「血管年齢75歳」でも諦めないで。血管が若返る“3つの習慣”と“土台”を医師が解説

血管の老化には、生活習慣で取り戻せる部分と、戻しにくい部分があります。日本人の死因は、心臓の病気と脳血管の病気が上位を占めますが、血管は硬くもろくなっても痛みを感じないため、変化に気づきにくいという性質があります。健康診断で「血管年齢」を指摘されたとき、どこまでは取り戻せて、どこからが取り戻せないのか。そして取り戻せるなら、何をすればよいのか。総合診療医の舛森(ますもり)先生に詳しくお話を伺いました。

監修医師:
舛森 悠(YouTube医療大学)

2019年旭川医科大学卒業後、札幌にて初期研修をおこない、函館稜北病院総合診療科へ。北海道内の3次救急を担う救命救急センターなどを経て、現在は千葉大学大学院 医学薬学府 先進予防医学共同専攻 博士課程にて研究に従事。並行して北海道での地域医療に貢献し、登録者98万人を誇る「YouTube医療大学」を運営。一般社団法人とまりぎケア代表理事、総合診療専門医、新家庭医療専門医、認知症予防専門医、医師会認定産業医。

血管には「取り戻せる硬さ」と「取り戻せない硬さ」がある

編集部

健康診断で血管年齢が実年齢よりも高いと指摘され、ショックを受けてしまう人は少なくありません。そもそも血管の「若さ」とは、何を指しているのでしょうか?

舛森先生

外来にも、健康診断で「血管年齢75歳」と言われ、肩を落として来た64歳の男性がいました。血管が歳とともに硬くなること自体は避けられない事実ですが、硬くなる一方ではありません。血管の若さは一つではなく、大きく二つの観点で判断します。

一つ目は「血管のしなやかさ」、つまりゴムのような伸び縮みのよさ。二つ目は「血管の内側を覆う膜の元気さ」です。

編集部

膜というのは、血管のどの部分でしょうか?

舛森先生

血管内側の、薄くつるつるした「内皮(ないひ)」と呼ばれる部分です。この内皮がたいへんな働き者で、血液の流れを感じ取ると、一酸化窒素という血管の壁を緩める成分を出します。一酸化窒素が出ると血管が広がって血が流れやすくなります。例えるなら、内皮は血管の内側のコーティングです。内皮が元気なら血管はしなやかに広がり、傷つけば血管は硬く縮こまったままになります。

編集部

内皮が元気かどうかは、調べられるのでしょうか?

舛森先生

血流依存性血管拡張反応(FMD)という検査で分かります。腕を少し圧迫して、ぱっと放したとき血管がどれだけ素直に広がるかを見る検査です。いわば、内皮の通信簿ですね。実施している医療機関は限られるので、気になる人はかかりつけ医に相談してみてください。

拡張反応が鈍い人ほど、将来、心臓や血管の病気になりやすいことが分かっています。世界中の研究をまとめた大きな分析では、約1万5000人の腕の血管の広がりやすさを測り、その後の経過を数年間にわたり追跡しました。すると、血管がよく広がる人ほど、その後の心臓・血管の病気が少ないという関連が示されました。[1]

こうした血管のしなやかさは、取り戻せる部分に該当します。

編集部

内皮を整えることには意味があるのですね。逆に、取り戻しにくい部分とは何でしょうか?

舛森先生

血管の壁にこびりついたどろどろの塊、「プラーク」です。また、血管にカルシウムが沈着して硬くなる「石灰化」も同様です。この二つは、いったん進むと生活習慣改善だけではきれいに元通りとはいきません。プラークを小さくするには、コレステロール値をしっかり下げる治療を中心に行う必要があります。多くの研究をまとめた分析では、強力な薬を使うと、プラークが実際に小さくなることが示されています。[2]

編集部

冒頭で血管年齢という言葉が出ました。「血管が若返る」とは正確にはどういう状態なのでしょうか?

