優勝したソフトバンクの本拠地・みずほペイペイドーム

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 セ・リーグの優勝争いはまだ混沌としているが、パ・リーグではソフトバンクが圧倒的な強さで3連覇を達成。クライマックスシリーズに進出する球団もほぼ固まりつつあり、徐々に来季へ向けた話題が増えてくる時期となった。【西尾典文/野球ライター】

【写真】リーグ3連覇を果たしたソフトバンクの祝勝会の様子

千両役者ぶりを見せつけた

 この時期、ファンの関心を集めるのは実績あるベテラン選手の去就ではないだろうか。今年は開幕前に栗山巧(西武)が今季限りでユニフォームを脱ぐことを表明。さらに球界最年長の石川雅規(ヤクルト)、日米通算258セーブを誇る平野佳寿(オリックス)、国内独立リーグ出身選手として初めてタイトルを獲得した角中勝也(ロッテ)ら、多くの選手が引退を発表している。

優勝したソフトバンクの本拠地・みずほペイペイドーム

 一方、11月で41歳となる大島洋平(中日)は、来季も球団が契約を結ぶ方針と報じられている。年齢を重ねても、戦力として必要とされるベテランはいる。

 では、まだ去就がはっきりしていない選手はどうなるのか。現在の成績だけでなく、球団内での立場や将来の指導者候補という事情まで絡んでくる。来季の動向が注目される選手を見ていきたい。

 野手では、最年長の中村剛也(西武)の去就が注目される。同期入団で同学年の栗山が今年限りで引退することもあり、盟友である中村の動向を気にする声は多い。球団OBの話では、来季も現役を続ける公算が大きいという。

「戦力的なことはもちろんですが、一番大きいのは野球に取り組む姿勢ですよね。かつての西武は将来を期待された選手を徹底的に鍛えてレギュラーにしてきましたが、栗山と中村はその時代を知る最後の選手です。今はあらゆる面で厳しくなっており、球団が選手に強制して練習させることは難しい。その中で自ら進んで練習する中村の存在は非常に大きいはずです。本人がどうしても引退すると言えば分かりませんが、少なくとも球団から今季限りで引退勧告をするようなことはないと思いますね」

 春先から二軍暮らしが続いていた中村は、8月に一軍へ昇格。8月21日の楽天戦では試合を決める代打満塁本塁打を放ち、千両役者ぶりを見せつけた。さらに9月4日のソフトバンク戦では4番で出場し、今季初の3安打を記録している。

 通算本塁打は現役最多の482本。500本という大台まで、あと18本に迫っている。全盛期のように年間を通して中軸を任される立場ではなくなった。それでも、ここ一番で一発を期待できる打力は健在である。

 栗山が引退すれば、長く西武を支えてきた時代を知る貴重な存在になる。球団OBのコメントにある通り、若手に与える影響まで考えれば、単純に一軍での打席数だけでは測れない価値がある。シーズン終盤に健在ぶりを示したことは、現役続行への追い風となりそうだ。

自分のペースを崩さない強さ

 投手では、引退を表明した選手を除くと岸孝之(楽天)が最年長となる。こちらは現役続行が有力視されている。

 今季は一軍初登板が5月29日のヤクルト戦と少し出遅れたものの、その後は安定したピッチングを披露。ここまで10試合に先発して4勝5敗ながら、全試合で5イニング以上を投げ切り、防御率2.80をマークしている。

 40歳を超えれば、若い頃と同じような登板数を求めるのは難しい。しかし、マウンドに上がれば試合を作る。現在も先発ローテーションの一角として計算できること自体、岸の大きな強みと言えるだろう。

 そんな岸について、球団関係者はこう話す。

「若い頃はあまり練習しない、走らないと言われていたことがあったと聞きますが、とにかく自分のペースを崩さない強さがあります。自分のやるべきことをよく分かっていて、自己管理は徹底している。長く続けられているのは、そうした自己管理のうまさが大きいのではないでしょうか。実際に先発させればしっかり試合を作る。若い投手にとって、あらゆる意味でお手本となる選手だと思います」

