会見に臨んだ東山紀之氏

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 旧ジャニーズ事務所「SMILE-UP.」の社長を2023年より務めてきた東山紀之氏(59)が、任期満了で退任すると発表した。後任には弁護士の山田将之氏が10月1日付で就任する。

 社長就任にあたりタレント業を引退し、故ジャニー喜多川氏による性加害問題の補償に対応してきた東山氏。この度開いた会見では、今後の活動については未定と語っている。

 社長就任後の2024年春、東山氏は週刊新潮の独占インタビューに応じ、誰も引き受け手がいない中で社長就任を決断した経緯、そしてその決断を支えた家族への思いについて語っていた。退任という節目を迎えた今、あらためて当時のインタビューを再掲する。

(以下、「週刊新潮」2024年5月2・9日号掲載記事を再編集しました。文中の年齢、肩書き等は掲載当時のものです。敬称略)

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芸能界復帰は「全く考えていない」

 自らすべての芸能活動を引退すると決断したのは昨年末のことでした。以来、被害者の皆さんへの補償業務に専念する日々を過ごしていますが、本当に先が長く困難を極める活動だということを痛感しています。

会見に臨んだ東山紀之氏

 補償業務を終えた後、再び芸能界に復帰する考えはあるのかなどと聞かれることもありますが、とんでもないことで、今、そのようなことは全く考えておりません。とにかく被害者の方々にとことん向き合い続け、補償業務を全うしていく覚悟です。

東山氏と後任の山田将之氏

〈そう話すのは、旧ジャニーズ事務所「SMILE-UP.」(以下、スマイル社)の社長・東山紀之氏(57)である。〉

「二次加害を擁護」と批判の声が

〈故・ジャニー喜多川氏による所属タレントへの性加害事件。その補償業務に特化したスマイル社の代表に就いた彼の発言に今、注目が集まっている。イギリスの公共放送BBCが、一連の性加害事件を報じた番組の続編「捕食者の影 ジャニーズ解体のその後」を3月30日に放送し、東山氏が単独でインタビューに答えたのだ。

 番組の中で東山氏は、ジャニー喜多川氏の他に2名の事務所スタッフが性加害の当事者であることを認めた。そのうち1名は東山氏の元マネージャーであったと報じられ世間を驚かせたが、スマイル社として被害者からの訴えがあるまでは刑事告発をしないとした姿勢に、批判が相次いでいる。

 また性加害被害者が、SNSを中心に“証言は虚偽”“金銭目的だ”などと誹謗中傷を受けていることについても問われた東山氏。その際、「言論の自由もあると思う」「誹謗中傷の線引きは難しい」などと話した様子が、二次加害を擁護しているのではないかと指摘する声も多い。

 例えば朝日新聞(4月18日付)は、この発言を「旧ジャニーズ 被害の重み向き合って」と題した社説の中で取り上げ、被害を打ち明けようとする人たちを、尻込みさせていると批判した。〉

「全く気が付かなかった」

〈本気で被害者の救済を考えているのか。その姿勢に疑念の目が向けられているわけだが、BBCのインタビュー後、改めて東山氏に真意を尋ねた。〉

 私自身、かつて自分を担当していたマネージャーが、ジャニー喜多川氏と同様に、性加害の当事者だったということを聞いた時、本当に驚きました。

 旧ジャニーズ事務所では、担当マネージャーは交代制を取っていました。30年くらい前に私のマネージャーをしていた人物が性加害を行っていたということでしたが、私の知る限り当時からそのようなそぶりはなく、全く気が付かなかったというのが正直なところです。

 代表の私が「知らなかった」では世間の皆さんからすれば意味が分からない、納得できない部分があると思います。なので、昨年8月に再発防止特別チームからご提言をいただいて以降、弊社内で作った、徹底した被害者のプライバシー保護の体制や、なぜ会社が刑事告発へ動かなかったのかについてご説明をさせてください。

なぜ刑事告発をしないのか

 元マネージャーの加害が発覚した経緯ですが、昨年初夏に内部通報があり、すぐに顧問弁護士によるヒアリングを行い、さらに再発防止特別チームにもご報告しました。その後、私は昨年8月末に社長に就任することが決まり、その時点で私の知るところとなったのですが、肝心の被害者ご自身が申告してきていないという状況でした。

