〈身体改造男〉指を2本切除、白目を黒く染め、頭にはシリコン…全身を“作品”に変えた男の改造歴「最初は完全にファッションだった」

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横浜のとあるバーでカウンターに立つ男性。初対面の客からよく聞かれるのは、「痛いですか?」「なんでそうなったんですか?」という言葉だ。それもそのはず。白目は黒く染まり、頭と頬骨には埋め込まれたシリコンの形が浮かぶ。さらに耳は尖り、顔をタトゥーが覆い、両手にはそれぞれ1本ずつ指がない。その姿はどこか爬虫類を思わせる。

【画像】「全身が作品」白目を黒く染め、舌はスプリットタン、腕にもシリコン

 

海外では「Meji」の名で知られ、南米を中心としたタトゥーコンベンションに“身体改造のアジア代表”として招かれているメジルシ髙倉。そんな彼の始まりは19歳、ファッションとして入れたタトゥーだった。なぜ、そこから眼球や指にまでおよぶ身体改造へ進んだのか。〈前後編の前編〉

白目は黒く、耳は尖っている

──まず、その目はどうしたんでしょうか……。

メジルシ髙倉(以下同) 「アイボールタトゥー」です。白目を覆う結膜の下に青や紫など複数の色素を重ねて入れ、白目全体を黒く見せています。ガト―・モレノ(※)という有名なアーティストに入れてもらいました。

※ガト―・モレノ……メキシコを拠点に活動した著名な身体改造アーティスト。皮下インプラントや舌の分割などを手がけ、世界各地のタトゥーコンベンションにも参加。2025年4月に死去。

──頭と頬骨にも何か入っていますね。

シリコンのインプラントです。頭には貝殻の形、頬骨にはV字を連ねた形のものが入っています。腕にも入れていて、大きなものだけでも7つほどあります。

──唇の下の黒い石は?

「ビッグ・ラブレット」です。唇の下を切開して穴を広げ、そこに黒曜石をはめ込んでいます。メキシコのアステカ文化にもみられる装飾をもとにした身体改造です。

──耳も尖っています。

「イヤーポインティング」です。耳をカットして縫い合わせ、尖らせました。

──顔のタトゥーもかなり印象的です。

体や頭までは“普通”だったんですけど、顔で全然変わりました。2025年11月にタイのタトゥーコンベンションで、ポルトガルのアーティスト・ゴルドレターズに入れてもらいました。

──独特な模様ですね。

平筆でフリーハンドで描いたものを上からなぞるんです。本当にキャンバスに描くように入れていきます。

頭頂部は京都のタトゥースタジオ「針三昧」の彫師・五打(GOTCH)さんによる「神社トライバル(神社仏閣の建築装飾から着想を得て生み出した独自のスタイル)」です。実家が神社ですから(笑)。

「小指を取ったらどうなるのか、と。試しにですね」

──身体改造もタトゥーも、誰にやってもらうかはかなり重要なんでしょうか。

そうですね。本当に惚れた、技術のあるアーティストにしか頼みません。きちんとした技術を持つ人に施術してもらうことが大事ですし、納得のいく作品にするためにも、アーティスト選びはすごく重要だと思っています。

※本記事は、身体改造という文化とその当事者の考えを紹介するものであり、特定の施術の安全性を保証したり、身体改造を推奨したりするものではありません。なお、アイボールタトゥーをはじめとする施術については、感染や炎症、眼球への影響、視力低下などの合併症が医学的に報告されています。

──そして、手ですが……指がない!

左は薬指、右は小指を取っています。「アンピュテーション」と言います。外見や身体感覚を変えるために、意図的に切断しました。

──なぜ左右で違う指を取ったんですか。

左の薬指を取ったら、残った指と指の間がずっと引っ張られるような感覚が消えなかったんです。それなら、端にある小指を取ったらどうなるのか、と。試しにですね。

──「試しに」で指を取ってしまったんですね……。ほかにもまだあるんですか。

舌と歯茎にもタトゥーが入っていて、乳首とへそも取っています。舌は二つに割っています。

── 一般の人が同じことをしようとしたら、費用はいくらくらいかかりますか。

3000~4000万円くらいじゃないですかね。

始まりは19歳、「完全にファッションだった」

──ここまで全身を改造していると、昔から強い憧れがあったのかと思います。

いや、そうでもないんですよね。最初は19歳のときに入れたタトゥーです。パンクバンドが好きで、肘にクモの巣のタトゥーを入れました。当時は完全にファッションでした。

──その後、身体改造へ進んだのは。

20代後半に、手の甲へシリコンを入れてもらったのが最初です。そこから身体改造というカルチャーそのものに興味が移っていきました。

今は、最先端の改造を自分で試して、経験と知識を得たいんです。アフターケアや身体が治っていく過程は、自分で試さないと分からないですから。

──そこから「眼球までやろう」となるのは、かなり大きな飛躍に思えますが。

実は、僕自身は「どうしてもアイボールタトゥーをやりたい」と思っていたわけではないんです。そこまで強い憧れがあったわけじゃない。

やりたい人はたくさんいると思います。でも、海外に行けば誰でもやってもらえるものではなくて、施術できるアーティストとのつながりも必要なんです。

僕の場合は、たまたまそういう環境にいて、メキシコのアーティスト、ガト―・モレノと出会えた。その出会いが大きかったですね。

世界的アーティストの“作品”になったことが転機に

──ガト―・モレノとは、どうやって出会ったんですか。

メキシコで身体改造の国際会議があって、そこで出会いました。そのときにアイボールタトゥーやイヤーポインティングなどをやってもらったんです。

それからも彼に少しずつ身体を改造してもらって、最終的には僕自身がガトの「代表作」の一つと言われるようになりました。

──その出会いが、この道を極めるきっかけに?

決めたのは後からですね。ただ、ガトの作品になったことで、自分も身体改造のコミュニティに身を置いていくんだと腹をくくりました。

──怖さはありませんでしたか。

怖いですよ(笑)。でも一度経験すると、「これはこういうものだ」と分かってくる。未知ではなくなっていくんです。

取材・文/全夏潤 インタビュー写真/わけとく 写真提供/メジルシ髙倉

#2に続く

<プロフィール>
メジルシ髙倉
福島県出身。実家は神社。高校まで野球に打ち込み、23歳で英国に留学。現在は横浜でバー「HELL BAR」を経営しながら、海外のタトゥーコンベンションに「Meji」の名で招かれている。