 岸は西武時代の2008年に日本シリーズMVPを獲得し、楽天移籍後の2018年には最優秀防御率のタイトルに輝いた。長いキャリアの中で投球スタイルを変化させながら、40代になった現在まで先発の座を守っている。

 年齢を重ねても自分のペースを崩さず、必要な準備を続けて結果につなげる。その姿勢は、若い投手が多いチームにとって貴重だ。実際に一軍のマウンドで結果を残している以上、単なる精神的支柱にとどまらない。

 今季限りで引退する石川を除けば、岸の通算174勝はNPBで現役最多となる。現在の投球内容を見る限り、来年以降に勝利数をさらに伸ばすことは十分期待できそうだ。

ここ一番での集中力は凄い

 中村、岸と比べればまだ年齢的には若い。今年12月で38歳となる坂本勇人(巨人)は、ここへ来て来季の去就が騒がしくなってきたという。

 昨季は一軍定着以来最低となる32安打、打率.208に終わり、オフには大幅減俸となる推定年俸3億円の単年契約を結んだ。今季は開幕から一軍に帯同し続けているが、9月17日終了時点で60試合に出場して24安打、5本塁打、打率.178。数字だけを見れば厳しいシーズンである。

 その一方で、今年5月には通算300本塁打を達成。7月には通算8本目のサヨナラ本塁打を放ち、セ・リーグ記録に並んだ。通算安打数でも現役最多。かつてのように毎年タイトルを争う数字ではなくなったとはいえ、球史に残る記録を今なお積み重ねている。

 単純に打率だけでは測れないものがある。長年巨人の中心選手としてプレーしてきたスターであり、勝負どころで打席に立った時の存在感はいまだに大きい。プレーについての評価も決して低くないという。

「打率は確かに低いですが、ここ一番での集中力は凄いものがあります。チャンスで打席に入った時の球場の盛り上がりは凄いですよね。サードの守備は十分に戦力と言えるレベルです。ずっと一軍にいるのは、勝負強さや守備を評価されているからでしょう」

 得点圏打率はシーズン打率を1割以上上回る.308。勝負強さはまだまだ健在だ。9月5日の広島戦では延長11回に代打で出場し、試合を決定づける2点タイムリーツーベースを放った。守備でもここまで失策0と安定感を見せている。

 レギュラーとして毎試合出場する役割からは遠ざかりつつある。それでも、勝負どころの打力に加え、三塁守備まで考えれば戦力として使い道はある。何より、長年チームの顔を務めてきた坂本は、単純に数字だけで去就を決められる選手ではない。

 それでも現役続行が安泰とは言い切れない。理由の一つが、来季の監督人事である。

「大きいのは来季の監督が決まっていないことですね。過去には高橋由伸が引退して、いきなり監督に就任した例があります。坂本についてはさすがにそういうことはないと思いますが、監督人事によって編成が大きく変わることはあります。坂本は現役では生え抜き最大のスターですから、当然将来は指導者としての期待がある。新監督次第ではコーチ就任を打診される可能性はあるでしょう」

 巨人の山口寿一オーナーは9月16日に行われた12球団オーナー会議後、来季の監督人事について「全く決まっていない」と答えている。表向きは白紙の状態でも、水面下ではさまざまな動きが進んでいるはずだ。

 坂本ほどの実績を残した生え抜きのスターとなれば、今季の成績だけで去就が決まるとは考えづらい。現役を続けるのか、それとも将来の指導者就任を見据えた動きが出るのか。監督人事や来季の編成方針が、その判断に影響することは十分考えられる。

 中村、岸、坂本。3人とも全盛期と同じ立場ではない。それでも、一発を期待できる打力、試合を作る先発としての技術、勝負どころで発揮する集中力と、それぞれ違った形で現在のチームに価値をもたらしている。

 引退発表が相次ぐ今季の球界で、彼らが来季も戦力として必要とされるのか。残り試合での働きだけでなく、各球団の編成方針も含めて、その去就に注目したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部