 念のため申し上げると、弊社では被害者のプライバシーを確実に守るという体制を取っていますので、私は今でも、この件の被害者が誰なのかについては、一切知らされておりません。

 また、今回のBBCのインタビューの後、なぜわれわれが会社として警察に情報提供や刑事告発をしないのか、そう批判されていることも承知しています。

 私自身、被害者への補償を行う立場として、今回のケースについて元警察関係の専門家や性被害に詳しい弁護士の方々と、何度も相談を重ねてきました。

 彼らの意見を集約すると、このようなケースの場合、今の日本の法制度では被害者ご自身が警察などに救済を求める行動を起こしてはじめて、われわれの協力が効果を生むとのことでした。

 また被害者の方が刑事告訴を望んでいるかどうか分からない状況下で、われわれの独断で警察などに情報を提供すれば、被害者のプライバシーが守られなくなってしまう恐れもある。そのような点をさまざまな角度から検討し、勝手に事務所が刑事告発することはできないと判断したのです。

 もちろん今後、被害に遭われた方から申告を受ければ、捜査当局への告発など全面的に協力していきます。決してこのことをなかったことにするつもりはありません。その点をご理解いただければと思っています。

BBCのインタビューについて「非常に残念」

 またBBCのインタビューでは、私が被害者への誹謗中傷を容認しているのではないかとの誤解が生まれ、バッシングが起きてしまっています。そこで私の真意を、この場で改めてきちんとお話ししておきたいと思います。

 一見、華やかな芸能界で活動をしている人たちは、常に誹謗中傷にさらされています。何を言ってもたたかれる、そんな世界に生きている実態があります。私自身、たくさんのうその記事やSNSの書き込みを見てきて「なんとかならないのか」と弁護士の先生方に相談しても、いつも「言論の自由がある」と返されてきました。

 今回BBCのインタビューで「言論の自由」と口にしたのは、そのことが念頭にあったゆえでした。世間の皆さんに伝えたかったのは、誹謗中傷を行う人たちが「言論の自由」の名の下に独善的な正義を振りかざす怖さ、ひいては、そのことで傷つき命を絶ってしまう方もいる現状を、なんとかしたいということでした。

「言論の自由」という大義名分があるからこそ、誹謗中傷の対策を進めることには相当な難しさがある。けれども、被害者への誹謗中傷については、絶対になくさないといけない。これが私の発言の真意でした。

 事実、BBCのインタビューで私は「誹謗中傷はなくしていきたいと、僕自身も思っています」と語っていますが、残念ながら、その部分は放送で削除されてしまいました。実際の放送でなぜか省略されてしまったことで、私が誹謗中傷を否定していないと思われてしまっているのです。

 BBCのインタビューも、少しでもわれわれの活動を理解してもらえればと思ってお受けしましたが、このような結果になって非常に残念でなりません。

 この件に対しては、私自身への誹謗中傷がSNSなどを含めてものすごい数、寄せられており、苦しんでいます。イギリスで放送についての監督を行う独立行政機関である放送通信庁に、今の状況を説明することも考えています。

 もっとも、以前より被害者の方々のほうが、私とは比べ物にならないほどの誹謗中傷を受けて苦しんでいるわけです。どうか被害者に対する誹謗中傷は、本当にやめていただきたいと思っています。

早朝から夜中まで会議

 代表を引き受けた当初は、今後の旧ジャニーズ事務所をどのような形にしていくのがいいか、そして補償の枠組みや仕組みをどのようにするかなど、検討しなければならないことが山積みでした。また、新しい会社を作るにはどのような形にすべきかなどが保留の状態でしたので、早朝から夜中まで会議が続く日々でした。

 今は、少し落ち着きましたが、例えば今日、4月17日の予定を紹介すると、朝8時半から毎日行われる補償の進捗状況の会議に始まり、社内のさまざまな会議、私との面会を希望する被害を申告された方々と時間をかけてお話しする対話の会などが続き、20時ぐらいまでスケジュールが埋まっております。

 ほんの少し前まで芸能活動をしてきた身からすれば、180度違う日々を送っていますが、なぜ被害者補償の先頭に立つと決めたのか。そう聞かれることが多々あるので理由を述べておきたいと思います。

