「寂しいから早く帰ってきてね」…夫見送った妻見つからず、台風25号による死者11人・不明3人
交通網また寸断、復旧に数か月
台風25号による大雨の影響で、千葉県では24日も交通網の混乱が続いた。
土砂崩れや倒木で道路約100か所が通行止めとなり、鉄道は線路に土砂が流れ込むなどして各地で運休。復旧まで3か月かかる見通しの路線もある。同日は新たに神奈川県横須賀市で1人の死者が確認され、千葉、神奈川両県の死者は11人、安否不明者は3人となった。
山肌が十数メートルにわたって滑り落ち、道路橋が崩落--。茂原市から千葉市中心部に向かう幹線道路・旧千葉外房有料道路を上空から見ると、崩落した橋や道路のがれきが川の上に散乱していた。8月13~14日の千葉豪雨から3週間後の今月3日に仮復旧を終えたばかりだった。
連休が明けると、周辺の渋滞が悪化した。千葉市緑区の公務員の女性(29)は「普段なら市中心部まで30分で行けるが24日は倍近くかかった」と話す。
24日時点の通行止めは、国、県、千葉市管理分の道路だけで計94か所。のり面や路肩の崩落、倒木が相次いでおり、千葉豪雨から続く大量の雨が誘発したとみられる。千葉豪雨の際は、県管理道路の復旧に3週間かかっており、県道路環境課は「今回は最低でも数か月かかるだろう」とする。
鉄道被害も深刻だ。線路沿いの複数箇所で土砂崩れが起きたJR内房線姉ヶ崎(市原市)-木更津駅間は、復旧に少なくとも3か月程度かかる見通しだ。木更津市から千葉市に通勤する公務員の男性(53)は「28日から代行バスが運行されると聞いたが渋滞で時間が読めない」と心配する。
道路被害は停電解消の遅れも招いている。東京電力パワーグリッドによると、21日に最大約5万9000戸だった停電は、3日後の24日午後8時時点でも1万2180戸に上る。6万戸以上が停電した千葉豪雨で、水が引いて2日間でほぼ解消されたのとは対照的だ。同社の広報担当者は「今回は道路が復旧しないと作業できない」とする。
23日に旧千葉外房有料道路の被災現場を視察した熊谷俊人知事は「被害は千葉豪雨よりもはるかに大きい」と険しい表情を見せた。
生存率が急激に下がる72時間経過
生存率が急激に下がるとされる災害発生から72時間が過ぎた24日、神奈川県では自宅で土砂に巻き込まれた横須賀市長井の沼田明美さん(70歳代)の死亡が確認された。安否不明になっている三浦市南下浦町上宮田の20歳代女性は発見に至らず、自衛隊や消防などが25日早朝から捜索を再開する。
「出来るだけ、近くにいたい」。女性の20歳代の夫は規制線の内側で救助を待ち続ける。台風接近が予想された21日、夫は仕事が休みになった女性に職場まで送ってもらった。「1人だとつまんなくて寂しいから、早く帰ってきてね」。そう言われて車を降りた。
雨脚が強まり、夫も早めに仕事を切り上げることに。午後1時半頃、「早めに帰るよ」と女性に電話で伝えた。その後、迎えを頼もうと掛け直した時にはもうつながらなかった。
女性は素っ気ない態度を取った後に、優しい言葉をかけてくれるかわいらしさがあった。「ツンデレだけど、甘えん坊で……」。夫は涙を浮かべ、言葉を詰まらせた。
千葉県鴨川市と長柄町では、土砂崩れ現場で男性2人の捜索が続いた。市原市の川でも水没した軽乗用車が見つかり運転者の捜索が行われたが、いずれも発見に至らなかった。
鴨川市の現場の近くに住む男性(78)は「どんな形でも良いので、早く見つかってほしい」と涙を浮かべながら話した。
印旛沼近くのソーラーパネル出火
24日午前8時半頃、千葉県成田市大竹で、「ソーラーパネルが燃え、複数箇所から炎と黒煙が出ている」と119番があった。火は約2時間30分後に消え、けが人はいなかった。
現場は台風25号の大雨で堤防が決壊した印旛沼(いんばぬま)に近く、市消防本部は浸水によるショートが火災の原因の可能性もあるとみている。
千葉豪雨を上回る総雨量
台風25号では、千葉、神奈川両県の広範囲で長時間にわたって雨が続き、総雨量では各地点で8月の千葉豪雨を上回った。
気象庁によると、21日夜頃までの48時間降水量は千葉県大多喜町で489・0ミリ、市原市で487・0ミリ、千葉市中央区で419・0ミリに達した。8月13~14日の千葉豪雨では同区の387・0ミリが最大で、いずれの地点も今回よりも少なかった。
また、今回は同県を中心に19地点で48時間降水量の観測史上最大を記録したのに対し、千葉豪雨では2地点のみだった。
1時間降水量でみると、千葉豪雨では同区で115・0ミリを観測するなど猛烈な雨が降った。一方、今回は同県では香取市の61・0ミリが最大で、前回のような線状降水帯の発生もなかった。ただ、台風周辺の暖かく湿った空気が流れ込み続けた影響で19日から断続的に雨が降り続き、総雨量が増えたという。
防災システム研究所(東京)の山村武彦所長によると、今回の土砂災害は長雨で地盤が緩んだ斜面に強い雨が集中的に降ることで発生した可能性があるという。今後も雨が予想され、「特に土砂災害警戒区域ではレベル3(警報)の段階で避難を考えてほしい」と指摘する。
