花粉症といえば春。だが、昨今はブタクサによって引き起こされる“秋の花粉症”に悩まされている人も多い。対策として、日本発酵文化協会上席講師の藤本倫子さんは「にごり酢を1日大さじ1杯飲めばいい」と断言する。なぜ、普通のお酢ではなく「にごり酢」なのか。ライターの笹間聖子さんが聞いた--。
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■ヨーグルトや納豆では届かない「免疫の急所」

鼻水や鼻詰まり、くしゃみ……。春同様、生活のクオリティを下げ、集中力を妨げる秋の花粉症。その対策として、発酵食品のエキスパートであり、歯に衣着せぬ解説で知られる日本発酵文化協会上席講師 藤本倫子さんは「にごり酢」をすすめる。

画像提供=藤本さん
「日本発酵文化協会」上席講師の藤本倫子さん - 画像提供=藤本さん

にごり酢が花粉症に効く要因は、人間の免疫細胞がもつ「Toll様受容体(TLR)」にあるという。TLRとは、細菌やウイルスを認識すると、排出のためにくしゃみや鼻水などの免疫応答を引き起こす、いわば免疫の「センサー」だ。花粉症は、このTLRが過剰に反応することで起こるアレルギー症状のひとつである。

TLRには1から11まで種類があり、味噌や納豆、ヨーグルトほか、ほとんどの発酵食品の微生物は「TLR2」を刺激する。けれどにごり酢に含まれる酢酸菌だけは「TLR2」と同時に「TLR4」も刺激する。「TLR2」は細菌・原虫を認識するのに対して、「TLR4」は細菌・原虫・ウイルスをも認識するため、にごり酢を摂取して両方を刺激し続けると、免疫細胞が鍛えられるのだ。

すると、だんだん免疫が誤作動しにくくなり、花粉が体内に入ってきても「過剰反応」しにくい体になっていく。アレルギー症状が緩和されるのはそのためだ。

「効果が出るまでの目安は約4週間です。それぐらい続けていると、鼻回りの花粉症の症状が出にくくなります。筋トレのようなものですよ。免疫細胞を毎日刺激してトレーニングすることが大事です。筋トレを週に1回やったって、大して筋肉はつかないでしょ。それと同じ!」

なるほど。免疫とは、鍛えるものだったのだ。

■「にごり」の中には酢酸菌がいる

しかし、なぜ普通の酢ではダメなのか。答えは単純で、にごり酢には酢酸菌がいるが、普通の酢にはいないからだ。

酢は、にごり酢の下に白く溜まっている「にごり」と呼ばれる、米などの原料を発酵させた成分をろ過してつくられる。しかし、酢酸菌はその「ろ過されて廃棄されるもの」の中にいる。

「日本人はきれい好きだから、昔から原料を絞ったり、濾して使うのが一般的だったんです。それが仇となり、有効成分をせっせと捨ててきてしまっていたのね。海外はにごりが残っていても気にせず使っている国が多いんです。どぶろくみたいなものよ、感覚的には」

しかしコロナ禍、変革が起こる。感染を防ぐために免疫を高めようと発酵食品が再注目され、そのなかで酢酸菌にもスポットが当たったのだ。キユーピーは2019年、「酢酸菌GK-1」を4週間を摂取した人がそうでない人に比べて、花粉・ホコリ・ハウスダストによる鼻の不快感を軽減したことを臨床試験で実証した。

2020年にはこの知見をもとに、酢酸菌GK-1を使った機能性表示食品「ディアレ」を発売、「花粉による鼻の不快感軽減」の表示が認められた初の食品となった。さらに2021年には、酢酸菌GK-1の摂取で「鼻汁・鼻づまり・せき・全身倦怠感・疲労」といった風邪に見られる症状の発症率が低下することも確認されている。

■生きていても死んでいても効果は同じ

そこを皮切りに、発酵業界のあちこちで「にごり酢開発チーム」がたちあがった。昨今、健康意識の高い人に人気のブランド「富士酢」のにごり酢も、コロナ禍に免疫強化を目的として誕生した商品だ。

ちなみに、にごり酢は製造工程で加熱殺菌処理がなされており、中にいる酢酸菌は死んでいる。それでも効果は変わらないそうだ。それは、ほかの発酵食品でも基本的には同じだという。

「菌が生きていても死んでいても、食べることで免疫反応が起きやすくなります。だからどっちだろうが続けること、一定の菌数以上の量を毎日摂ることが大切なんです」

ここで筆者の頭に「生きた乳酸菌が~」という、あるドリンクのCMの謳い文句がよぎった。思い切って聞いてみると、藤本先生はにっこりと笑って言った。「あれはマーケティングですよ。踊らされてますね」。

そうだったのか……。また、注意したいのは、にごり酢がすべての花粉症の症状に効くわけではないということだという。

「目のかゆみは違うんですよ、目と鼻は神経が通る道が違うから。でも、鼻の症状だけでも緩和されればかなりQOLが上がるんじゃないかな」

藤本先生は少し残念そうに、でもすぐに切り替えるようにそう言った。確かに鼻さえ通れば、重度の花粉症で鼻水が止まらなくなる筆者も、だいぶQOLが上がりそうだ。

■裏面の「ラベル」表示で見極める

にごり酢が花粉症にいいことは分かった。しかし「お酢を毎日飲む」と聞くと、ハードルが高く感じる人もいるだろう。選び方と飲み方、両方をここで解決してしまおう。

写真=iStock.com/Michelle Lee Photography
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Michelle Lee Photography

