介護のために親と同居する前に確認したいことは?制度と相談先を解説

親の介護が必要になり、同居を考え始める家庭は少なくありません。ただ、勢いで住まいを一つにすると、生活の負担が一人に偏り、後から立て直しにくくなることもあります。同居を決める前に、家族で確認しておきたい点と使える制度を整理しておきましょう。

本記事では介護のために親と同居する前の確認事項について、以下の点を中心に紹介します。

同居を決める前に家族で話し合っておきたいこと

同居しながら介護を続けるために使える制度

同居して介護をする家族の相談先

介護のための同居について理解を深めるためにも、ぜひ最後までお読みください。

監修医師:
高山 哲朗(かなまち慈優クリニック)

【経歴】
理事長 高山 哲朗
平成14年慶應義塾大学卒業
慶應義塾大学病院、北里研究所病院、埼玉社会保険病院等を経て、
平成29年 かなまち慈優クリニック院長
【所属協会・資格】
医学博士
日本内科学会総合内科専門医
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本医師会認定産業医
東海大学医学部客員准教授
予測医学研究所所長

介護のために親と同居するときに確認したいこと

介護を理由に親と同居する前に家族で話し合っておくことを教えてください

同居を決める前には、暮らしとお金と役割の3つについて、関わる家族全員で話し合っておくことが大切です。

話し合っておきたいのは、次のような点です。

・主に介護を担う方と、ほかの家族が担う役割

・生活費や介護費用をどのように分担するか

・住まいの間取りや改修の必要性、それぞれの生活時間の違い

・仕事や子育てとの両立をどう保つか

・同居を続けるのが難しくなったときにどうするか

特に、離れて暮らすきょうだいがいる場合は、決めた内容をメモや書面にして共有しておくと、後の行き違いを防げます。あわせて、本人がどこでどのように暮らしたいと考えているかを確認しておきましょう。同居は手段の一つであり、始める前に見直しの余地を残しておくと、無理なく続けやすくなります。

親と同居すると介護保険サービスは使えなくなりますか?

同居しても介護保険サービスは利用できます。要介護認定を受けていれば、訪問介護や通所介護、短期入所などを使えます。

注意したいのは、訪問介護のうち掃除や洗濯、調理といった生活援助の扱いです。同居する家族がいる場合、生活援助は一律に使えなくなるわけではありませんが、家族の就労状況や心身の状況などをふまえて、市区町村が個別に判断します。食事や入浴、排せつの介助といった身体介護は、同居する家族の有無に関わらず利用できます。

そのため、同居を機にサービスを減らす必要はありません。仕事を続けながら介護をする、家族自身に持病があるといった事情は、遠慮せずケアマネジャーへ伝えましょう。判断に迷う場合は、市区町村の介護保険担当窓口に確認すると、地域の取り扱いを教えてもらえます。

親と同居せずに介護を続ける選択肢にはどのようなものがありますか?

同居せずに介護を続ける方法もあります。近くに住む、通いながら支える、在宅サービスを組み合わせるといった選択肢です。

一人暮らしを続ける場合でも、日中と夜間を通じて短時間の訪問と随時の対応を行う定期巡回・随時対応型訪問介護看護や、通いと訪問、宿泊を組み合わせられる小規模多機能型居宅介護を使えば、支援の手を厚くできます。安否を確認したいときは、自治体の見守りの取り組みや、緊急通報装置の貸与を利用する方法もあります。

在宅での生活が難しくなった場合は、介護老人福祉施設や認知症対応型共同生活介護(グループホーム)などの入所も選択肢に入ります。どの方法が合うかは、本人の状態と家族の生活によって変わります。同居だけが答えではないと知っておくと、選び方に幅が生まれます。

親と同居しながら介護を続けるために使える制度

親の介護のために仕事を休める制度はありますか?