舛森先生

硬くなった血管のしなやかさと内皮の働きは若返る、すなわち取り戻せる可能性があります。ただし、プラークや石灰化もゼロに戻すという意味ではありません。先ほどの64歳の男性にも、「プラークへの対応は、まず数値の管理から。ただ、血管のしなやかさは、今日からの習慣で取り戻していける可能性がありますよ」とお伝えすると、表情がふっと軽くなりました。

編集部

習慣づけが大切なのですね。詳しく聞かせてください。

舛森先生

はい。血管のしなやかさを維持するうえで大切なのは、「動く」「食べる」「温める」という3つの習慣です。順に解説しますね。

習慣❶動く:研究で示された運動の「量」の目安は?

編集部

まず、運動はどの程度効くのでしょうか?

舛森先生

最も地味で、最も確実な方法です。2024年に発表された、24の試験をまとめた分析があります。平均年齢が60代後半の人たちを対象に、有酸素運動や筋トレを続けた人と、そうでない人を比べました。すると、ウォーキングのような有酸素運動をした人と、有酸素運動と筋トレを組み合わせた人では、内皮の働きがよくなり、血管の硬さも和らいでいました。一方、筋トレだけでは、血管内皮も硬さもはっきりした改善は認められませんでした。[3]

この結果で重要な点は、内皮と硬さの両方に効いていたことです。同じ運動で、血圧、体重、血糖までまとめて整います。運動量の目安は、早歩きのような有酸素運動を週に合計150分、1日に換算すれば20~30分ほどです。

編集部

激しい運動が苦手な人は、ストレッチのような穏やかな運動でもよいのでしょうか?

舛森先生

はい、ストレッチも血管によいという報告があります。足の血管に病気がある平均71歳の人たちに、ふくらはぎを伸ばすストレッチを4週間続けてもらった研究では、ひざ裏の血管の広がりやすさが改善していました。[4]また、中高年を対象にした別の分析でも、ストレッチで血管の硬さが和らいだと報告されています。[5]

編集部

SNSなどでは「1日5分のストレッチで血管が若返る」といった情報もよく見かけます。

舛森先生

正直にお伝えすると、上記の研究で使われたストレッチは1日30分、週に5日という頻度です。1日5分で十分とは言い切れません。ただ、まったくやらないより、まず始めることに意味があるのは確かです。5分のストレッチを毎日続けられたら、それは立派な健康への入口といえるでしょう。

編集部

運動の種類によって、血管への効果は変わるのでしょうか?

舛森先生

変わります。2026年、大動脈の硬さを指標にして運動の種類を比べたネットワークメタ解析が発表されました。その結果、有酸素運動では有意に硬さが和らいでいた一方、筋力トレーニング単独、インターバル運動、ストレッチでは、この指標に有意差は出ませんでした。[6]

なお、先ほどのふくらはぎストレッチの報告は、硬さではなく血管の広がりやすさを見た研究ですから、互いに否定し合っているわけではありません。ただ「硬さのほうを動かしたい」のであれば、まず有酸素運動が必要です。

このメタ解析では、週の運動量が350メッツ・分(運動の強さ×時間を表す単位)あたりを超えると差が出始めていました。早歩きを週150分続けた場合、およそ600メッツ・分になり、その基準線を十分に上回る量になります。

習慣❷食べる:「血管によい」とされるカカオ、緑茶、青魚の位置づけは?

編集部

次に「食べる」です。血管によいとされるものは多くありますが、どこまで期待してよいのでしょうか?

