当たり前じゃない軽妙な走り ライレー・ケストレル・スプライト 1 1/2リッター(2) 好ましい適度なヤレ感 現代の交通にも交われる
最初のオーナーは創業者の息子、セシル・ライレー氏
ライレー・ケストレル・スプライト 1 1/2リッターの正確な生産台数は、調査が難しいと現オーナーのアンディ・シーガー氏は話す。「1938年に経営破綻し、ブリティッシュ・レイランド傘下になりましたが、多くの資料は戦争で焼失したようです」
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「それでも、片側に窓が3枚あるシックスライト・ボディのケストレルは、計1100台ほど作られたと推測できます。スプライト仕様の割合は不明ですが、自分の推測では200台程度ではないかと」

ライレー・ケストレル・スプライト 1 1/2リッター(1935~1938年/英国仕様) ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
シーガーのケストレル・スプライトは、1936年10月にデモ車両として登録されたもの。最初のオーナーは創業者の息子の1人、セシル・ライレー氏。当初の塗装は、レッドだったという。彼は第一次大戦で服役し、その後ライレー・ナインの開発に携わっている。
時間の経過とともに生まれた適度なヤレ感
1937年2月に手放され、ロンドンでライレー・ディーラーを営んだ、ジミー・ジェームズ氏が購入している。その後の詳細は不明だが、1960年代までは常用されていたようだ。終戦直後のモデルより性能に優れ、運転しやすかったためだろう。
それまでの何処かで、ボディはスラッジ・グリーンへ再塗装。さらに複数のオーナーを介して、1984年まで断続的に公道を走っていた。現在は復元されているが、ボディサイドのランニングボードを途中で失っている。

ライレー・ケストレル・スプライト 1 1/2リッター(1935~1938年/英国仕様) ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
1990年代に、エンジンブロックへヒビが入った状態で発見。ライレーを得意とする、ブルー・ダイヤモンド社によってレストアが施された。それから28年。時間の経過とともに適度なヤレ感が生まれ、今では好ましい趣を漂わせている。
ボディは全高が低く、幅も狭め。18インチのノックオフ式ワイヤーホイールが、全体の印象を引き締める。電装系は、電圧6Vが主流だった中、いち早く12Vが採用されていた。ただし点火マグネトーは、実用性を求めてデスビとコイルに置換されている。
ラジエターの頂部で輝く猛禽類のマスコット
シーガーによれば、ケストレル・スプライトは110km/h程度での高速巡航も難なくこなすという。ブレーキが余り効かないことを、忘れてはならないが。当時のAUTOCARによるテストでは、3速で6000rpmまで引っ張って、101km/hに届いたようだ。
乗り心地を踏まえ、前後アクスルの間に配されたキャビンはフロアが低く、大人4名が問題なく過ごせる。ドアは大きく開き、閉めるとドスンと重い響きが鳴る。フロントガラスはヒンジで倒せ、大きなサンルーフも備わる。荷室は、見かけ以上に広い。

ライレー・ケストレル・スプライト 1 1/2リッター(1935~1938年/英国仕様) ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
少し左へオフセットしたステアリングホイールは巨大で、ハブ部分にホーンとウインカー、ヘッドライト、点火タイミングのスイッチ。小さなスターターボタンを押すと、短いクランキングで1496ccの4気筒エンジンは始動した。
約500rpmのアイドリングは静か。細く伸びるボンネットの両脇に、ヘッドライトのドームが見える。ラジエターシェルの頂部では、誇らしく猛禽類のマスコットが輝く。
キビキビ加速し2026年の交通にも問題なく交われる
発進すると、フライホイールの唸りや、遊星ギアが組まれた4速MTのギアノイズが耳に届く。マフラーからは、弾けるようなビートが奏でられる。
シートはサイドが立ち上がったセミバケットで、着座位置はかなり低いが視界は広い。ダッシュボードの中央にメーターが所狭しと並び、チョーク用ノブもある。両脇には、小物用のボックスが開いている。

ライレー・ケストレル・スプライト 1 1/2リッター(1935~1938年/英国仕様) ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
速度計は、時速100マイル(約161km/h)まで。スプライト仕様として、タコメーターも装備する。シフトセレクターで1速を選び、左側の変速用ペダルを1度踏み込み、アクセルペダルを傾ければ発進できる。
クラッチは遠心式で、600rpm以上まで回すと自然につながる。その後の変速は、レバーで次のギアを選んでおけば、好きなタイミングで変速用ペダルを踏むだけ。充分キビキビ加速でき、2026年の交通にも問題なく合わせられる。
当たり前の体験とはいえない軽妙な走り
ステアリングホイールは重すぎず、往年のライレーが主張した通り正確。ロックトゥロックは2回転とクイックで、狙ったラインを滑らかに辿れる。重心が低く、エンジンの位置はフロントアクスルより後方で、身のこなしは軽快だ。
リーフスプリングが不整を巧妙に均し、乗り心地は安定。同時期のフォード・モデルYのように、凹凸でふらつかない。全幅が狭く、舗装の剥がれた穴を避けるように走れる。

ライレー・ケストレル・スプライト 1 1/2リッター(1935~1938年/英国仕様) ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
エンジンは滑らかに回転し、60km/hまで加速したら、トップギアでの巡航は安楽。予めギアを選ぶことに慣れは必要だが、ギアの回転数を調整するシンクロメッシュが普及するまでは、シフトレバーを臆せず倒せる、画期的な仕組みだったことは事実だ。
ラインオフから90年も過ぎているが、高度な技術力で、今でもウェスト・ミッドランズを軽妙に走り回れる。純な英国車を運転する醍醐味を、しっかり堪能できる。敬意を抱いて当然なほど、当たり前の体験とはいえないだろう。
協力:フェニックス・グリーン・ガレージ社
ライレー・ケストレル・スプライト 1 1/2リッター(1935~1938年/英国仕様)のスペック
英国価格:398ポンド(新車時)/3万ポンド(約645万円)以下(現在)
生産数:約1100台
全長:4420mm
全幅:1473-1549mm
全高:1499mm
最高速度:136km/h
0-97km/h加速:29.0秒
燃費:-km/L
CO2排出量:-g/km
車両重量:1270kg
パワートレイン:直列4気筒1496cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:65ps/5000rpm
最大トルク:12.4kg-m(予想)
ギアボックス:4速プリセレクター式マニュアル/後輪駆動

ライレー・ケストレル・スプライト 1 1/2リッター(1935~1938年/英国仕様) ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