まずは選び方だ。にごり酢はメーカーによって、なかにいる菌の数が変わる。効果の高い商品をどう見分けたらいいのか。

尋ねると、

「身も蓋もないけれど、実験データなど、エビデンス(科学的根拠)を出しているメーカーのものを選ぶのが、結局一番確実なのよ」と藤本先生は苦笑い。

「発酵食品の世界には「体にいい」と謳う商品が溢れているけれど、お金をかけて実験しても、エビデンスが出てこないものは出てこないし、出ているものはそれだけ意味がある」ときっぱり言い切った。

エビデンスは、商品のホームページなどを見ればだいたい記載があるが、スーパーで簡単に見分ける方法もある。

「キユーピーのにごり酢にはラベル表示に『酢酸菌GK1』と書いてあります。他のメーカーでも、『酢酸菌入り』と書いてあるのが見極めポイントね。海外製品だったら『マザー入り』という意味の表記があります」

「免疫ケア にごり酢」(キユーピーリリースより)

■割るだけで肌に潤いが出る“最強ドリンク”

ただ、にごり酢は一般的な酢より発酵テイストが強いため、そこにも注意が必要だ。

「発酵食品に慣れている私でも飲めないくらい、匂いも味も強いものもありますから要注意よ」

初心者におすすめなのはりんご酢など、フルーツ果汁を発酵させた酢だ。飲みやすさと効果は関係がないので、まずは飲みやすいものを選べばいい。

次に飲み方だ。藤本先生によると、毎日摂取したい目安は大さじ1杯(15ml)。それだけで、90億個もの酢酸菌が含まれているそうだ。その量なら、ドレッシングに混ぜたり、料理に使う酢をにごり酢に置き換えるだけでもいい。

ただ、毎日続けるなら、最もシンプルな方法が結局一番楽だという。

「断トツのおすすめは、そのままクイッと飲んじゃうことです。炭酸で割ってもいいんですけど、薄めると量が増える。酢の入った飲み物をたくさん飲むのはしんどいでしょう? だったらそのまま飲んだ方が楽よ。うちの教室の生徒たちも、最初はドレッシングに混ぜたり工夫していたけど、最終的に全員『そのまま飲む』に行き着いてるからね」。

そして、飲む前には必ず振ること。沈んでいるにごりの部分に菌が溜まっているからだ。加えて、なるべく歯に直接触れないように飲むこともポイントだそう。酸で、歯の表面が溶けてしまうおそれがある。

また、どうしてもそのまま飲めない場合、混ぜて飲むのにおすすめなのが甘酒だ。酢の強い酸味を甘酒の甘さがやわらげてくれる。量は「100mlに対してにごり酢小さじ1」が目安だそう。

「甘酒も発酵飲料なので、一緒に飲むと、それぞれが免疫を高めてくれます。腸内環境も整って、続けるほどに肌の潤いも出てきますよ。花粉で肌が荒れちゃっている人には特にいいですね」

酢酸菌(顕微鏡拡大画像)(キユーピーリリースより)

■3歳の我が子、インフルでも「鼻づまりゼロ」に

酢を毎日飲みはじめ、花粉症への効果を感じる期間は最低4週間。ただ、「週に1回抜かしたから即アウト」ということではない。

「ちょっと忘れても大きな影響はないでしょう。でも、基本的には毎日の習慣にしないと、免疫は高まりません。これは全ての発酵食品に言えることで、お酢だけの話じゃないけどね」

藤本先生自身、20代は花粉症の薬を毎年飲んでいたが、お酢を摂り始めてから症状が大幅に緩和されたそうだ。3歳になるお子さんも、毎晩寝る前に、小さじ3分の1ほど飲んでいるという。

「うちの子は少し前にインフルエンザにかかったんだけど、めちゃくちゃ楽そうだったよ。鼻づまりもないし、とにかくグーグー寝ていました。周りのお母さんたちが、『うちの子は鼻水が止まらず、夜も眠れなくて大変だった』と言っているのを聞いて、毎日の酢が効いてるなって……」

発酵のエキスパートも、家族みんなで実践しているのだ。

秋のブタクサは8月下旬から10月中旬に飛散する。その後、冬がきて、春にはまたスギ、ヒノキの花粉が待っている。藤本先生によれば、「エビデンスはまだないけれど、ホコリアレルギーにもメカニズム的には同じ効果が期待できるはず」とのこと。

毎日の「大さじ酢1杯」生活をはじめるのは今かもしれない。

「花粉症の症状が出たり、インフルエンザにかかってしまうのはしょうがありません。でも症状が楽な方が、少しでも楽じゃないですか。鼻がとおると、つらさが全然違いますよ」

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笹間 聖子(ささま・せいこ)
フリーライター、編集者
おもなジャンルは「ホテル」「ビジネス」「発酵」「幼児教育」。編集プロダクション2社を経て2019年に独立。ホテル業界専門誌で17年執筆を続けており、ホテルと経営者の取材経験多数。編集者としては、発酵食品メーカーの会員誌を10年以上担当し、多彩な発酵食品を取材した経験を持つ。「東洋経済オンライン」「月刊ホテレス」「ダイヤモンド・チェーンストアオンライン」「FQ Kids」などで執筆中。大阪在住。
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(フリーライター、編集者 笹間 聖子)