舛森先生

それぞれ期待度と注意点が異なります。今回は、カカオ、緑茶、青魚について説明します。

カカオ:悪くはないが、最強でもない

舛森先生

2022年に発表された大規模な試験では、大勢の高齢者を、カカオの成分を抽出した飲料を摂取するグループと、見た目だけ同じ偽物の飲料を摂取するグループに分けて心臓・血管の病気の発生に差が出るかどうかを追跡しました。結果、全体では、両グループ間にはっきりした差は出ませんでした。[7]

心臓・血管の病気による死亡という一部の指標だけを見るとカカオ摂取グループで少ない傾向もみられましたが、これは副次的な結果です。なお、使われたのはカカオ成分を抽出したもので、店頭の甘いチョコレートとは別物です。一般的なチョコレート菓子を足すだけだと、糖と脂とカロリーも一緒に増え、かえって逆効果になりかねません。

緑茶:飲み物として続けるならよい習慣

舛森先生

複数の研究をまとめると、お茶をよく飲む人ほど、内皮の働きが元気だったという傾向が示されています。[8]推奨量は、1日に湯のみで2~3杯ほどです。ただしこれはあくまで飲み物の範囲での目安です。サプリで同様の効果が出ることは実証されていません。また、血圧を下げるという分析もありますが、下がるのはほんの数mmHgで、薬の代わりにはなりません。[9]

青魚:食べる分には勧められる

舛森先生

米国心臓協会(AHA)は、成人では魚を週に1~2回食べることを推奨しています。[10]心臓の病気がある人には、青魚の油は1日1g程度までという目安もありますが、指示ではありません。魚食を始めるときは、量も含めてかかりつけ医に相談してください。

一方、魚の油をサプリで摂ったときの効果は研究によってばらつきがあり、一貫した効果は確認されていないという報告もあります。[11]

魚は食べる、ただしサプリ頼みにはしないと覚えていただければと思います。

習慣❸温める:ほぼ毎日の入浴で心血管の病気が28%少ないという報告

編集部

三つ目は「温める」でした。日本人にとって身近な、入浴のことでしょうか?

舛森先生

そのとおりです。働き盛りの日本人男女約3万人を対象にした大きな追跡調査があります。湯船につかる回数とその後の心臓・血管の病気の関係を調べたところ、ほぼ毎日つかる人は、ほとんどつからない人より、心臓・血管の病気がおよそ28%少ないという関連が見られました。[12]ただしこれは「関連」であって、入浴だけが理由とまでは言えません。

このほか、座った姿勢が多い人に8週間、繰り返し湯船につかってもらった少人数の試験では、内皮の働きが改善し、血管の硬さも和らぎ、血圧も下がっていました。[13]

編集部

実際に変化を感じられた患者さんの例はありますか?

舛森先生

血圧の薬を飲んでいる72歳の女性が、熱すぎない湯につかることと、短距離の散歩を毎日半年続けたところ、血圧が前より落ち着いてきたと話していました。もちろん個人差はありますが、続けることには意味があると考えています。

編集部

温める習慣を取り入れるうえで、注意すべき点はありますか?

舛森先生

温めること自体はよいのですが、熱すぎる湯船は危険です。政府広報オンラインでは以下の入浴目安が示されています。

・湯は41℃以下 ・つかる時間は10分まで

42℃以上の湯船に10分つかると、体温が上がりすぎて意識がもうろうとする危険があります。[14]

特に次の3つのいずれかに当てはまる人は、熱い湯と長湯を避けてください。

(1)高齢の人 (2)血圧の薬を飲んでいる人 (3)心臓に持病のある人

入浴で困った際は一度、かかりつけの医師に相談しておくと安心です。

【知っておきたい最新情報】「温活」をめぐる新たな報告

2025年、まだ少人数を対象とした段階の研究ですが、高齢者の下半身を温めたところ、血圧が下がり、血管の広がりもよくなったという報告が発表されました。[15]

「若々しい血管」の土台は生活習慣病対策

心血管の健康を支える「8つの柱」

編集部

先ほどの3つの習慣は、心血管の健康全体の中でどう位置づければよいでしょうか?