育児・介護休業法に基づき、介護休業と介護休暇という2つの休みが定められています。

介護休業は、対象家族1人につき3回まで、通算93日まで取得できます。原則として休業開始予定日の2週間前までに、書面などで勤務先に申し出ます。雇用保険の被保険者であれば、休業開始時賃金日額の67%相当の介護休業給付金を受け取れる場合があります。介護休暇は、対象家族が1人なら1年間に5日まで、2人以上なら10日まで取得でき、1日単位でも時間単位でも使えます。

対象となる家族は、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母です。このほか、残業を免除する所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、短時間勤務等の措置も用意されています。介護休業は自身が介護に専念するためだけでなく、態勢を整える期間として使うと続けやすくなります。

親と同居している場合の介護費用の負担を軽くする仕組みを教えてください

介護費用の負担を軽くする仕組みには、介護保険の給付を調整するものと、税や貸付で支えるものがあります。

1ヶ月の自己負担額が上限を超えたときに払い戻される高額介護サービス費、医療費と介護費を合わせて負担を調整する高額医療・高額介護合算療養費、施設に入所したときの食費や居住費を軽くする特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)などがあります。所得が少ない世帯を対象に、社会福祉法人等による利用者負担軽減制度や、生活福祉資金貸付制度を設けている地域もあります。

税の面では、一定の要件を満たすと医療費控除や扶養控除、障害者控除の対象になる場合があります。障害者控除は、市区町村が交付する認定書があれば手帳がなくても受けられることがあります。同居して同じ世帯になると、所得の判定が変わり負担額に影響することもあるため、市区町村の窓口で早めに確認しておきましょう。

介護保険を利用して住まいを改修することはできますか?

介護保険では、要介護や要支援の認定を受けた方が暮らす住まいの改修に対して、費用の支給を受けられます。

対象となるのは、手すりの取り付け、段差の解消、滑りの防止や移動を円滑にするための床材の変更、引き戸などへの扉の取り替え、洋式便器などへの便器の取り替えと、これらに付帯して必要になる工事です。支給には上限額が定められており、原則として一つの住まいにつき1回ですが、要介護の区分が大きく上がった場合などは再び利用できることがあります。

手続きで注意したいのは、工事を始める前に市区町村へ申請する事前申請が必要な点です。担当のケアマネジャーが住宅改修が必要な理由書を作成します。工事の後に申請しても対象外になることがあるため、着工前に相談しておきましょう。賃貸住宅では、所有者の承諾が必要になります。

参照:『介護休業』(厚生労働省)

参照:『介護休暇』(厚生労働省)

親と同居して介護をする家族の相談先

親と同居して介護をするときはどこに相談すればよいですか?

介護そのものは地域包括支援センターと担当のケアマネジャー、仕事との両立は勤務先と労働局が相談先になります。

地域包括支援センターは市町村が設置する高齢の方の総合相談窓口で、要介護認定の申請や利用できるサービス、権利擁護まで幅広く扱います。すでにサービスを利用している場合は、担当のケアマネジャーに生活の変化を伝えると、ケアプランを調整してもらえます。住宅改修や福祉用具についても、同じ窓口から相談できます。

仕事との両立で困ったときは、まず勤務先の人事や労務の担当へ、介護休業や短時間勤務などの制度を確認しましょう。制度が使えない、相談しにくいといった場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)が相談を受け付けており、事業主との間で問題が生じたときの解決の援助も行っています。

参照:『仕事と介護の両立~介護離職を防ぐために~』(厚生労働省)

同居している家族が介護に行き詰まったときの相談先を教えてください

介護に行き詰まりを感じたときは、抱え込まずに地域包括支援センターへ連絡してください。

強い口調になってしまう、手が出そうになる、眠れない日が続くといった状態は、支援の量が足りていないという合図でもあります。地域包括支援センターは高齢の方への虐待に関する相談も受け付けており、責める場ではなく、態勢を立て直すために一緒に考える窓口です。ケアマネジャーに伝えれば、ショートステイや通所介護を増やすなど、休める時間をつくる調整ができます。

気持ちの落ち込みが続くときは、かかりつけ医や自治体の精神保健福祉センターに相談する方法もあります。同じ立場の方と話せる家族会や介護者の集いに参加して、気持ちを言葉にするのも支えになります。在宅での介護が限界に近づいたら、施設の利用を検討することも、家族を守る大切な判断です。

編集部まとめ

ここまで介護のために親と同居する前の確認事項についてお伝えしてきました。要点をまとめると以下のとおりです。

同居の前に役割分担や費用、住まい、両立、続けられなくなったときの選択肢を家族で話し合っておく

同居しても介護保険サービスは使え、介護休業や介護休暇、費用を軽くする仕組みも利用できる

困ったときは地域包括支援センターやケアマネジャー、勤務先や労働局に早めに相談する

同居は、無理のない形を最初に決めておくことが、親と自身の暮らしをどちらも守ることにつながります。

これらの情報が、皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考文献

仕事と介護の両立~介護離職を防ぐために~|厚生労働省

介護休業|厚生労働省

介護休暇|厚生労働省