夫の定年祝いで家族が集まった夜、突然「この家を売って小さな賃貸に移りたい」と言い出しました。住宅ローンを払い終えた持ち家があるのに、老後は手放したほうが良いのでしょうか?メリット・デメリットを教えてください
持ち家を売ると資産を現金化でき維持管理の負担も減らせる
持ち家を売る大きなメリットは、住宅という資産を現金に変えられることです。たとえば子どもが独立して2階建ての家に夫婦2人だけで暮らしている場合、使っていない部屋が多くても固定資産税や修繕は必要です。
国土交通省の「住まリテ」では、持ち家にも継続的な費用がかかるとして、戸建ての場合は固定資産税・都市計画税や修繕費用などを挙げています。築年数が進めば、屋根、外壁、給湯器、水回りなどの修繕が必要になる可能性もあります。
大きな家を売却し、駅や病院、スーパーに近いコンパクトな賃貸へ移れば、庭の手入れや建物の修理などの負担を減らせます。階段がつらくなってきた人なら、エレベーターのあるマンションなどへ移ることで生活しやすくなる場合もあるでしょう。売却代金を老後資金として活用できるのもメリットです。
ただし、自宅が3000万円で売れたから3000万円すべてが手元に残るわけではありません。仲介手数料や登記などの費用がかかり、売却益が出れば税金について確認が必要な場合もあります。
賃貸へ移ると家賃を一生払い続ける必要がある
持ち家を手放す最大の注意点は、売却後も住居費が続くことです。国土交通省の「住まリテ」では、賃貸住宅にも継続的な費用がかかるとして、毎月の家賃のほか、管理費・共益費や更新料などを挙げています。
仮に月8万円の部屋へ移った場合、単純計算では年間96万円です。20年間住めば1920万円、30年間なら2880万円になります。これはあくまで家賃だけの仮計算で、更新料や引っ越し費用などがかかる場合もあります。
一方、持ち家なら住宅ローンを完済しているため、毎月の家賃はありません。つまり、「売却して2000万円手に入るから得」と考えるのではなく、その後何年間、いくらの家賃を払うのかまで考える必要があります。
また、高齢者は、住宅セーフティネット法上の「住宅確保要配慮者」に含まれています。
国土交通省によると、賃貸人の中には、孤独死や死亡時の残置物処理、家賃滞納などに不安を持つ人も多く、高齢者が民間賃貸住宅を探す際の課題となることがあります。
現在は、高齢者などの入居を拒まない「セーフティネット登録住宅」があります。また、2025年10月からは、安否確認や見守りなどを行う「居住サポート住宅」の認定制度も始まりました。こうしたサポートや居住支援の仕組みは整いつつありますが、希望する場所・家賃の物件に必ず入れるわけではありません。
売却を決める前に住み替え先と30年程度の住宅費を比較する
夫が定年直後に「家を売ろう」と言っても、その場で結論を出す必要はありません。
厚生労働省の2025年簡易生命表では、60歳時点の平均余命は男性23.86年、女性29.07年です。定年後の住まいは長期間必要になるため、目先の売却代金だけでなく、その後20年、30年と続く住宅費を考える必要があります。
まず現在の家に今後住み続けた場合の費用を考えます。固定資産税、火災保険、今後予想される屋根・外壁・給湯器などの修繕費を確認しましょう。
次に、賃貸へ移った場合の家賃、管理費、更新料、引っ越し費用などを見積もります。金額だけでなく、生活のしやすさも比較します。
今の家から病院やスーパーまで車が必要で、10年後に運転できなくなれば暮らしにくくなるのであれば、便利な場所へ早めに住み替える意味があります。
反対に、平屋で交通も便利、近所との関係も良好で修繕費にも余裕があるなら、ローンのない家を手放さないほうが安心できる場合があります。
なお、高齢者の自宅売却について、国民生活センターは、契約内容を十分理解せず安価で売却してしまうトラブルに注意を呼びかけています。
自宅を不動産業者へ売却した場合、一般的な訪問販売のようなクーリング・オフはできません。複数の査定を取り、住み替え先を確保してから契約することが重要です。
まとめ
住宅ローンを完済した持ち家があるからといって、老後も必ずその家に住み続けるのが得とは限りません。
大きな家を売って小さな賃貸へ移れば、売却代金を老後資金として確保でき、修繕や庭の管理などの負担を減らせます。病院や買い物に便利な場所を選べることもメリットです。
一方、賃貸ではその後も家賃が発生します。長生きするほど総額が大きくなり、高齢になってから希望する賃貸住宅を探すのが難しくなる場合もあります。まず現在の家を維持する費用と、住み替え後の家賃を20年、30年程度の長い期間で比較しましょう。
「持ち家か賃貸か」という二択だけでなく、もっと小さな持ち家へ買い替える方法もあります。老後資金だけでなく、将来どこでどのように暮らしたいかを夫婦で話し合ってから、自宅の売却を決めることが大切です。
出典
国土交通省 住まリテ 住まいにはどんな費用がかかる?
国土交通省 住宅セーフティネット制度 ~誰もが安心して暮らせる社会を目指して~
国土交通省 居住サポート住宅情報提供システムの公開~10月1日より認定制度が始まります!~
厚生労働省 令和7(2025)年簡易生命表の概況
独立行政法人国民生活センター 高齢者の自宅の売却トラブルに注意-自宅の売却契約はクーリング・オフできません!内容をよくわからないまま、安易に契約しないでください
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