舛森先生

「動く・食べる・温める」は、あくまで補助です。血管にとって確かな土台は、もっと地味なところにあります。

AHAは、心血管の健康の柱として8項目を挙げています。[16]その内訳は以下の通りです。

▼毎日の生活習慣4項目

・食事 ・運動 ・睡眠 ・ニコチン曝露(禁煙)

▼体の数値指標4項目

・体重(BMI) ・血中脂質 ・血糖 ・血圧

血中脂質は、LDLコレステロールではなく、総コレステロールからHDLコレステロールを引いたnon-HDLコレステロールという指標が使われています。カカオも緑茶も入浴もプラスアルファであって、血圧やコレステロールの薬、禁煙といった土台の代わりにはなりません。土台があってこそ、プラスアルファが生きてきます。

血圧の目標は2025年の改訂で一本化

編集部

土台の一つ、血圧はどのくらいを目標にすればよいのでしょうか?

舛森先生

2025年8月、日本高血圧学会の『高血圧管理・治療ガイドライン2025』が6年ぶりに改訂されました。[17]

今回の改訂で大きく変わったのが降圧目標です。年齢や持病にかかわらず、原則として診察室で130/80mmHg未満、自宅で125/75mmHg未満に一本化されました。改訂前は75歳以上だけ緩やかな目標でしたが、今回の改訂から同じラインに設定されています。

まぎらわしいのは、高血圧の診断基準は据え置きで、診察室で140/90mmHg以上のままだという点です。「診断の線」と「治療で目指す線」は別の数字だと知っておくと、健診の結果を読み違えずにすみます。

サプリは土台の代わりにならない

編集部

よく分かりました。ちなみに最近は「血管が若返る」とうたうサプリや成分が含まれるものも見かけます。これはどれほどの効果が期待できるのでしょうか?

舛森先生

そうした成分の多くは、まだ研究の途中です。動物や、ごく小規模な試験では興味深い結果が出ていても、人が長期服用して本当に安全か、本当に効果があるのかは、これから確かめる段階にあります。なかには高額なものも出回っていますが、現時点で過度な期待は禁物です。

舛森先生からのメッセージ

血管年齢を指摘されても「もう歳だから」と諦める必要はありません。プラークや石灰化への対応は数値管理が主役になりますが、血管のしなやかさと内皮の働きは、日々の習慣づけで改善できる可能性があります。動く、食べる、温める。どれか一つからでも構いません。

健やかな血管において最も大切なのは、体重、血中脂質、血糖、血圧という土台の形成です。健康診断の数値が気になっている人、すでに薬を飲んでいる人は、自己流で調整せず、かかりつけの医師にご相談ください。血管は、正しい方法を続けていけば応えてくれる可能性があります。その一歩を、今日から始めてみてください。

注釈

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の治療法を推奨するものではありません。気になる症状がある人や、現在薬を服用中の人は、自己判断で中断・調整を行わず、必ずかかりつけの医療機関や専門医にご相談ください。

※記事中の症例は、個人が特定されないよう再構成しています。

【出典一覧】

[1]Ras RT, et al.|Int J Cardiol|2013

[2]Rivera FB, et al.|Am J Prev Cardiol|2024

[3]da Silva RSN, et al.|PLoS One|2024

[4]Hotta K, et al.|Cardiovasc Revasc Med|2019

[5]Kato M, et al.|Int J Environ Res Public Health|2020

[6]Tan Y, et al.|Front Cardiovasc Med|2026

[7]Sesso HD, et al.|Am J Clin Nutr|2022

[8]Ras RT, et al.|PLoS One|2011

[9]Khalesi S, et al.|Eur J Nutr|2014

[10]Rimm EB, et al.|Circulation|2018

[11]Xin W, et al.|PLoS One|2012

[12]Ukai T, et al.|Heart|2020

[13]Brunt VE, et al.|J Physiol|2016

[14]政府広報オンライン|2021

[15]Ruiz-Pick A, et al.|J Appl Physiol|2025

[16]Lloyd-Jones DM, et al.|Circulation|2022

[17]日本高血圧学会『高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)』2025年8月発刊