「内燃機関でもカーボンニュートラルは達成できる」トヨタ・中嶋裕樹副社長が語る、日本での〈EV推進〉が“得策ではない”理由
トヨタ自動車は、2030年までにEV販売350万台を目指す計画を打ち出している。しかし、日本の消費者の間では「EVは普及しない」との見方が強い。トヨタ自動車の経営陣は、EV市場の現状をどう見ているのか。トヨタ自動車の中嶋裕樹副社長兼最高技術責任者(CTO)に訊ねた(聞き手=井上久男)。
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「燃料が変われば、エンジン車でも脱炭素が実現可能」
中嶋 日本のように火力発電が中心ですと、電気を作る過程で大量の二酸化炭素が排出されてしまうので、EVに対して疑問を持つ方が多いのでしょう。使用済みのバッテリーを再利用する過程でも膨大な電気が必要になることを考えれば、火力発電が中心の日本でEVを推進することが得策だとは思いません。逆に、フランスのように原子力発電がメインの国では、EVを推進したほうが結果として二酸化炭素の排出量が削減できるでしょう。

トヨタ自動車副社長兼最高技術責任者(CTO)・中嶋裕樹氏(筆者撮影)
また事業者の観点からすると、バッテリーの重さも懸念されるところです。EVで荷物を運ぼうと思っても、バッテリーの重量が大きいため、荷物を運べる量が減ってしまいます。収益に大きく影響するところなので、やはりEVは使いにくいとなります。
もう一方で、車との付き合い方や楽しみ方のように文化的側面も影響しているかもしれません。モータースポーツの世界のように、エンジン音や排気ガスの匂いがあってこそ、迫力や臨場感が高まることもあります。純粋な内燃機関を使いたい場合には、「エンジン+カーボンニュートラル燃料」の組み合わせもあり得る。二酸化炭素を減らすための選択肢は様々あるのだと思います。
トヨタが唱えてきた「マルチパスウェイ」が正しいと言いたいわけではありません。世界の市場では多岐にわたるニーズがあり、我々メーカーはそうしたニーズに対応していくために準備をせざるを得ないのです。現時点では、将来何が主役になっていくのか、正直なところ分かりません。ですから、まずは広く網をかけている。でも、リソースは限られますから、市場の動向を見ながら、ここに集中しなきゃいけないといった局面は出てくると思います。
ただ、我々がエンジンにこだわっているのは、カーボンニュートラル燃料を使うなど燃料が変われば、エンジン車でもハイブリッド車でも十分に脱炭素が実現可能だからです。まだコストが高いですが、合成燃料の技術もありますし、バイオ燃料にも一生懸命取り組んでいます。燃料情勢が変わることによって、内燃機関でも十分にカーボンニュートラルは達成できると考えています。だから排ガス規制対応を含めて、エンジンの技術も磨いて進化させておく必要があります。
HVの時代はいつまで続く?
--米国を中心としてHVの需要が堅調に伸びていますが、HVの時代はどのぐらい続くと見ていますか。
中嶋 いつまで続くかは、地域ごとのエネルギー事情によって変わってくるでしょう。たとえば、バイオ燃料に力を入れているブラジルでは、国にとっても消費者にとっても内燃機関をベースにやっていくほうが、メリットがあると思います。ただ、バイオ燃料はトウモロコシを原料にするので、食糧を燃料に使ってよいのかといった議論もある。そこで、トヨタは食べ物ではないものを原料にしてバイオ燃料を作ることも研究しています。地域によって、様々なエネルギー事情によって、ガラッと動きは変わります。たとえば欧州では、ウクライナ問題を契機に天然ガスが以前に比べて入手しづらくなり、水素が注目され始めています。
※約1万字の全文では、中嶋副社長が「研究開発投資の見通し」を語っています。全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア『文藝春秋PLUS』に掲載されています(中嶋裕樹「SDV開発は正解のない課題。難題に立ち向かえる人材育成がカギ」)。
(中嶋 裕樹/文藝春秋 電子版オリジナル)
