「くら寿司」は「ちいかわ」商品を横流し…人気コンテンツとのコラボで相次ぐ企業の不正、取材で見えた現場の限界
飲食チェーン店やファッションブランドなどあらゆる種で人気コンテンツとのコラボレーション企画が行われている。フィギュアやポストカードなどの限定グッズがプレゼントもしくは販売されるもので、キャンペーン期間中にはSNSにファンの喜びの声が多数投稿される。
くら寿司が「ちいかわ」コラボ景品抜き取り疑惑で騒然! 第2弾「湯呑み」まで開始前からメルカリ出品?
コラボはタイアップする企業の売り上げアップに貢献し、その認知度やブランドイメージの向上も期待されてのことだが、くら寿司はちいかわとのコラボがキッカケでネットが炎上。最近は、コラボリスクが指摘されるようになっている。
■「呪術廻戦」とコラボした「牛角」でも…
コラボの開催中に大きな問題になるのが、限定グッズや特典をフリマサイトなどで高値で売りさばく転売屋(転売ヤー)の存在である。転売行為は以前から批判の対象だが、人気キャラクター「ちいかわ」と「くら寿司」のコラボでは、あろうことか、店の従業員が特典を“横領”してフリマサイトに出品していたことが発覚。それに続いて「呪術廻戦」とコラボした牛角でも、従業員の不正が明らかになった。
そこで「くら寿司」のケースを振り返ってみたい。事の発端は、フリマサイト上に、寿司を食べることでもらえる特典が多数、しかも同じ人物から大量に出品されていたことだった。この特典は、SNSでは「1万円以上寿司を食べても手に入らない」という投稿が上がっていたほど入手困難だったことからネット上では、「内部の人間が抜いているのではないか」という疑惑が浮上した。
さらに、店頭に飾られるはずの販促品の“幟”まで出品する者が現れた。これは特典として配布されているものではないため、内部の人間の関与が確実だ。一連の騒動を受けて、「くら寿司」は9月5日に謝罪。併せて、翌日からコラボの中止が決まった。
これまでも、「ちいかわ」のコラボは転売屋のターゲットにされることが多く、特に「マクドナルド」とのコラボで大きな騒動になったのは記憶に新しい。しかし、今回の「くら寿司」のケースは転売行為だけが問題ではなく、従業員が横流しに関わっていたということも重なり、企業倫理が問われる事態に発展しているのである。
■キャンペーン中は業務激増でも給料変わらず
転売屋が批判される一方、ネット上ではコラボによる店員への負担の大きさを問題視する声も上がっている。実際、チェーン店の店員にとって、人気コンテンツとコラボするキャンペーン期間中は客が殺到するため、戦々恐々であるらしい。
筆者が過去にあるチェーン店を取材した際に聞いた話によれば、キャンペーン期間中は、スタッフの業務量がとんでもなく増えてるにもかかわらず、給与やバイト代は変わらないことがほとんどで、早期出勤を強いられてしまうことも少なくないそうだ。そんな過重労働やストレスで、職場の雰囲気は日を追うごとに険悪になっていくという。
企業にとって当然、不正は厳禁で、キャンペーン期間中、従業員は特典の厳重な管理を求められる。店によっては特典の金庫への保管が命じられ、余ったグッズやノベルティは確実に廃棄するように厳命され、一切外部に流出しないように管理されるという。昭和世代のコラボなら、残ったグッズを常連客や子供などにあげていたこともあっただろうが、今はそれすら許されないほど厳格になっている。
あるチェーン店の店長は、「コラボの間はバイトが集まらず、業務量が著しく増える」「現場のスタッフにとってコラボは割に合わなさ過ぎる」と嘆いていた。決して許されることではないが、現場スタッフへの負担が大きく、転売屋ばかりが儲かる仕組みでは、やり切れないスタッフが「やってられない」と思っても、仕方ないのではないだろうか、と思えてくる。
■コラボ企画は実は“諸刃の剣”
相次ぐ炎上騒動を経て、今後は人気コンテンツとのコラボの際、企業は転売対策だけでなく、様々なきめ細やかな対応が必要になるだろう。
繰り返すようだが、従業員による横領が発覚したことは深刻な問題で、これから特典の品切れが判明すると、たとえ不正が行われていなくても、「従業員が抜いたのではないか」とよからぬウワサが拡散してもおかしくはない。特典をもらえなかった客からクレームが殺到するなど、カスタマーハラスメントの拡大も懸念される。
熱狂的なファンはコンテンツへの想いが深いため、コラボが成功すれば賞賛するし、味方になる。ところが、トラブルが起こると大問題として、怒りを爆発させて一気に企業を叩き出す傾向にある。イメージアップを期待して仕掛けたコラボキャンペーンがかえって、ブランドイメージに重大な影響を及ぼしかねない。コラボ企画が“諸刃の剣”なのは、そのためである。
そうして万が一、コラボが中止に追い込まれると、企業はグッズを処分する羽目になる。「くら寿司」はコラボ中止で大量の「ちいかわ」グッズが残ってしまったが、一体どうするのだろうか。9月17日現在、公式の発表はまだない。
昨今のコラボは、成功すると巨額の利益を生み出すものの、失敗した場合は企業の株価にまで影響が及ぶほど、極めてギャンブル的な要素が強くなっている。これ以上炎上が続くようであれば、企業がコラボ自体を取りやめることもあり得るのではないか。
(文=宮原多可志)