「ポジティブな言葉をいただくことで、なんとか…」

 昨年8月29日、当時のジャニーズ事務所における再発防止特別チームの記者会見があり、オーナー以外が代表に就かねばならないという勧告が出されました。

 その当時、ジャニーズ事務所の代表を引き受けてくれる人は一人もいませんでした。社員や所属タレントだけでなく、外部からも手が挙がらない。そのような状況が続く中、後輩のタレントたちを路頭に迷わせるわけにはいかない、年長者の自分がやるしかないのだろうとの思いが強くなり、手を挙げたのです。

 そう決心してからすべての芸能活動を辞めるまでの間は、「誰もやりたがらないことを請け負ったあなたを誇りに思う」とか、「ただただ、ありがとうございます」と言ってくださるファンの方々の言葉が、自分を支えてくれたと思っています。

 昨年9月5日付でジャニーズ事務所の代表に就き、10月17日付で現社名に変更して今に至りますが、私自身のモチベーションは、被害者の方々と対話を重ねる中で、「これで次にいける」「一日でも早く、タレントの皆さんが、本来のエンターテイメントで人に元気を与える仕事に注力できるように、陰ながら応援させていただきます」というポジティブな言葉をいただくことで、なんとか保たれているような気がします。

妻・木村佳乃の反応は

 これまで100名ほどの方々と直接お会いして、おわびを申し上げています。基本的には弊社の担当者と二人で会うことが多いのですが、被害者の中には、弁護士との同席を希望される方もいらっしゃいます。その際は、それぞれのご希望に沿う形で面談をしております。

 被害者の皆さんからは「これで心の中で一区切りができた」とおっしゃっていただくことが多いです。こちらから謝罪を申し上げる場であるのに、「社長を引き受けてくださり感謝しています」「いまだ先の見えない状況かと思いますが、お体ご自愛ください」などと、逆に私のことを心配してきてくださる方もいて、そんなふうに言ってもらえるとは考えもしなかったので、涙腺が緩むこともしばしばあります。

 妻(女優の木村佳乃)も私が社長を引き受けることについては、理解してくれました。社長就任を決断するにあたって自宅で、芸能活動を引退して被害者への補償に専念したいと、妻に話をしたら、静かにうなずいてくれました。誰も手を挙げないことを引き受けてしまう性格であることを、妻は分かっていたのかもしれません。記者会見の後など、世の中から大変な批判を受けた時も、私の心が折れないようにと明るく振る舞ってくれました。深いところで自分を理解してくれているし、信じてくれていると感じました。

「思春期の子どもは、外で冷たい目で見られることも経験」

 今回のことで子供たちも、ちょうど思春期ということもあり、友人の些細な言葉にも傷つくし、外で冷たい目で見られるといったことも経験しているようです。

 私は、貧しい家で育ったので、子供の時に辛いことを経験するのは成長の糧になると、そう思ってしまいます。子供たちにとっては関係のない理不尽なことでもあるのですが、今はただ、自分は誠実に仕事をしているから信じてほしいと伝えてあります。

 多くの方々の支えがあって、なんとか今の自分があるのだと感謝しています。周囲にいた仲間も皆、それぞれの道を歩み始めています。藤島(旧ジャニーズ事務所前社長・藤島ジュリー景子氏)とは補償の会議がありますので、Zoom等で毎日話はしておりますが、井ノ原(快彦)は、旧ジャニーズ事務所のタレントが移籍した「STARTO(スタート) ENTERTAINMENT」で取締役CMO(最高マーケティング責任者)となりましたので、友人として、家族等についての会話は、たまにありますが、仕事関係の話はしておりません。

 4月10日、本格始動したスタートエンターテイメントが東京ドームで記念公演を行いました。私は足を運んでおらず、ニュースなどで見ただけですが、後輩たちを無事送り出せたと思うと心底うれしかったです。

 古巣から去って独立した人たちもいます。私は、それぞれが自分の信じた道を選ぶことが正しいと思っています。各々が芸を磨き上げ、芸の道を突き進み、全体で日本の芸能界が盛り上がっていくなら素晴らしいことだと思います。

 そのためにも、私は全力で補償業務に専念していく。その決心に揺るぎはありません。

デイリー新潮編集部