあるテニスの聖地、有明コロシアム。2026年10月1日、午後3時44分。9930人の観客の拍手に包まれ、錦織圭の19年にわたるプロテニス人生に幕が下りた。
試合が終わる。ベンチに下がった錦織は、白いタオルをかぶった。自分でも信じられないが、目から涙があふれた。「試合が終わるまで、全く泣くなんて思ってなかった」。胸中をかきむしったのは、走馬灯のようによみがえる5歳で始めたテニスの人生だ。「積み上げてきた30年が、ここで終わっちゃう。本気でプレーすることがなくなるんだなという喪失感みたいのが一気に押し寄せてきた」
最後のマッチポイントで、バックのクロスのラリーが続く。世界が絶賛した錦織のバックに、ティアフォーもわざと応戦した。するすると前に出るティアフォーに、錦織のバックのパスが飛んだ。ティアフォーのフォアのドロップボレーに、錦織は追いつけなかった。その瞬間、約1万人の観衆から、やるせない声が漏れた。
自分を納得させるかのように、錦織は「やり切った。ケガで何年も失った中で、最後の最後まで諦めずにプレーできたことが誇り」と話した。しかし、すぐさま「本当に負けず嫌いで」と苦笑いで続けた。「悔しいですね、こういう終わり方は」。そして、復帰をほのめかすように「ちょっと今日の内容じゃ終われないなっていうのが大きい」と笑った。
28日に公開で行われた本戦組み合わせ抽選。最後まで名前を呼ばれず、最後のチップとなった番号は、錦織圭のものだった。相手は第2シードのティアフォー。そのチップをつかんだ小さな女の子と、それを見守った父は、この日、悔やんだろうか。それとも、錦織を引いて喜んだろうか。間違いなく言えることは、その女の子は「錦織圭」という名前を決して忘れることはないだろう。(吉松 忠宏)
