トランプ氏に「習近平氏を厚遇しすぎ」の批判も…支持率回復狙いの米中首脳会談は不発、中間選挙戦略に疑問の声で深まる「共和党の苦境」
43%が民主党、35%が共和党と回答
9月15日、トランプ政権の成果が問われる11月3日の中間選挙に向け、与党・共和党と野党・民主党の予備選挙がすべて終了した。共和党の予備選では、勝利した候補者の9割超がトランプ氏推薦だったという。
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共和党のトランプ色が鮮明になる中、トランプ氏の支持率は再び低下した。
ロイター/イプソスは21日、世論調査の結果(17~20日実施)を公表した。トランプ氏の支持率を問う「おおむね好感を持っているか、それとも反感を持っているか」との設問で「好感を持っている」の回答は全体の32%となり、過去最低水準に落ち込んだ。

インフレと生活費高騰への対応についても、「支持する」は全体の17%にとどまった。共和党支持者の間でも「支持しない」が51%で44%の「支持する」を上回った。
中間選挙については、登録有権者の43%が民主党、35%が共和党に投票すると回答した。民主党の8ポイントリードは、ロイター/イプソスが今年実施した調査で最大だ。
ディーゼル価格は昨年比で8割近く上昇
イランへの攻撃を「支持する」と回答した割合も全体の34%に過ぎなかった。また、全体の82%がイランとの戦争は「長期間にわたって続く」との考えを示した。
イラン戦争に起因する物価高は深刻だ。
当初はガソリン価格の高騰に批判が集まったが、9月に入るとディーゼル価格の上昇が問題視されている。全米自動車協会(AAA)によれば、23日のディーゼル価格の全米平均は1ガロン当たり6.52ドルと1年前の3.69ドルから8割近く上昇した。
ディーゼル燃料は貨物輸送から農業・建設業に至るまでほぼすべての商品の配送コストに組み込まれており、消費者物価指数(CPI)への上昇圧力となるのは確実だ。トランプ氏の支持基盤である農業部門への打撃となるのも頭が痛い。
ディーゼル輸出禁止案も検討されているが、価格引き下げの即効性という面では決め手を欠いている。
「習氏を厚遇しすぎ」との批判
トランプ氏が支持率の回復を狙い行った中国の習近平国家主席との首脳会談も、失敗に終わったと言わざるを得ない。成果が乏しかったとの指摘に加え、与党・共和党を含む連邦議会議員からは、習氏を厚遇しすぎだとの批判が相次いでいる。
民主党のシャヒーン上院議員らは24日に声明を発表し、トランプ氏は中国による同盟国への威圧に立ち向かうのではなく、豪華な晩餐会を開くことを選んだと非難した。
共和党のティリス上院議員も同日に放映されたCBSニュースのインタビューで、トランプ氏について、圧制者と過ごす時間が増え、民主主義国のリーダーと過ごす時間が減っている傾向を心配していると語ったほどだ。
トランプ氏の選挙戦略にも疑問の声が上がっている。
AFP通信(日本語版)は22日、苦戦する共和党が挽回する切り札はトランスジェンダーの権利を巡る論争であると、トランプ氏が主張していることを報じた。
だが、この戦略は有効ではないとの見方が出ている。トランスジェンダー問題に関する複数の世論調査で、共和党の主張への支持が高いことはわかっているが、有権者の関心が低い問題を争点化しても、中間選挙の形勢を逆転させる効果はないからだ。
トランプ氏と距離を置く共和党候補
トランプ氏の言動に対する疑念は日を追うごとに強まっている感が強い。
CNN(日本語版)は21日、「中間選挙を目前にひたすら奇妙な言動を重ねていくトランプ氏」と題する分析記事を翻訳掲載した。中間選挙を控え、有権者が指導者としての安定性に疑念を抱いている状況であるにもかかわらず、トランプ氏は奇妙な言動をエスカレートさせているという見立てだ。
さすがにまずいと思ったからだろうか、共和党候補の間でトランプ氏と距離を置こうとする動きが目立ち始めている。
ワシントン・ポストは16日、中間選挙の候補者のSNS投稿を分析した結果、共和党候補による9月1~14日の投稿のうち、トランプ氏に言及したものは9%と報じた。これに対し、トランプ氏に言及した民主党候補の投稿は20%だった。民主党候補にとって、トランプ氏は格好の批判対象になっているからだ。
日本のメディアに「トランプ隠し」とも報じられたこの現象は、共和党の指導部にも広がっている。
Forbesは23日、共和党上院トップのスーン院内総務が共和党候補者に対し、独自の選挙運動を展開して自分らしさを貫くように促したと報じた。スーン氏の発言は、複数の共和党議員がイランとの戦争終結を求めている中で出たものだという。
トランプ氏からの支持が選挙の勝利につながると長年信じられてきたが、足元の状況は様変わりだ。不敗神話が失効すれば、トランプ氏の求心力が一気に低下することは避けられないだろう。
注目すべきは下院ではなく上院か
注目すべきは、共和党内からもトランプ氏の利益相反を糾弾する声が出ていることだ。
共和党のカーティス上院議員はこのほど司法委員会に書簡を提出し、大統領の家族がその在任中に利益を得ているかどうかについての調査を求めた。大統領の一族が立場を悪用しているとの印象は政府への信頼を損なうというのがその理由だ。同議員はトランプ氏の長男ドナルド・トランプJr.氏と、バイデン前大統領の息子ハンター・バイデン氏を召喚しての証言を促している。
これを受けてグラスリー司法委員長は、調査の可否の決定は中間選挙後になるとの見通しを示した。中間選挙で民主党が上院で多数派となれば、この調査が開始され、トランプ一族の利益相反ぶりが明るみに出る可能性は十分にある。
トランプ氏は下院での弾劾訴追を恐れているが、筆者の頭には、この調査の内容次第で上院における事実上の“有罪判決”となるのではないかとの不安がよぎる。そのような事態となれば、米国の政情が大混乱に陥るのは必至だ。
日本の唯一の同盟国である米国の動向について、引き続き高い関心を持って注視すべきだ。
藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。2026年3月末日で経産省を退職。
デイリー新潮編集部
