食料品消費税「8%→1%」で1%相当を支援金で給付…支援金がもたらす3つの効果とは?
2026年8月5日の閣議決定により、2027年4月以降、食料品の消費税率を現在の8%から1%に引き下げ、さらに、食料品の価格の1%相当額を給付することが決定しました。当初、高市早苗首相の所信表明では、食料品の消費税率を2年間ゼロ%としたうえで、その後、給付付き税額控除を導入するという構想が示されていました。しかし、税率をゼロ%にするためにはレジシステムの改修などに時間がかかることから、社会保障国民会議の中間取りまとめでは、税率を1%とし、残る1%分を給付する案が示されたのです。消費減税の決定を受け、『食料品消費税1% 減税×給付付き税額控除の真実』を緊急出版した矢内一好氏が解説します。
「減税には賛成、効果には疑問」という世論
2026年9月6日に公表されたJNN世論調査では、高市首相が表明した「食料品の消費税を2027年4月から2年間、8%から1%に引き下げる方針」について、「賛成」と答えた人は51%でした。前月の調査から1ポイント下落した一方、「反対」は42%と、3ポイント上昇しています。
また、消費税の減税が物価高対策として効果があるかを尋ねたところ、「効果がある」は「非常に」と「ある程度」を合わせて43%、「効果はない」は「あまり」と「全く」を合わせて55%でした。つまり、消費税の減税そのものには賛成する人が過半数を占める一方、物価高対策としての効果については懐疑的な見方が上回っているということです。
「災い転じて福となす」という諺があります。今回、税率がゼロ%ではなく1%となったことは、必ずしも「災い」とはいえませんが、当初の構想にはなかった効果が生じることになったと考えられます。ここでは、その主な3つの効果について見てみます。
1%分の給付で減税効果を実感しやすくなる
1つ目は、1%分の給付が行われることになったことです。給付総額は約6,000億円とされています。
先の世論調査では、消費税減税に賛成する人が過半数を占める一方、物価高対策としての効果については「効果はない」とする人が55%に上っています。減税による負担軽減は、実際の買い物の場面では必ずしも大きな金額として実感できない可能性があります。
これに対して、1%分の給付が行われれば、減税と給付の両方によって家計への支援を実感しやすくなると考えられます。少なくとも、消費税率を1%に引き下げるだけの場合とは異なる効果が期待できます。
2029年の税率引き上げの影響を緩和する可能性
2つ目は、2029年に予定されている給付付き税額控除との関係です。
同じJNN世論調査では、2年後に食料品の消費税率を再び8%に戻すことについて、「賛成」は37%、「反対」は53%でした。せっかく1%まで引き下げた税率を8%に戻すことについては、否定的な受け止めが多いことが分かります。
もっとも、2029年には給付付き税額控除の導入が予定されています。したがって、1%から8%への税率変更による家計負担の増加についても、給付付き税額控除によって一定程度緩和されることになります。
高市首相は、2029年に8%へ戻すことについて「責任を持って実施する」と明言しています。食料品の消費税率を一時的に引き下げる政策と、その後の給付付き税額控除をどのようにつなげるのかが、今後の重要な論点となります。
1%分の給付は「給付付き税額控除」の予行演習にもなる
3つ目は、今回の1%分の給付が、将来の給付付き税額控除を導入する際の一種の予行演習になる可能性です。
今後、消費税に関する税制改正大綱などで、給付に関連する具体的な制度設計が示されるものと思われます。今回の1%分の給付は、対象者の所得について、配偶者の所得や利子などの所得をどこまで考慮するのかといった複雑な条件を設けない、比較的簡便な仕組みになると考えられます。
一方、給付付き税額控除を導入する場合には、所得をどこまで把握して給付対象者を決めるのか、世帯単位とするのか個人単位とするのかなど、より詳細な要件を設定する必要があります。
その意味では、今回の1%分の給付を実施することによって、給付の仕組みや実務上の課題を確認できる可能性があります。将来の給付付き税額控除を本格的に導入するうえで、今回の制度が一つの実証的なステップになるともいえるでしょう。
食料品の消費税率を8%から1%へ引き下げることは、単純な「減税」として捉えることもできます。しかし、その1%分を給付する仕組みが組み合わされたことで、今回の措置は、2029年以降の給付付き税額控除を見据えた制度設計という側面も持つことになりました。
今後注目すべきなのは、1%分の給付が実際にどのような仕組みで行われるのか、そして、その経験が給付付き税額控除の制度設計にどのように生かされるのかという点です。
矢内 一好
国際課税研究所
首席研究員

